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第1章 満天の星の下、儚げな君と出会う
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初対面だというのに、すっかり蒼汰は彼女のペースに乗せられてしまっている。
彼女に促されるまま、彼は接眼レンズを覗いた。
すると……
「月だ」
蒼汰は感嘆の声を上げる。
さっきまでは何も映っていなかったレンズに移るのは、神々しく輝く真ん丸な月。
黄金というよりも白銀に近い。
美少女が何かしたのだろう。ちゃんと望遠鏡で月を観察できるようになっていた。
「ふふふ、天体望遠鏡の扱いなら任せて」
何やら得意げに胸を張っている彼女の姿は、褒められたい幼い子どものようにも見える。
「ああ、ありがとう」
なんだか望遠鏡の操作が出来なかった自分のことが恥ずかしくなってしまい、思わず彼女に背を向けてしまった。
その時、ジーンズのポケットからひらりと一枚の紙が零れ落ちる。
「あ……」
それは今日図書館で手に入れた『天文学部入部』の販促チラシだった。
ひらひらと舞おうとする紙に手を伸ばした時。
「それ!」
目の前の美少女が目をキラキラと輝かせた。
手に紙を掴んだ瞬間、ドンと上半身に衝撃が襲ってくる。
「うわっ!」
びっくりして目を白黒させてしまう。
同時に視界が反転して、砂浜の上に倒れてしまった。
ズンと身体の上に柔らかな重しが乗り上げてくる。
蒼汰の身体の上に覆いかぶさってきたのは、なんと、美織と名乗る美少女だったのだ。
(いったい全体何が起こっているんだよ?)
潮の香りに混じって、ふわりと石鹸の淡い香りが届いてきて、ドキドキ落ち着かない。
さらりとした黒髪の毛先が、蒼汰の堅い頬を撫でてきた。
ワンピースに覆われていても分かる――なだらかな曲線が目の前にあって、刺激が強くて仕方がない。
「ええっと?」
本当に何が起こっているんだ?
頭の中を整理しようとしていると、美織が桜色の唇をゆっくりと開いた。
「君、もしかして入部希望なの!?」
喜々とした声調を耳にすると呆気に取られてしまう。
いったい全体何の話なんだ?
「え? 入部、希望?」
「だって、勧誘のチラシを手にしているでしょう? それに天体望遠鏡も持っていたし、そうか、そうだったんだ!」
「は? 勧誘?」
彼女の視線の先を辿る。
それは蒼汰が手にした一枚のチラシ。
「ふふ、ついに私の天文部に入部希望者が現れたんだ! 気合を入れて作って良かったよ!」
身体の上にいる美織は、してやったりといった表情を浮かべている。爛々と瞳を輝かせながら、彼女はまくしたてる。
「上手に加工してあるでしょう? 私がパソコンで色々レイアウトしたんだよ! 不器用だって評判だけど、意外な才能があったなあって自分でも感心しちゃったんだから!」
先ほどから蒼汰を置いてきぼりにして、どんどん彼女の中で何かが発展していく。
彼女に促されるまま、彼は接眼レンズを覗いた。
すると……
「月だ」
蒼汰は感嘆の声を上げる。
さっきまでは何も映っていなかったレンズに移るのは、神々しく輝く真ん丸な月。
黄金というよりも白銀に近い。
美少女が何かしたのだろう。ちゃんと望遠鏡で月を観察できるようになっていた。
「ふふふ、天体望遠鏡の扱いなら任せて」
何やら得意げに胸を張っている彼女の姿は、褒められたい幼い子どものようにも見える。
「ああ、ありがとう」
なんだか望遠鏡の操作が出来なかった自分のことが恥ずかしくなってしまい、思わず彼女に背を向けてしまった。
その時、ジーンズのポケットからひらりと一枚の紙が零れ落ちる。
「あ……」
それは今日図書館で手に入れた『天文学部入部』の販促チラシだった。
ひらひらと舞おうとする紙に手を伸ばした時。
「それ!」
目の前の美少女が目をキラキラと輝かせた。
手に紙を掴んだ瞬間、ドンと上半身に衝撃が襲ってくる。
「うわっ!」
びっくりして目を白黒させてしまう。
同時に視界が反転して、砂浜の上に倒れてしまった。
ズンと身体の上に柔らかな重しが乗り上げてくる。
蒼汰の身体の上に覆いかぶさってきたのは、なんと、美織と名乗る美少女だったのだ。
(いったい全体何が起こっているんだよ?)
潮の香りに混じって、ふわりと石鹸の淡い香りが届いてきて、ドキドキ落ち着かない。
さらりとした黒髪の毛先が、蒼汰の堅い頬を撫でてきた。
ワンピースに覆われていても分かる――なだらかな曲線が目の前にあって、刺激が強くて仕方がない。
「ええっと?」
本当に何が起こっているんだ?
頭の中を整理しようとしていると、美織が桜色の唇をゆっくりと開いた。
「君、もしかして入部希望なの!?」
喜々とした声調を耳にすると呆気に取られてしまう。
いったい全体何の話なんだ?
「え? 入部、希望?」
「だって、勧誘のチラシを手にしているでしょう? それに天体望遠鏡も持っていたし、そうか、そうだったんだ!」
「は? 勧誘?」
彼女の視線の先を辿る。
それは蒼汰が手にした一枚のチラシ。
「ふふ、ついに私の天文部に入部希望者が現れたんだ! 気合を入れて作って良かったよ!」
身体の上にいる美織は、してやったりといった表情を浮かべている。爛々と瞳を輝かせながら、彼女はまくしたてる。
「上手に加工してあるでしょう? 私がパソコンで色々レイアウトしたんだよ! 不器用だって評判だけど、意外な才能があったなあって自分でも感心しちゃったんだから!」
先ほどから蒼汰を置いてきぼりにして、どんどん彼女の中で何かが発展していく。
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