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竜皇国
ライム Ⅲ
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「……ええ。よろしいですよ」
私の言葉によって、自分の最強の盾として存在していた裁判所がもうなくなったことを知った元領主達。
「まぁ、私達を調べても何の意味もありませんよ」
だが、彼らは素直に自身の罪を認めることはなかった。
元領主達の今までただの性欲をぶつける対象としてしか見ていなかった視線に、私への怒りがこもり、私は自分が元領主達にきちんと敵として認識されたことを悟る。
「しかし無実である私達の罪の証拠など探すようなことをすれば、正義を志す方々が貴女へと反旗をひるがえすかもしれませんよ!」
次に元領主達が告げた言葉、そこには私などには自分達はどうすることもできないという最初から変わらない自身が込められていた。
そして、元領主達の言葉に私はその自信は決して過信ではないことを分かっていた。
元領主達が言葉の中で正義を志す方と、私達に反旗をひるがえだろうとして告げた存在。
それは正義を志すものなどではなく、ただ元領主達に借金でもして、その手下に落ちた高位貴族なのだ。
「………何が正義よ」
そしてそのことを知る私は思わずそう元領主達の言葉に思わず漏らす。
正直、その高位貴族達はただの罪人でしかない。
しかし、その高位貴族の存在が元領主の自信の理由だった。
確かに彼らは元領主達にの手下に成り下がった、高位貴族の中でも経済的、あるいは権力的も弱い存在だ。
だが、それでも高位貴族であるからにはかなりの発言権を王都では有している。
恐らく私達が元領主達を告訴したらプリマやクローディス達のような高位貴族の中でも一目置かれている存在が協力してくれるだろうが、それでも元領主達を裁ける自信は私にはなかった。
いや、それどころか最終的には私自身が冤罪をかけられてしまう可能性さえありえる。
それだけの数の高位貴族が今、元領主達へと協力しているのだ。
確かに前裁判所の存在は元領主達が訴えられそうになると、その訴えを自然消滅される役割を持ったまさに最強の盾であったかもしれない。
だが、元領主達はその最強の盾を失ったとしてもそれで罪ではないのだ。
訴えられたところでもみ消せるだけの力を有しているのだから。
だが、それでもまだ私は打つ手がなくなったわけではなかった。
「おや、どうしました?」
突然書類を取り出し、何かを探し始めた私の行動を最期の抵抗だとでも思ったのかそう元領主が喜色を滲ませた声を私にかけてくる。
その声にはもう私にはどうすることもできないだろうという確信が込められていた。
だが、私はその言葉を無視する。
しかしその私の反応にも上機嫌な元領主達が気を悪くすることはなかった。
「ライム嬢、態々裁判所に訴えるというのは明らかにやりすぎではないでしょうか?いえ、決して私達を疑うなと言っているわけではありません」
そして元領主達はそう突然何事かを話し始める。
一瞬私は何を話し始めたのかと、手を止めたが……
「それならば我々の屋敷にライム嬢が直々に調べに来ればよろしいではありませんか!そうすれば私達は貴女にじっくりと自身の無罪を教えることができますからね。
ーーー そう、じっくりとね」
「っ!」
しかし、直ぐに私は作業を止めたことを後悔することになる。
何故なら元領主達の言葉、それは今からでも訴えを取り下げ、屋敷に来て自身の身体を我々に捧げろ。そうしたらこの場の無礼は忘れてやるという、最初と同じような要求だったのだから。
「あはは!それはいい!」
「私も直々にライム嬢にお教えしたいことがありますからな!」
「婚約者は、英雄カルバス様でしたっけ?それならば仕事を理由に婚約を破棄して守らないと」
その最期の元領主の言葉に、部屋に元領主達の下卑た笑いが響く。
だが、それでも私は一切反応を返すことはなかった。
ただ黙々と書類を探す。
その私の無反応に、元領主達の間で私に対する苛立ちが溜まって行く。
そしてその状況に私は人知れず口元に笑みを浮かべた。
私は書類を探すような作業をしながらも、実は目的の書類はとうに見つかっている。
ただ今は書類を探すふりをして元領主達に苛立ちを抱かせようとしているだけなのだ。
「おい!何か言ったら……」
そしてその私の思惑など気づく由もなく、1人元領主が我慢が出来なくなったように私に怒声を上げ……
「あら、申し訳ございません」
その反応に私は思わずさらに笑みを深くする。
「実はこの書類を探すのに戸惑っていました」
「はっ?」
そして私が徐に取り出した書類、最初それに何が書かれているのか分からず元領主達は怪訝そうに眉をひそめる。
「なっ!」
だが、それが国王の横領金の使い道であったことを悟った瞬間顔色が変わった。
当たり前だろう。
普通、元領主達のような存在は幾ら悪事が明らかになっていても直ぐに罰することはできない。
罰することができるに足る理由が必要なのだ。
だが、一つ例外がある。
それはその証拠が既に揃っている場合。
ーーー そして私が差し出した書類、それはその証拠になりかねないそんな存在なのだから。
「私は横領金の全てを調べさせて頂きましたので」
突然の自分達を破滅させかねない存在に今までの自信に満ちた顔から血の気が引いた元領主達の顔、それを見ながら私は今までの鬱憤が晴れて行くのがわかる。
そして私は笑った。
あぁ、そう。この顔が見たかった、と。
私の言葉によって、自分の最強の盾として存在していた裁判所がもうなくなったことを知った元領主達。
「まぁ、私達を調べても何の意味もありませんよ」
だが、彼らは素直に自身の罪を認めることはなかった。
元領主達の今までただの性欲をぶつける対象としてしか見ていなかった視線に、私への怒りがこもり、私は自分が元領主達にきちんと敵として認識されたことを悟る。
「しかし無実である私達の罪の証拠など探すようなことをすれば、正義を志す方々が貴女へと反旗をひるがえすかもしれませんよ!」
次に元領主達が告げた言葉、そこには私などには自分達はどうすることもできないという最初から変わらない自身が込められていた。
そして、元領主達の言葉に私はその自信は決して過信ではないことを分かっていた。
元領主達が言葉の中で正義を志す方と、私達に反旗をひるがえだろうとして告げた存在。
それは正義を志すものなどではなく、ただ元領主達に借金でもして、その手下に落ちた高位貴族なのだ。
「………何が正義よ」
そしてそのことを知る私は思わずそう元領主達の言葉に思わず漏らす。
正直、その高位貴族達はただの罪人でしかない。
しかし、その高位貴族の存在が元領主の自信の理由だった。
確かに彼らは元領主達にの手下に成り下がった、高位貴族の中でも経済的、あるいは権力的も弱い存在だ。
だが、それでも高位貴族であるからにはかなりの発言権を王都では有している。
恐らく私達が元領主達を告訴したらプリマやクローディス達のような高位貴族の中でも一目置かれている存在が協力してくれるだろうが、それでも元領主達を裁ける自信は私にはなかった。
いや、それどころか最終的には私自身が冤罪をかけられてしまう可能性さえありえる。
それだけの数の高位貴族が今、元領主達へと協力しているのだ。
確かに前裁判所の存在は元領主達が訴えられそうになると、その訴えを自然消滅される役割を持ったまさに最強の盾であったかもしれない。
だが、元領主達はその最強の盾を失ったとしてもそれで罪ではないのだ。
訴えられたところでもみ消せるだけの力を有しているのだから。
だが、それでもまだ私は打つ手がなくなったわけではなかった。
「おや、どうしました?」
突然書類を取り出し、何かを探し始めた私の行動を最期の抵抗だとでも思ったのかそう元領主が喜色を滲ませた声を私にかけてくる。
その声にはもう私にはどうすることもできないだろうという確信が込められていた。
だが、私はその言葉を無視する。
しかしその私の反応にも上機嫌な元領主達が気を悪くすることはなかった。
「ライム嬢、態々裁判所に訴えるというのは明らかにやりすぎではないでしょうか?いえ、決して私達を疑うなと言っているわけではありません」
そして元領主達はそう突然何事かを話し始める。
一瞬私は何を話し始めたのかと、手を止めたが……
「それならば我々の屋敷にライム嬢が直々に調べに来ればよろしいではありませんか!そうすれば私達は貴女にじっくりと自身の無罪を教えることができますからね。
ーーー そう、じっくりとね」
「っ!」
しかし、直ぐに私は作業を止めたことを後悔することになる。
何故なら元領主達の言葉、それは今からでも訴えを取り下げ、屋敷に来て自身の身体を我々に捧げろ。そうしたらこの場の無礼は忘れてやるという、最初と同じような要求だったのだから。
「あはは!それはいい!」
「私も直々にライム嬢にお教えしたいことがありますからな!」
「婚約者は、英雄カルバス様でしたっけ?それならば仕事を理由に婚約を破棄して守らないと」
その最期の元領主の言葉に、部屋に元領主達の下卑た笑いが響く。
だが、それでも私は一切反応を返すことはなかった。
ただ黙々と書類を探す。
その私の無反応に、元領主達の間で私に対する苛立ちが溜まって行く。
そしてその状況に私は人知れず口元に笑みを浮かべた。
私は書類を探すような作業をしながらも、実は目的の書類はとうに見つかっている。
ただ今は書類を探すふりをして元領主達に苛立ちを抱かせようとしているだけなのだ。
「おい!何か言ったら……」
そしてその私の思惑など気づく由もなく、1人元領主が我慢が出来なくなったように私に怒声を上げ……
「あら、申し訳ございません」
その反応に私は思わずさらに笑みを深くする。
「実はこの書類を探すのに戸惑っていました」
「はっ?」
そして私が徐に取り出した書類、最初それに何が書かれているのか分からず元領主達は怪訝そうに眉をひそめる。
「なっ!」
だが、それが国王の横領金の使い道であったことを悟った瞬間顔色が変わった。
当たり前だろう。
普通、元領主達のような存在は幾ら悪事が明らかになっていても直ぐに罰することはできない。
罰することができるに足る理由が必要なのだ。
だが、一つ例外がある。
それはその証拠が既に揃っている場合。
ーーー そして私が差し出した書類、それはその証拠になりかねないそんな存在なのだから。
「私は横領金の全てを調べさせて頂きましたので」
突然の自分達を破滅させかねない存在に今までの自信に満ちた顔から血の気が引いた元領主達の顔、それを見ながら私は今までの鬱憤が晴れて行くのがわかる。
そして私は笑った。
あぁ、そう。この顔が見たかった、と。
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