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第二章 魔王軍戦
第十五話 さらば六世少女軍
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「ふぅ」
さて、どうしたものか。
まぁ、まずはこれからだよな。
『鑑定』
「さてと」
─────────────
六世少女軍
平均Lv110
─────────────
「なんだ、七星の劣化版じゃないか」
そう、俺が言った時だった。
バコンと視界が大きく揺れる。
「っっ?いってぇ…」
口の辺りを拭うと、血がついていた。
「鼻血か…」
待てよ…
なんかおかしくねぇか。
エンヴァトレや、火龍のように、相当な強者であるのなら、これくらいは当たり前だ。
だが、相手は俺にかすり傷さえつけることのかなわなかった七星少年軍の劣化版だぞ?
それが、俺にダメージを与えるなんて──
「はっ」
威勢の良いかけ声と共に、腹にドスッと何かが食い込む。
否、腕である。
「カッハッ!」
このガキ!?
小ささとか、レベルに大して、なんてパワーだ…
田原なら一撃アウトもあり得るぞ。
「田原、いけるか?」
「あぁ、俺二な」
「分かった」
田原が二人の方へ行く。
つまり、俺が三という事だろ?
相手は五人。
勝てない相手じゃない…
そう、ステータスを見るまでは。
「なんだ、こいつら」
─────────────
六世少女Lv110
物理的攻撃力 9999
魔法的攻撃力 0
術的攻撃力 0
遠距離的攻撃力 0
射撃的攻撃力 0
斬撃的攻撃力 0
殴打的攻撃力 5000
切断的攻撃力 0
属性的攻撃力 0
武器的攻撃力 0
アイテム的効果 0
物理的防御力 1
魔法的防御力 1
術的防御力 1
遠距離的防御力 1
射撃的防御力 1
斬撃的防御力 1
刺突的防御力 1
殴打的防御力 1
切断的防御力 1
属性的防御力 1
万能的防御力 なし
スキル・省略
武器的防御力 1
アイテム的防御力 1
NEXT EXP 5009 総合 154090
HP 2000
MP 0
SP 20
STR 9999999
VIT 20
DEX 20
AGI 1000
INT 20
LUC 10
総ランク 不明
総合抵抗力 1%
─────────────
六世少女 Lv110
物理的攻撃力 0
魔法的攻撃力 9999
術的攻撃力 0
遠距離的攻撃力 0
射撃的攻撃力 0
斬撃的攻撃力 0
殴打的攻撃力 0
切断的攻撃力 0
属性的攻撃力 300
武器的攻撃力 0
アイテム的効果 0
物理的防御力 10
魔法的防御力 10
術的防御力 10
遠距離的防御力 10
射撃的防御力 10
斬撃的防御力 10
刺突的防御力 10
殴打的防御力 10
切断的防御力 10
属性的防御力 10
万能的防御力 なし
スキル・省略
武器的防御力 0
アイテム的防御力 0
NEXT EXP 5100 総合 127000
HP 600
MP 999999
SP 40000
STR 50
VIT 30
DEX 40
AGI 30
INT 999999
LUC 10000
総ランク 不明
総合抵抗力 95%
─────────────
─────────────
六世少女Lv110
物理的攻撃力 0
魔法的攻撃力 0
術的攻撃力 9999
遠距離的攻撃力 0
射撃的攻撃力 0
斬撃的攻撃力 0
殴打的攻撃力 0
切断的攻撃力 0
属性的攻撃力 0
武器的攻撃力 0
アイテム的効果 0
物理的防御力 1
魔法的防御力 1
術的防御力 1
遠距離的防御力 1
射撃的防御力 1
斬撃的防御力 1
刺突的防御力 1
殴打的防御力 1
切断的防御力 1
属性的防御力 1
万能的防御力 なし
スキル・省略
武器的防御力 1
アイテム的防御力 1
NEXT EXP 5500 総合 126000
HP 4000
MP 6000
SP 60000
STR 1000
VIT 4000
DEX 90000
AGI 70000
INT 50000
LUC 999999
総ランク 不明
総合抵抗力 50%
─────────────
ステータス偏りすぎだろっ!!
何をしたらそんなに偏るんだよ…
と言うことは一点突破型の集いだ。
最も面倒くさいやつからやっていけば何とかなるだろう。
物理特化は非常に厄介だ。
何故なら最も戦いにくく、乱戦となった場合に非常に凶悪となるからだ。
「ふっ───」
俺は、まず物理特化を殺そうと駆けだし──
止まった。
「は?」
体が動かない。
「金縛りの術・天地の縛り」
まるで、巨大な何かに押し潰されているような感覚。
これは、まさか…
「っ」
一人の少女が手先を器用に動かし、術式を描いていく。
そうか。術使いがいるのか。
「てやっ!」
そこで俺は物理特化にぶん殴られる。
勢いよく飛んでいく。
「っくそ、あの野──」
俺が標的を術使いに変えようとした瞬間──
「『超重力』」
「──っ!?」
そのまま地面に倒れ伏す。
否、重すぎて立ち上がれないだけである。
圧倒的魔力…
魔術使いか…
「てーやっ!」
重力によって動けないでいると、物理特化にたこ殴りにされる。
「ごふっ、がっ、ごっ」
殴打
殴打
殴打!
目の前の景色はブルブルと揺れて、一瞬たりとも原形をとどめてはいない。
「…」
使うか…
「『森羅万象把握』」
「──!」
俺の感覚は、消えた。
変わりに、別の感覚が流れ込む。
世界の感覚が。
「───『時間停止』」
「──」
「──」
ピタァ、と、統べての物が止まった。
全ての物が。
物理特化はその拳を振りかざしたまま、魔法特化はその呪文を唱えたまま、術式特化はその術を展開させた状態で。
止まった。
等しく、止まった。
動かない。静止画。
それに尽きる。
「『魔法的攻撃超高速化』」
「『超圧縮』」
魔法攻撃を高速化させ、超圧縮で潰そうという魂胆だ。
にしても楽な戦いになってしまうよなぁ。
森羅万象把握は。
「解除」
バァン!
バァン!バァン!
三カ所で地面が陥没する音が聞こえた。
「ふぅ」
「『不屈の陣』『背水の陣』」
「───っ!?」
「『完全停止』」
あり得ない、だろ?
こいつらの耐性を考えてあれらを防げるはずが──っ!
そう言うことか!
「術使いぃぃいい!!」
「ふふっ、恨むならうらめです」
「───っ、もういい!あれを使う!」
「はったりですか?そんなの通じませんよ」
「んな訳ねぇだろ」
「術、こいつなんか変だよ…速くやった方が良いんじゃない?」
魔法特化がそう言う。
「そ、そうね」
「──貴女たちっ!」
「気付いたのは一人か…」
「へ?」
「『××××』」
「───!?」
───────────────。
「さてと、じゃあ、田原に参戦と行きますか…」
◇
田原総一、二十一歳。
Lvが高いのはラフォーレティーナのレベリングに時々手伝っていたからだ。
ただ、それだけ。
それだけの差が、今、生まれてきた。
「ハァーっ、ハァーッ」
田原の感想は、
「弱い」
であった。
それは、己である。
この状況で軽く絶望している自分が弱い。
肉体を攻めた訳でも無く、精神を追い詰めて修行をした訳でも無い。
そんな、ほぼ一般人がここまで、幾つもの死闘をかちこえてきたような化け物に勝てるのか?
否、勝てない。
二十一年かけて築きあげてきたものはなんだ…
「特にないじゃないか…」
虚しい。
自分という存在の無価値感が、まるで世界の塵のような感覚。
いや、あっているのだろう。
結局、俺だって相手だって塵みたいなもんだ。
それが、何を争っているのだか。
「でも──」
『田原様?どうしたのですか?』
『いや、何でも無いよ…』
『?泣いてるのですか?』
『なっ、泣いてねーよ!』
『表面上は、ですわね』
『っ!』
『どうして、ですか?』
『…胸が焦げそうだ…俺は…虚しい…苦しい…見えない何かに押し潰されそうで…』
『そんなことですか』
『そんな事って!』
『大丈夫ですよ』
『リリー…』
『田原様、私が望むものは一つですわ』
『なんだ?』
『私がもし、死んでしまってら、泣いて下さいね』
『───────』
『…』
『分かった』
守ってやるよ…リリー・ブラウン。
─────────────────
戦わなきゃ、負けるんだぜ?
戦えば、勝てるかも知れねぇんだぜ?
「こんなに面白い話はないだろう!?」
相手は、二人の少女。
一人は圧倒的硬度を誇る。
俺が全力で殴ったってかすり傷一つつかないだろうな。
一人は圧倒的技量を誇る。
あそこまで武術が強い奴は初めて見たよ。
多分、一生勝てないな。
──だから、なんだ?
───やるしか、ねぇだろ!
───それが、選択だから!
「っぁぁあああ!!!」
田原総一、二十一歳は征く。
少女に、殴りかかる。
「っ」
当たり前のように、受け流していく。
あー、傷つくねぇ。
「それがっ」
なんだ?
「っ?」
無理矢理、ねじ込む。
圧倒的膂力で。
そして、後に回り込み、抱きつく。
「流石に避けられんだろ?」
「っ!」
バックドロップ!
メキィ、と少女の上半身は地面に埋まる。
「ここだ」
田原総一には、唯一、一つだけ必殺技のようなものがある。
それは、戦闘化という能力であった。
戦闘化は、闘気、戦気、気力、膂力を、全て大幅に上昇させ、軽い興奮状態にさせる効果を持つ。
集中し、息を深く吐き──
「ハッ」
かけ声と共に、少女を蹴りとばす。
田原の体は、戦闘化という特殊な能力により、両腕が少し黒くなっていた。その黒は、人肌と混ざり合う、優しい黒色だった。
蹴りとばした少女はだらんと力なく足が垂れていた。
「よし、あと一人」
もう一人は、超硬度である。
超硬度を誇る、か。
なんぼのもんじゃい。
「な、なんですか。このやろ~…」
「ハッ」
思いっきり、少女の顔面に膝蹴りを打ち込む。が、カコンッと金属に弾かれるような音がして、その途端足に痛みが走る。
「無理ですよ?私を壊すのは出来ないですよ」
「そうかも知れない…俺一人ならな…」
「へ?」
田原は、少女の鳩尾を殴り、体をフワッと浮かせる。
「ナーイスタイミング」
それは、親友の声だった。
─そして、爆音がした。
それは、少女がラフォーレティーナに全力で蹴りとばされる瞬間であった。
「が、あ」
メリメリメリ、バギ!
と、何かが壊れる音がする。
「フン!」
バン!と、ラフォーレティーナは少女を打ち上げた。
「さて、終わりかな…」
恐らく、少女は大気圏を越え、宇宙空間に突入し、永遠に戻れないのだろう。
「そのまま空のもずくとなれ!なーんちって」
その時だった。
白と黒の光がラフォーレティーナと田原を包んだのは。
「なるほどな、貴様らか…」
それは、半身が黒く邪悪で、半身が白く神聖な姿をした魔物だった。
六人が、下りてくる。
「我々は、八聖天魔軍…さて、戦おうか…勇者よ」
「勇者じゃねーっつーの」
第二ラウンドは、続けて始まる。
さて、どうしたものか。
まぁ、まずはこれからだよな。
『鑑定』
「さてと」
─────────────
六世少女軍
平均Lv110
─────────────
「なんだ、七星の劣化版じゃないか」
そう、俺が言った時だった。
バコンと視界が大きく揺れる。
「っっ?いってぇ…」
口の辺りを拭うと、血がついていた。
「鼻血か…」
待てよ…
なんかおかしくねぇか。
エンヴァトレや、火龍のように、相当な強者であるのなら、これくらいは当たり前だ。
だが、相手は俺にかすり傷さえつけることのかなわなかった七星少年軍の劣化版だぞ?
それが、俺にダメージを与えるなんて──
「はっ」
威勢の良いかけ声と共に、腹にドスッと何かが食い込む。
否、腕である。
「カッハッ!」
このガキ!?
小ささとか、レベルに大して、なんてパワーだ…
田原なら一撃アウトもあり得るぞ。
「田原、いけるか?」
「あぁ、俺二な」
「分かった」
田原が二人の方へ行く。
つまり、俺が三という事だろ?
相手は五人。
勝てない相手じゃない…
そう、ステータスを見るまでは。
「なんだ、こいつら」
─────────────
六世少女Lv110
物理的攻撃力 9999
魔法的攻撃力 0
術的攻撃力 0
遠距離的攻撃力 0
射撃的攻撃力 0
斬撃的攻撃力 0
殴打的攻撃力 5000
切断的攻撃力 0
属性的攻撃力 0
武器的攻撃力 0
アイテム的効果 0
物理的防御力 1
魔法的防御力 1
術的防御力 1
遠距離的防御力 1
射撃的防御力 1
斬撃的防御力 1
刺突的防御力 1
殴打的防御力 1
切断的防御力 1
属性的防御力 1
万能的防御力 なし
スキル・省略
武器的防御力 1
アイテム的防御力 1
NEXT EXP 5009 総合 154090
HP 2000
MP 0
SP 20
STR 9999999
VIT 20
DEX 20
AGI 1000
INT 20
LUC 10
総ランク 不明
総合抵抗力 1%
─────────────
六世少女 Lv110
物理的攻撃力 0
魔法的攻撃力 9999
術的攻撃力 0
遠距離的攻撃力 0
射撃的攻撃力 0
斬撃的攻撃力 0
殴打的攻撃力 0
切断的攻撃力 0
属性的攻撃力 300
武器的攻撃力 0
アイテム的効果 0
物理的防御力 10
魔法的防御力 10
術的防御力 10
遠距離的防御力 10
射撃的防御力 10
斬撃的防御力 10
刺突的防御力 10
殴打的防御力 10
切断的防御力 10
属性的防御力 10
万能的防御力 なし
スキル・省略
武器的防御力 0
アイテム的防御力 0
NEXT EXP 5100 総合 127000
HP 600
MP 999999
SP 40000
STR 50
VIT 30
DEX 40
AGI 30
INT 999999
LUC 10000
総ランク 不明
総合抵抗力 95%
─────────────
─────────────
六世少女Lv110
物理的攻撃力 0
魔法的攻撃力 0
術的攻撃力 9999
遠距離的攻撃力 0
射撃的攻撃力 0
斬撃的攻撃力 0
殴打的攻撃力 0
切断的攻撃力 0
属性的攻撃力 0
武器的攻撃力 0
アイテム的効果 0
物理的防御力 1
魔法的防御力 1
術的防御力 1
遠距離的防御力 1
射撃的防御力 1
斬撃的防御力 1
刺突的防御力 1
殴打的防御力 1
切断的防御力 1
属性的防御力 1
万能的防御力 なし
スキル・省略
武器的防御力 1
アイテム的防御力 1
NEXT EXP 5500 総合 126000
HP 4000
MP 6000
SP 60000
STR 1000
VIT 4000
DEX 90000
AGI 70000
INT 50000
LUC 999999
総ランク 不明
総合抵抗力 50%
─────────────
ステータス偏りすぎだろっ!!
何をしたらそんなに偏るんだよ…
と言うことは一点突破型の集いだ。
最も面倒くさいやつからやっていけば何とかなるだろう。
物理特化は非常に厄介だ。
何故なら最も戦いにくく、乱戦となった場合に非常に凶悪となるからだ。
「ふっ───」
俺は、まず物理特化を殺そうと駆けだし──
止まった。
「は?」
体が動かない。
「金縛りの術・天地の縛り」
まるで、巨大な何かに押し潰されているような感覚。
これは、まさか…
「っ」
一人の少女が手先を器用に動かし、術式を描いていく。
そうか。術使いがいるのか。
「てやっ!」
そこで俺は物理特化にぶん殴られる。
勢いよく飛んでいく。
「っくそ、あの野──」
俺が標的を術使いに変えようとした瞬間──
「『超重力』」
「──っ!?」
そのまま地面に倒れ伏す。
否、重すぎて立ち上がれないだけである。
圧倒的魔力…
魔術使いか…
「てーやっ!」
重力によって動けないでいると、物理特化にたこ殴りにされる。
「ごふっ、がっ、ごっ」
殴打
殴打
殴打!
目の前の景色はブルブルと揺れて、一瞬たりとも原形をとどめてはいない。
「…」
使うか…
「『森羅万象把握』」
「──!」
俺の感覚は、消えた。
変わりに、別の感覚が流れ込む。
世界の感覚が。
「───『時間停止』」
「──」
「──」
ピタァ、と、統べての物が止まった。
全ての物が。
物理特化はその拳を振りかざしたまま、魔法特化はその呪文を唱えたまま、術式特化はその術を展開させた状態で。
止まった。
等しく、止まった。
動かない。静止画。
それに尽きる。
「『魔法的攻撃超高速化』」
「『超圧縮』」
魔法攻撃を高速化させ、超圧縮で潰そうという魂胆だ。
にしても楽な戦いになってしまうよなぁ。
森羅万象把握は。
「解除」
バァン!
バァン!バァン!
三カ所で地面が陥没する音が聞こえた。
「ふぅ」
「『不屈の陣』『背水の陣』」
「───っ!?」
「『完全停止』」
あり得ない、だろ?
こいつらの耐性を考えてあれらを防げるはずが──っ!
そう言うことか!
「術使いぃぃいい!!」
「ふふっ、恨むならうらめです」
「───っ、もういい!あれを使う!」
「はったりですか?そんなの通じませんよ」
「んな訳ねぇだろ」
「術、こいつなんか変だよ…速くやった方が良いんじゃない?」
魔法特化がそう言う。
「そ、そうね」
「──貴女たちっ!」
「気付いたのは一人か…」
「へ?」
「『××××』」
「───!?」
───────────────。
「さてと、じゃあ、田原に参戦と行きますか…」
◇
田原総一、二十一歳。
Lvが高いのはラフォーレティーナのレベリングに時々手伝っていたからだ。
ただ、それだけ。
それだけの差が、今、生まれてきた。
「ハァーっ、ハァーッ」
田原の感想は、
「弱い」
であった。
それは、己である。
この状況で軽く絶望している自分が弱い。
肉体を攻めた訳でも無く、精神を追い詰めて修行をした訳でも無い。
そんな、ほぼ一般人がここまで、幾つもの死闘をかちこえてきたような化け物に勝てるのか?
否、勝てない。
二十一年かけて築きあげてきたものはなんだ…
「特にないじゃないか…」
虚しい。
自分という存在の無価値感が、まるで世界の塵のような感覚。
いや、あっているのだろう。
結局、俺だって相手だって塵みたいなもんだ。
それが、何を争っているのだか。
「でも──」
『田原様?どうしたのですか?』
『いや、何でも無いよ…』
『?泣いてるのですか?』
『なっ、泣いてねーよ!』
『表面上は、ですわね』
『っ!』
『どうして、ですか?』
『…胸が焦げそうだ…俺は…虚しい…苦しい…見えない何かに押し潰されそうで…』
『そんなことですか』
『そんな事って!』
『大丈夫ですよ』
『リリー…』
『田原様、私が望むものは一つですわ』
『なんだ?』
『私がもし、死んでしまってら、泣いて下さいね』
『───────』
『…』
『分かった』
守ってやるよ…リリー・ブラウン。
─────────────────
戦わなきゃ、負けるんだぜ?
戦えば、勝てるかも知れねぇんだぜ?
「こんなに面白い話はないだろう!?」
相手は、二人の少女。
一人は圧倒的硬度を誇る。
俺が全力で殴ったってかすり傷一つつかないだろうな。
一人は圧倒的技量を誇る。
あそこまで武術が強い奴は初めて見たよ。
多分、一生勝てないな。
──だから、なんだ?
───やるしか、ねぇだろ!
───それが、選択だから!
「っぁぁあああ!!!」
田原総一、二十一歳は征く。
少女に、殴りかかる。
「っ」
当たり前のように、受け流していく。
あー、傷つくねぇ。
「それがっ」
なんだ?
「っ?」
無理矢理、ねじ込む。
圧倒的膂力で。
そして、後に回り込み、抱きつく。
「流石に避けられんだろ?」
「っ!」
バックドロップ!
メキィ、と少女の上半身は地面に埋まる。
「ここだ」
田原総一には、唯一、一つだけ必殺技のようなものがある。
それは、戦闘化という能力であった。
戦闘化は、闘気、戦気、気力、膂力を、全て大幅に上昇させ、軽い興奮状態にさせる効果を持つ。
集中し、息を深く吐き──
「ハッ」
かけ声と共に、少女を蹴りとばす。
田原の体は、戦闘化という特殊な能力により、両腕が少し黒くなっていた。その黒は、人肌と混ざり合う、優しい黒色だった。
蹴りとばした少女はだらんと力なく足が垂れていた。
「よし、あと一人」
もう一人は、超硬度である。
超硬度を誇る、か。
なんぼのもんじゃい。
「な、なんですか。このやろ~…」
「ハッ」
思いっきり、少女の顔面に膝蹴りを打ち込む。が、カコンッと金属に弾かれるような音がして、その途端足に痛みが走る。
「無理ですよ?私を壊すのは出来ないですよ」
「そうかも知れない…俺一人ならな…」
「へ?」
田原は、少女の鳩尾を殴り、体をフワッと浮かせる。
「ナーイスタイミング」
それは、親友の声だった。
─そして、爆音がした。
それは、少女がラフォーレティーナに全力で蹴りとばされる瞬間であった。
「が、あ」
メリメリメリ、バギ!
と、何かが壊れる音がする。
「フン!」
バン!と、ラフォーレティーナは少女を打ち上げた。
「さて、終わりかな…」
恐らく、少女は大気圏を越え、宇宙空間に突入し、永遠に戻れないのだろう。
「そのまま空のもずくとなれ!なーんちって」
その時だった。
白と黒の光がラフォーレティーナと田原を包んだのは。
「なるほどな、貴様らか…」
それは、半身が黒く邪悪で、半身が白く神聖な姿をした魔物だった。
六人が、下りてくる。
「我々は、八聖天魔軍…さて、戦おうか…勇者よ」
「勇者じゃねーっつーの」
第二ラウンドは、続けて始まる。
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まあ、癇癪を起こすのはいいですけれど(よくはない)あなたがまとめてうちの実家に郵送したっていうその荷物の中、送っちゃいけないもの入ってましたよ?
※またも小説の練習で書いてみました。よろしくお願いします。
※すみません、婚約破棄タグを使っていましたが、書いてるうちに内容にそぐわないことに気づいたのでちょっと変えました。果たして婚約破棄するのかしないのか?を楽しんでいただく話になりそうです。正当派の婚約破棄ものにはならないと思います。期待して読んでくださった方申し訳ございません。
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