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入学式

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 カーン、カーン、カーン





 !

「大変、入学式に遅れてしまったわ!」

「今のは5分前の鐘だから、今からでも間に合うぞ。因みに、式は桜並木を真っ直ぐ行って左だ」

「え?案内板には右と描いてありましたが………」

「確かに案内板には右って書いてるが、それは違うんだよ。
 早めに行った奴は間違えてたって分かるが、ギリギリの奴は遅れてしまう。だから、なんでも早めに行動しなさいって実感するだろ?」

「それもそうですわね。ありがとうございますわ」

「おう、じゃあなー」

 走るのは淑女として失格だから少し早歩きで式の場所に向かった。















 良かった、間に合ったみたい。

 レイチェルはホッと安堵あんどの溜息をつきながら自分の席に座り、辺りを見渡した。

殆どほとんどんどの方は着いている様ですね」





 カーン、カーン、カーン






 学園長と思わしき高齢のお爺さんが前に出てきて、

「えー、私は学園長のラチェスです。ここにいるのは時間に余裕を持って行動した生徒のみでしょう。こんなにも沢山の生徒が時間に余裕を持ち行動してくれたことを私は」

 バーン!

「すみません、迷って遅れちゃいました~!」

 学園長先生の有り難い?お言葉を遮りさえぎり、その少女はやってきた。

 レイチェルは、おい、入るならこっそり入れよ馬鹿じゃねぇかてめぇ!?というのと、確かに目立ってるけど思ってたのと違う、というのでどんな顔をすればいいのかわからずポーカーフェイスを続けた。

「………遅れた理由はわかった。ただ、せめてこっそり入る考慮こうりょをしてほしかったのだが?」

「ごっ、ごめんなさい」

 ヒロインと思わしき少女は涙目になりながら謝罪をしたが、私にはどうしてもわざとらしさしか感じられなかった。

 先入観せんにゅうかんからかとレイチェルは思ったが、まぁとりあえずこの少女を虐めないといけないのか………。と憂鬱ゆううつな気分になった。

 いや、よくある何もしてないのに悪役令嬢のせいにされるっていうのは結構小説とかにあったし、別に虐めなくてもいいかも?私のせいにされなかったら、卒業後すぐに家出すればいいし。と考え直し、目の前の事に思考しこうを移した。

「まぁ、反省したならもういいでしょう。次からは決して!しないようにしてくださいね?いいですね?ティアラ・フィルムさん!」

「は、はいぃ~」

 あ、もう終わってた。

「では、入学式を続けます。」

「新入生代表、ルーカス・フィアカスタ」

「はい」

 第二王子が返事をし、前に出てきてこれからの意気込み等を語っている。
 キリッとしていても、格好良さはナイの方が上だなと考えている内に終わっていた様で、もう閉会の言葉になっていた。

「これで入学式は終わります。各自自分のクラスの先生について行き教室へ向かってください。」

 確か私はAクラスだから、えーと、先生の名前何だったかしら?

 ちょっとキョロキョロしてたら思い出すわよね?と辺りを見渡していると、

「レイチェル・ヒールか?」

 と声をかけてきた者がいた。

「えぇ、そうですが」

「頭の良いAクラスはあっちだ。こっちは頭の悪いEクラスだぞ?」

「まぁ、そうでしたのね?教えて頂きありがとうございますわ」

 私は親切な方に小さくカーテシーをして、教えて頂いた方へ向かった。

「あら、わたくしのクラスの先生は、先程の草臥れたくたびれた白衣を着たおじ、コホン。お兄さんなのかしら?」

 おじさんと言いかけたがお兄さんと言い直したが、

「おい、今おじさんって言いかけただろ」

わたくし、とっても素直なんですの。申し訳ありませんわ?
 でも、そんなに草臥れたくたびれた白衣に、何日洗っていないのか気になる位ボサボサの髪の毛とお髭をされていますから………ね?」

 私は、

『あんた何日風呂入ってねぇの?汚ねぇなー』

 という言葉を含みふくみながら困った様に少し眉を下げた。

「お、俺は魔法で清潔にしているんで風呂入らなくてもいいんだよ!」

 ゔっ、と弱点をつかれた様にとても嫌そうな顔をした草臥れたくたびれた格好のお兄さん?は、逆ギレしてきた。

「最初にゔっ、と言ったのだから、入った方が良いというのは分かっておられるでしょう?
 それに、今日は一生に一度しか無い入学式なのに、草臥れたくたびれた白衣にボサボサの髪の毛とお髭なんて……………!ありえませんわ!
 貴方は、貴方は!おじさんどころかおっさんではありませんか!」

 レイチェルは、自分のクラスの先生がおっさんなんて嫌!と顔を手で隠し、膝から崩れ落ちた。





 ………その場に、なんとも言えない雰囲気ふんいき漂うただよう





「あー、すまん。次からは風呂入ってくるから。な?」

 だから早く立ってくれ、視線が痛いとばかりにおっさんはレイチェルに声をかけ、手を差し出すも、

「何日お風呂に入っていないかわからないような方の手は取りたくありませんわ」

 と言いながら、レイチェルは一人で立った。
 今度は、おっさんが崩れ落ちた。




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