上 下
30 / 62

30 (ラスラープ目線)

しおりを挟む
 「この頃の王家の振る舞いはやり過ぎだとは思わないか?」

 「は、はぁ……」

 マーキリの自信に一瞬私は自信を抱いたが、マーキリの不穏な言葉にその期待はいつのまにか薄らいでいた。
 王家に対しての不満、それはもちろんラ私にだってあるし、侯爵家ならば尚更だろう。
 何せ陛下のせいで侯爵家の動きはほとんど封じられているのだから。
 現在、マーキリはそのことにはっきりと気付いている様子ではないが、流石に王家が何かしてきていることについては気づいている。
 だから王家に対して不満を感じていようが、何らおかしくはない。
 ……だが、だからといってこうはっきりと王家に対する不満を言うことなど決してしてはならないことだった。
 現在の国王は貴族だけでなく、民衆達からもかなりの支持を得ている。
 それだけの力を有している。

 そして、そんな状況で迂闊に王家を貶めるような発言がタブーであることをマーキリが理解できていないはずが無いのだ。

 けれどもマーキリは王家に対する不信と取られてもおかしくないような発言をした。
 それはマーキリが今から行おうとしている行動が、決して褒められることのない行為であることを示しているのではないかと考え、私は無意識のうちに警戒を強める。


 「だから、陛下にはこの世からご退場頂こうと思う」



 「…………は?」

 ………しかし、次の瞬間マーキリが告げた計画はその私の想像さえ遥かに下回るものだった。





 ◇◆◇





 それからマーキリは驚くのも仕方ないと、唖然とした私の態度を咎めることはなく、国王暗殺の全貌を私に告げた。
 というのも、どうやら前々から国王に対して不満を持っていたらしい王妃が前々から国王に毒物を摂取させていたらしい。
 そのせいかか、国王の体調はかなり悪いらしく、国王が無くなるまではあともう少しらしい。

 ………けれども、私にはそうは思えなかった。

 あの化け物が、あっさりと死ぬとは私には信じられなかったのだ。
 だからマーキリと別れたあと、私はとある決断を下した。

 「こ、公爵家にこのことを伝えないと……」

 そう、もう侯爵家とは手を切るという。
 恐らく今が頃合いなのだろう。
 侯爵家はもう恐らくおしまいだ。
 だとすれば破滅まで私が侯爵家に付き合う義理などない。
 それに侯爵家の裏切りを公爵家辺りに知らせに行けば公爵家とも縁を作れる。
 だから私は特に迷うことなくそう決断した。

 けれども、その時私は気づくことはなかった。
 今の状況であれば最善手だと思い込んでいた自分の行動。

 ………それが私の破滅を招くことを。
しおりを挟む
感想 102

あなたにおすすめの小説

本を返すため婚約者の部屋へ向かったところ、女性を連れ込んでよく分からないことをしているところを目撃してしまいました。

四季
恋愛
本を返すため婚約者の部屋へ向かったところ、女性を連れ込んでよく分からないことをしているところを目撃してしまいました。

泣き虫令嬢は自称商人(本当は公爵)に愛される

琴葉悠
恋愛
 エステル・アッシュベリーは泣き虫令嬢と一部から呼ばれていた。  そんな彼女に婚約者がいた。  彼女は婚約者が熱を出して寝込んでいると聞き、彼の屋敷に見舞いにいった時、彼と幼なじみの令嬢との不貞行為を目撃してしまう。  エステルは見舞い品を投げつけて、馬車にも乗らずに泣きながら夜道を走った。  冷静になった途端、ごろつきに囲まれるが謎の商人に助けられ──

わたしは婚約者の不倫の隠れ蓑

岡暁舟
恋愛
第一王子スミスと婚約した公爵令嬢のマリア。ところが、スミスが魅力された女は他にいた。同じく公爵令嬢のエリーゼ。マリアはスミスとエリーゼの密会に気が付いて……。 もう終わりにするしかない。そう確信したマリアだった。 本編終了しました。

アルバートの屈辱

プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。 『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。

婚約破棄をしてくれた王太子殿下、ありがとうございました

hikari
恋愛
オイフィア王国の王太子グラニオン4世に婚約破棄された公爵令嬢アーデルヘイトは王国の聖女の任務も解かれる。 家に戻るも、父であり、オルウェン公爵家当主のカリオンに勘当され家から追い出される。行き場の無い中、豪商に助けられ、聖女として平民の生活を送る。 ざまぁ要素あり。

人質姫と忘れんぼ王子

雪野 結莉
恋愛
何故か、同じ親から生まれた姉妹のはずなのに、第二王女の私は冷遇され、第一王女のお姉様ばかりが可愛がられる。 やりたいことすらやらせてもらえず、諦めた人生を送っていたが、戦争に負けてお金の為に私は売られることとなった。 お姉様は悠々と今まで通りの生活を送るのに…。 初めて投稿します。 書きたいシーンがあり、そのために書き始めました。 初めての投稿のため、何度も改稿するかもしれませんが、どうぞよろしくお願いします。 小説家になろう様にも掲載しております。 読んでくださった方が、表紙を作ってくださいました。 新○文庫風に作ったそうです。 気に入っています(╹◡╹)

【1/21取り下げ予定】悲しみは続いても、また明日会えるから

gacchi
恋愛
愛人が身ごもったからと伯爵家を追い出されたお母様と私マリエル。お母様が幼馴染の辺境伯と再婚することになり、同じ年の弟ギルバードができた。それなりに仲良く暮らしていたけれど、倒れたお母様のために薬草を取りに行き、魔狼に襲われて死んでしまった。目を開けたら、なぜか五歳の侯爵令嬢リディアーヌになっていた。あの時、ギルバードは無事だったのだろうか。心配しながら連絡することもできず、時は流れ十五歳になったリディアーヌは学園に入学することに。そこには変わってしまったギルバードがいた。電子書籍化のため1/21取り下げ予定です。

蔑ろにされた王妃と見限られた国王

奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています 国王陛下には愛する女性がいた。 彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。 私は、そんな陛下と結婚した。 国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。 でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。 そしてもう一つ。 私も陛下も知らないことがあった。 彼女のことを。彼女の正体を。

処理中です...