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第1章 魔法を極めた王、異世界に行く

14:ダンジョン-1

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 最近修行ばかりしていたら、エリィからほぼ何もしないような日がほしいと申告があった。確かに修行が楽しくて、毎日のように行っていたし一日中休みの日は殆どなかったな。
 なので今日はお互いに自由に過ごすことにした。エリィは家周りを中心に整理や作業なども色々したいらしく、俺は完全に手を余らせることになった。
 せっかくだし、前に見つけた洞窟ダンジョンにでも向かってみようと思いたち、少し出かけるとエリィに伝えるとお弁当を持たせてくれた。
 なんて出来た弟子なんだ……!

 アジトから歩いて30分。書き留めておいた地図情報マッピングデータを頼りにダンジョンへ向かっていく。
 山肌にぽっかりと空いた穴が見えてきた。入口はゆるい下り坂になっており、奥の方は真っ暗で何も見えない。ダンジョンの周りには不思議と木が生えておらず、誰でも歓迎しているような雰囲気だ。
 ダンジョン自体は前に3階層まで踏破してから行ってないが、今まで通りならなんてことなく終わるだろう。地図情報マッピングデータをダンジョンに設定し、明かり確保のためにライトボールを空中に浮かせると、いざ1階から歩みを進めていく。

 ーー地下1階。
 可愛い小動物たちがお出迎えだ。角の生えたうさぎ『ホーンラビット』や鋭い爪を持つ猿『グルーモンキー』、全身が針に包まれたネズミ『ニードルラット』……いやこれはハリネズミか?
 まぁ可愛い小動物達は、俺の姿を見ると撫でて欲しいのか全身を使って襲い掛かってくる。それを丁寧に一匹ずつ燃やしながら奥に進んでいく。
 ダンジョンは書物にあった通りだが、魔獣を倒して放置してても死骸は吸収されて跡形もなくなる。ダンジョン内で死ぬとダンジョンの栄養になるらしく、外から入ってきた者も取り込みダンジョンを維持しているらしい。
 多分魔力を多く保有するナニカが死んだりしたら、ダンジョンも進化したり広くなったりするのだろうな。

 ーー地下2階。
 ここは飛行系の小動物が多い。コウモリやら鳥やら色んな魔獣が上空から俺を狙ってくる。もちろんそれらも丁寧に燃やしながら進んでいく。
 ダンジョンでは一定の魔素を吸収すると、それに見合った宝が生成されると見たことがあるが、こんな山奥では多くの魔素を取り込むことは出来ないのだろう。
 ほぼ一本道を進んでいても、宝箱のたの字すら見つからない。散歩しながら進むには風景を楽しむような作りをしていないので、黙々と次のフロアを目指していく。

 ーー地下3階。
 このフロアは虫と植物がメインだ。ここの虫はさっきまでのフロアと違って、物理攻撃だけではなく搦手を使ってくる。
 ネバネバする糸を吐いて拘束しようとする蜘蛛『ゲノスパイダー』や睡眠効果のある鱗粉を撒いて相手を行動不能にする蝶『スリプバタフィ』、鋭い牙と硬い身体を使って突進してくるムカデ『レドセンペド』など。
 植物タイプの魔物も居るのだが、洞窟にポツンと植物があるのですぐに魔物だとわかる。そしてこのフロアは植物と虫がたまに戦っているのも面白い。
 向かってくる虫や植物を焼きならが、さらに奥へと進んでいく。

 ーー地下4階。
 初めて足を踏み入れたが、今までとほとんど変更点はない。相変わらず洞窟のような作りだし、出てくる魔物も今までと同じようなのだけ。言ってしまえば、階層ごとに出ていた魔物がここでは混合しながら出てきている。
 その分相容れない魔物同士は戦っているし、一番活性化してそうな場所だ。
 このフロアは多少入り組んでいるものの、行き止まりはすぐに引き返せるような作りになっており、途中の広い場所で魔物同士が戦っている場面ではこっちに気付かないこともしばしば。
 興味本位で手を出してみたら、フロア全部の魔物が一斉に俺の方を向いた時は一瞬びっくりしたが……。

 そんなこんなで3時間もかからず俺は地下4階まで踏破し、地下5階へと降っている。ライトボールによって明かりを確保していたが、降った先では明かりが入らないぐらい明るい場所に出た。
 数人なら寝たりも出来そうなほど広い場所で、その先の壁に大きな扉が埋め込まれている。どうやらダンジョンのボス部屋に到着したのかもしれない。
 ダンジョンにはダンジョンコアと呼ばれる大元が存在しており、そのコアを守るためにボスが設置されていると読んだ事がある。コアを守るためのボスは、大きなダンジョンであれば複数いるとも。
 このダンジョンが大きいのかはわからないが、まずは最初のボス部屋を楽しむとしよう。

「よし、そうとなれば腹ごしらえだ」

 俺は扉の前に座るとエリィの作ってくれた弁当を取り出した。さっきから腹の虫が鳴っており、どこかで休憩したいとも思っていたのだ。
 ボス部屋を楽しみにしながら、今は俺の腹を満たすべくお弁当を広げて食べ始めた。
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