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第1章 魔法を極めた王、異世界に行く
18:ダンジョンボス-2
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エリィがどんな心配をしているかは大体予想がつく。基本的にダンジョンのボスとは、そのダンジョンの中でも一番強い魔物だ。
地下層の大きさによってボスが吸収する魔素の量も大きくなり強くなるが、だれも来ないような場所のダンジョンではそもそも魔素の量が少ない。この森は本当に平和そのものだし、ダンジョンの近くに動物は寄ってきていないから、ダンジョンボスもあれだけ弱かったのだ。ただ、それを知らなければダンジョンとは恐ろしいものなのだろう。
広いダンジョンは魔素から生まれたエンチャントアイテムなども出るそうだが、このダンジョンには特に何もない。ほぼ一直線の道に雑魚の群れしかいないのと、深い森の奥地なので誰も来ることがないのだろう。エリィから聞いたが、ここには恐ろしい龍が住んでいると教えられており、そのせいでここの探索もままならないらしい。
恐ろしい龍……それはたらふく食べて腹を膨らませて幸せそうに仰向けになっているブルーのことだろう。どこからどう見ても無害にしか見えないが。
それはともかく、この状況や環境によってこのダンジョンは外からの魔素を取り込んだりも出来ないはずだ。
「エリィなら出来るぞ。絶対にできる! 出来る出来る出来る! 間違いない!」
「そうだよ! 今までの魔物も弱かったじゃないか! 大丈夫だよ!」
悩むエリィを俺とブルーで励ましていると、決意したように立ち上がる。そもそも俺が踏破済みで、俺も一緒に行くのに危ないことなどないのだがな。
それでもボスに挑むのには心の準備が必要なのだろう。何が襲ってきてもいいように念入りに準備し始めた。
俺は二人に食い荒らされた食料の片付けをしつつ、エリィの準備が終わるのを待つ。
「エリィ、行きます!」
準備も出来たので、ダンジョンボスの部屋の扉を開ける。やはり一歩踏み出さねば部屋の明かりはつかないのだろう。
全員で中に入り扉が閉まると、部屋が明るくなりボスを映し出す。広い部屋の奥の方からこちらを睨みつけているのはホブゴブリン1匹だけだ。
「あ、あれはゴブリン……?」
「いや、その上位種のホブゴブリンだ」
「!!」
ダンジョンボスは時間経過で復活するが、どうやら十分な魔素を取り込めないと1匹だけになるらしい。初めて踏破した時のように10匹以上に出会った事はなく、1ヶ月ほど放置したらホブゴブリン以外にゴブリンが数匹湧いてた程度だ。
つい昨日俺がまたボスを倒しているので、今日は1匹だけになっているのも想定通り。ホブゴブリンはこっちの数が多いのを警戒してか、威嚇はしてくるが近付いてはこない。
初めて見るボスの姿に、若干エリィが震えている。
「エリィ、緊張しているのか?」
「む、武者震いです! でも私、ホブゴブリンどころかゴブリンでさえ倒した事ないんです。捕まったら酷いことされるって言われてるし、前にも魔法が発動しなくて必死に逃げたことが……。それを私なんかに……」
「大丈夫だ。まずはいつも通りにして、それから魔法を発動しよう。エリィなら出来るぞ、俺もついてる」
「……はい!」
「まだ相手まで距離はある。落ち着いて、ゆっくりでいいから」
地下層の大きさによってボスが吸収する魔素の量も大きくなり強くなるが、だれも来ないような場所のダンジョンではそもそも魔素の量が少ない。この森は本当に平和そのものだし、ダンジョンの近くに動物は寄ってきていないから、ダンジョンボスもあれだけ弱かったのだ。ただ、それを知らなければダンジョンとは恐ろしいものなのだろう。
広いダンジョンは魔素から生まれたエンチャントアイテムなども出るそうだが、このダンジョンには特に何もない。ほぼ一直線の道に雑魚の群れしかいないのと、深い森の奥地なので誰も来ることがないのだろう。エリィから聞いたが、ここには恐ろしい龍が住んでいると教えられており、そのせいでここの探索もままならないらしい。
恐ろしい龍……それはたらふく食べて腹を膨らませて幸せそうに仰向けになっているブルーのことだろう。どこからどう見ても無害にしか見えないが。
それはともかく、この状況や環境によってこのダンジョンは外からの魔素を取り込んだりも出来ないはずだ。
「エリィなら出来るぞ。絶対にできる! 出来る出来る出来る! 間違いない!」
「そうだよ! 今までの魔物も弱かったじゃないか! 大丈夫だよ!」
悩むエリィを俺とブルーで励ましていると、決意したように立ち上がる。そもそも俺が踏破済みで、俺も一緒に行くのに危ないことなどないのだがな。
それでもボスに挑むのには心の準備が必要なのだろう。何が襲ってきてもいいように念入りに準備し始めた。
俺は二人に食い荒らされた食料の片付けをしつつ、エリィの準備が終わるのを待つ。
「エリィ、行きます!」
準備も出来たので、ダンジョンボスの部屋の扉を開ける。やはり一歩踏み出さねば部屋の明かりはつかないのだろう。
全員で中に入り扉が閉まると、部屋が明るくなりボスを映し出す。広い部屋の奥の方からこちらを睨みつけているのはホブゴブリン1匹だけだ。
「あ、あれはゴブリン……?」
「いや、その上位種のホブゴブリンだ」
「!!」
ダンジョンボスは時間経過で復活するが、どうやら十分な魔素を取り込めないと1匹だけになるらしい。初めて踏破した時のように10匹以上に出会った事はなく、1ヶ月ほど放置したらホブゴブリン以外にゴブリンが数匹湧いてた程度だ。
つい昨日俺がまたボスを倒しているので、今日は1匹だけになっているのも想定通り。ホブゴブリンはこっちの数が多いのを警戒してか、威嚇はしてくるが近付いてはこない。
初めて見るボスの姿に、若干エリィが震えている。
「エリィ、緊張しているのか?」
「む、武者震いです! でも私、ホブゴブリンどころかゴブリンでさえ倒した事ないんです。捕まったら酷いことされるって言われてるし、前にも魔法が発動しなくて必死に逃げたことが……。それを私なんかに……」
「大丈夫だ。まずはいつも通りにして、それから魔法を発動しよう。エリィなら出来るぞ、俺もついてる」
「……はい!」
「まだ相手まで距離はある。落ち着いて、ゆっくりでいいから」
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