偽物と断罪された令嬢が精霊に溺愛されていたら

影茸

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部屋にいたのは (ライハート視点)

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「……固く考えすぎなんだよ」

 聖獣の前をさった僕、ライハートの口から思わずそんな言葉が漏れる。
 本人に届かないと理解しつつも、僕はその思いを自分の内に押しとどめることができなかった。
 これが余計なお節介そのものであるとは理解している。
 それでも、全てを見なかったことにするには、聖獣とのつきあいは決死って軽くはなかった。

「不戦勝なんて後味が悪いに程あるでしょ」

 といっても、どうすればいいかなんて僕にわかる訳もなかった。
 そう簡単にわかるなら、こんなに扱いを悩むことになってはいないのだ。

「……まあ、今回はカイザードを処理できただけでいいとするしかないか」

 そう呟きながら、僕は自身に割り振られた部屋へと急ぐ。
 龍殺しとなって以来、人間と体の仕組みが大きく変わった自覚はあるが、今日は精神的な疲労が体にたまっていた。
 戻ったらすぐに休もう、そんなことを感がえながら僕は扉を開き……部屋の中で眠っていた人に気づくこととなった。

「……え?」

 部屋におかれたソファで、眠るその女性。
 それは、隣の部屋で休んでいるはずのマレシだった。
 まるで想像もしていないことに一瞬僕の思考は止まる。
 しかし、僕が心を乱したのは、マレシアの衣装が公務用のものであると気づくまでだった。

「ああ。心配してくれていたのか」

 おそらく、マレシアは帰りが遅い僕を心配して待ってくれていたのだろう。
 ソファに座った状態で寝ているのも、その証拠だ。
 僕のことを心配して待っている内に、寝てしまったというのが、今までの経緯と言ったところだろう。
 実のところ、カイザードの処理、第二王子の謝罪、などの諸々の雑務があり、もう深夜と言っていい時間だ。
 肘かけに顔を押し当てたせいか、赤くなっている頬に指を沿わせながら、僕は小さく呟く。

「……寝てしまうくらいなら、自身の部屋で待ってくれていればよかったのに」

 しかし、そういいながらも僕の口元には隠しきれない笑みが浮かんでいた。
 マレシアが僕のことをこうして待ってくれていたということが、どうしようもなくうれしくてたまらない。
 そんな自分に苦笑しながら、僕はマレシアを抱え自身のベッドへと移した。
 そして、かさばる外套だけを脱がして少しでも寝やすく調整して、僕はマレシアの艶やかな髪に手をのばす。

「お休み、いい夢を」

 さすがにマレシアと同じ部屋に寝る訳にはいかない。
 そう判断した僕は、仮眠室でも借りようかと立ち上がる。

 そして静かに歩き出そうとして……なにかが僕の動きを遮った。
 突然のことに驚きながらも、僕はゆっくりと自分の動きを制限してる方向へと振り返った。

「……マレシア?」
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