王道

こんぶ

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第二章 魔王軍戦

第九話 青髪の少女

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聖霊の区域。
馬車で何日かかっただろうか…覚えていない…
だが恐ろしく長い間、尻に激痛が走っていたのは事実だ。
立てば良いという話ではない。立てないのだ。馬車が狭すぎて。
いや、待て待てと。
馬車ってそんなにノリ心地悪いの?と。
そう申したい訳だろう?
うんうん、分かるよ。
では結論だ。
ノリ心地が良いものは、ある。

が、この馬車の質が悪すぎて尻に激痛が走り続けるのだ。

この馬車を引くのはなんとたったの二匹の馬。頑張るねぇ。

「なぁ、田原…この馬に名前ってあるのか?」

「あるよ!…右がトリニティで左がリバーンだ」

「へぇ。格好いいな。案外」

そうして、馬車は再び静まる。

最初の方は良かったんだ。皆がわいわいとして。
リリーやキティだって喋っていたんだ。

でも、今やそのような生気はなく、無、である。

「…」

俺は、馬車から顔を出し、ひゅぉおと風を顔に浴びる。

「あぁ…なんか」

目の前には特に何も無く、淡々と道と草が広がり続けているだけである。

しかも、何者にも邪魔されない、無である。

「虚しい…」

…一体どれくらいかかったんだろうか。


それは、あくる日の事だった。

「今日はキティに任せますわ」

「はい」

生気を失った声で、従者を交代させる。

その後、無の時間が数刻流れた後である。

「っ!!!!ねぇラフ!」

「ぅぁ?」

半分寝入っていた俺にキティが大きな声で語りかけてきたのだ。

「あれ、聖霊の区域じゃない?」

「はぁ~」

俺は、きっとキティが夢でも見ているのだろうと思って馬車から顔を出し、確かめてやろうとし──

「──は?」

草原を越えた先に、街のようなものが見える。

この辺りの町と言えば──

地図マップ

「現在地」

シュ、と現在地を表す。

「…聖霊の…区域」

「あぁ?なんだ?」

寝ていた田原は起きたらしい。

「来たぞ!田原!」

俺はがしっと田原の肩を掴みぐんぐんと振る。

「うぇーぅえーヴぇーうぇー、なっ、何々?」

「来た!着いたんだよ!聖霊の区域に!」

「…はぁ、んな訳」

俺と同じように外を見る田原。

「…本気まじかよ…」

「…な?」

「…す、すげぇ!」

「やったー!」

「やったっーっ!」

「やっったぁー!」

それは、歓喜の叫びだった。



別に聖霊の区域に入るのに通行料を取られるわけではないので聖霊の区域に入る。
そして、馬車を停める馬車停留所があるのでそこに馬車を停める。

「さて、やっと歩きだな」

「その前にみんなの尻を治してくれよ」

「わかったよ…『範囲治癒ワイドヒール』」

「まんまだな…けど…」

俺を覆うようにして白い光が皆を包む。
そして、尻がジワァと温かくなる。

「い、いたくない…感激だ…」


「…さて、これからどうしましょうか」

「…まぁ、とりあえず宿を探そうか。みんな疲れてるだろうし。俺も疲れてるし」

「いいね、それ。でもどうやって探すの?」

「いや、あそこに見えるし…」

少し行った所に、宿屋がある。

「行こうか」

四人は歩き出した。



「えとー、ここって空いてますか?」

「あん?空いてるよ…四人か…?」

「はい」

「一人室なら一晩で2500円、二人なら倍いる。まぁ、四人で一人室に入るって事も可能だがな」

あ、良いんだ。

「じゃあ、二人室でお願いします」

「分かった。じゃ、鍵はあんたとあんたに渡すぜ」

宿屋の主である男は俺と田原に鍵を渡すと部屋へ案内をしてくれた。

もちろん組み合わせは俺とキティ、田原とリリーだ。

──室内に入る。

ガチャ。

「うお、ベッドだ」

「本当ね」

しかも、ちゃんとした。

「ふぉー」

ベッドに飛び込む。
ボフッと反発する。

「よし、水浴びしてから寝るぞ~」

寝ることが楽しみなんて、いつぶりだろうか。

──外に出て水浴びをする。

「ふぅ」

冷たいが気持ちいい…

さて、室内に戻るか。



「くぅーくぅー」

キティが小動物のように寝息をたてるのが、いつもとのギャップで可愛かった。

まぁ、した訳だが。

「『疲労回復』」

キティに疲労回復をかける。

『疲労回復』『疲労回復』

隣の部屋のリリーと田原にもしておく。

「ふぁ、寝よ」

俺にも疲労回復をして──


ゴンッ


何の音だ?

ゴンッゴンッ


ん?

ゴンッゴンッゴンッゴンッ


この部屋に何かがぶつかってきている?


「…なんだ?」

外に出る。

「っ!」

なん…だ、こいつ

目の前には三から四メートルは体長のある蜘蛛がいた。
しかも、下半身は蠅のようになっている。

そこから小さな蜘蛛と蠅のキメラのような生物が定期的に生み出されている。

それが、ブゥゥゥウンと飛び交い、ゴンッゴンッと部屋にぶつかっていたわけだ。

「『鑑定アナライズ』」

さて、どう出る?


─────────

キメラ

Lv20



─────────────

物理的攻撃力  1
魔法的攻撃力  1
術的攻撃力      1
遠距離的攻撃力1
射撃的攻撃力  1
斬撃的攻撃力 1
殴打的攻撃力  1
切断的攻撃力  1
属性的攻撃力  1
武器的攻撃力  1
アイテム的効果 1
物理的防御力  1
魔法的防御力  1
術的防御力      1
遠距離的防御力 1
射撃的防御力  1
斬撃的防御力  1
刺突的防御力  1
殴打的防御力  1
切断的防御力  1
属性的防御力  1
万能的防御力  1
スキル・繁殖力強化
武器的防御力   1
アイテム的防御力  1
NEXT EXP290   総合 6900
HP  1000
MP 10
SP 10
STR 300
VIT 400
DEX 500
AGI 21
INT 42
LUC   10
総ランク  G
総合抵抗力 なし
─────────────


見た目に反して弱いのな…

「まぁ、いいか」

俺は右手をかかげる。

獄炎球ヘルファイヤーボール』──

「さて、死んでもら──」

俺が獄炎球を投げる直前だった。

それがキメラを貫いたのは。

高速で煌めく一本の線が流れ、キメラを貫く。
金色の槍だった。

そこから現れたのは──

「大丈夫ですか?」

「あぁ」

そこにいたのは、突き刺さった槍をグリュと引き抜き、小さな蠅蜘蛛のようなものを徹底して殺す、青髪の少女であった。



全て殺し終わったのか…

「なぁ、あんた、何者だい?」

「私ですか?わたくしは自治部隊に所属する、レヴァンです」

「…そうか、良かったらそれ、手伝おうか?」

「うーん、それなりの力があれば…良いんですが…」

「多少腕には自信があるよ」

「…」

やばい、これは失点だな。

「まぁ、ついてきて下さい」


青髪の少女は、シュッと、常人では追いつけない速度で飛び立った。


「なるほど」

付いてこい──とね。



「そろそろ振り切ったかしら」

「いやぁ、まだ居るんじゃない?」

「きゃあっ!」

「なぁ、良いだろう?」

「分かりましたよ…じゃあ、あっ、丁度あそこにも魔物がいますね」

「よし、俺がやる」

「いや、私が先ですね」

───だったら最高速度だ。

全身のバネを使い、全ての速度系のスキルを併用し、ステータス分が相乗される。

「ふっ──」

閃光。

まさに、それだった。

俺は、魔物に体当たりをした。

そして、魔物は、弾けた。


「は、速いですわ…」

「だろぉ?」

つうか、自治部隊ってなんだろう?

「なぁ、自治部隊ってなんなんだ?」

「む…わたくし一応23歳ですが…」

「えぇっ、年上?」

「ふふ」

「えーと、自治部隊って何ですか?」

「そうですね。街の治安を守っているのですわ。魔物とかから」

「へぇ」

「じゃもう一個質問」

「はい?」

「なんで青髪何ですか?」

「あぁ、これですか。なんか、レベルを上げてたらいつの間にかなってましたわ」


「へぇ」

「原因はわかりませんがね」

「んじゃ、最後に」

「はいはい」

「この町で転移が出来る所を知っていますか?」

「───」



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