14 / 28
第14話
しおりを挟む
「攻撃……?」レイヴンは衝撃を覚えながらも心の片隅で、こいつは法螺を吹いているのではないか、と勘繰りもしていた。「君たちを、ということは、ギルドを?」
「そう」ルルーは頷きながら地上でいまだ震えている傷ついたチンパンジーを見下ろし、次の瞬間その赤い目から鋭い光線を迸らせ件のチンパンジーに照射した。チンパンジーは黒こげの様相になり地上に倒れ伏して、完全に動かなくなった。
「あっ」叫んだのはレイヴンだけでなく、コスもキオスもだった。
「うん」ルルーは頼みもしないのに、今自分が何をしたか説明した。「あいつはもう死ぬだろうから、無傷のDNAだけ回収しとくよ。参考までに」
「──」おい。レイヴンはすんでのところでそう怒鳴るのを抑えた。「参考って……何のための?」いかにも参考までに知りたいという姿勢を見せて質問する。
「そりゃ決まってるさ」ルルーは少し吹き出しながら答える。「宇宙への関与度調査だよ」
「関与度──」レイヴンは茫然と呟いた。
「そう。こいつの遺伝子がどの分子をどれだけ使って何を生みだし、環境に如何なる影響を及ぼしたか。さらにその環境から如何なるフィードバックを受け如何様に進化していったか。まあざっくりいえばそんなところかな」
「へえ」レイヴンはそっと頷くことしかできずにいた。「そうか、それがギルドの」
「彼の幸福追及の権利は?」溜らず口を挟んだのはコスだった。「彼は宇宙である前に一個のチンパンジーだろ」
「そうだ、その通りだ」キオスも同調する。「ギルドは傲慢だ」
「あれ」ルルーは真顔になった。「我々に楯突くのは地球の動物だけじゃないようだね」
「いや、違う」レイヴンは咄嗟に触手を最大限に伸ばし収容籠を庇った。「攻撃するつもりなんか一切ない。ただ彼らの、そう──哲学というものがあるんだ、それを述べただけだよ」
ルルーはじっとレイヴンを見ていたがしばらく答えずにいた。
「よく、言って聞かせとくから……今日のところは、ね」レイヴンはルルーの赤い目からいまにもあの光線が照射されるのではないかと思うと伸ばした触手が震えるのだったが、それでも広げたまま動かさずにいた。
「あ」突如ルルーは上空を見上げた。「そうだこうしちゃいられない。私は先遣隊としての任務を遂行しなければ」そう言ったかと思うと出し抜けにブレードをくるくる回転させ空高く昇って行きはじめた。「君らの無事を祈るよ、レイヴン。そして哲学動物たち」
「あ」レイヴンは拍子抜けしながらも「ありがとう」と挨拶したが『またいつか』とは続けなかった。
「そう」ルルーは頷きながら地上でいまだ震えている傷ついたチンパンジーを見下ろし、次の瞬間その赤い目から鋭い光線を迸らせ件のチンパンジーに照射した。チンパンジーは黒こげの様相になり地上に倒れ伏して、完全に動かなくなった。
「あっ」叫んだのはレイヴンだけでなく、コスもキオスもだった。
「うん」ルルーは頼みもしないのに、今自分が何をしたか説明した。「あいつはもう死ぬだろうから、無傷のDNAだけ回収しとくよ。参考までに」
「──」おい。レイヴンはすんでのところでそう怒鳴るのを抑えた。「参考って……何のための?」いかにも参考までに知りたいという姿勢を見せて質問する。
「そりゃ決まってるさ」ルルーは少し吹き出しながら答える。「宇宙への関与度調査だよ」
「関与度──」レイヴンは茫然と呟いた。
「そう。こいつの遺伝子がどの分子をどれだけ使って何を生みだし、環境に如何なる影響を及ぼしたか。さらにその環境から如何なるフィードバックを受け如何様に進化していったか。まあざっくりいえばそんなところかな」
「へえ」レイヴンはそっと頷くことしかできずにいた。「そうか、それがギルドの」
「彼の幸福追及の権利は?」溜らず口を挟んだのはコスだった。「彼は宇宙である前に一個のチンパンジーだろ」
「そうだ、その通りだ」キオスも同調する。「ギルドは傲慢だ」
「あれ」ルルーは真顔になった。「我々に楯突くのは地球の動物だけじゃないようだね」
「いや、違う」レイヴンは咄嗟に触手を最大限に伸ばし収容籠を庇った。「攻撃するつもりなんか一切ない。ただ彼らの、そう──哲学というものがあるんだ、それを述べただけだよ」
ルルーはじっとレイヴンを見ていたがしばらく答えずにいた。
「よく、言って聞かせとくから……今日のところは、ね」レイヴンはルルーの赤い目からいまにもあの光線が照射されるのではないかと思うと伸ばした触手が震えるのだったが、それでも広げたまま動かさずにいた。
「あ」突如ルルーは上空を見上げた。「そうだこうしちゃいられない。私は先遣隊としての任務を遂行しなければ」そう言ったかと思うと出し抜けにブレードをくるくる回転させ空高く昇って行きはじめた。「君らの無事を祈るよ、レイヴン。そして哲学動物たち」
「あ」レイヴンは拍子抜けしながらも「ありがとう」と挨拶したが『またいつか』とは続けなかった。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
13歳女子は男友達のためヌードモデルになる
矢木羽研
青春
写真が趣味の男の子への「プレゼント」として、自らを被写体にする女の子の決意。「脱ぐ」までの過程の描写に力を入れました。裸体描写を含むのでR15にしましたが、性的な接触はありません。
校外学習の帰りに渋滞に巻き込まれた女子高生たちが小さな公園のトイレをみんなで使う話
赤髪命
大衆娯楽
少し田舎の土地にある女子校、華水黄杏女学園の1年生のあるクラスの乗ったバスが校外学習の帰りに渋滞に巻き込まれてしまい、急遽トイレ休憩のために立ち寄った小さな公園のトイレでクラスの女子がトイレを済ませる話です(分かりにくくてすみません。詳しくは本文を読んで下さい)
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる