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 「そうだ!そうに違いない!お前は実は脅されていて、私のことを思っているに違いない!だとしたら脅した人間はアランだな!そうに違いない!」

 「………」

 お兄様をこの場所に連れてこなかったにも関わらず、何故か暴走をし始めた王子に私は絶望感を感じていました。
 王子は国王の一人息子で、よって王太子になることは自動的に決まっています。
 けれども、あまりにも素行がアレなので、今は過去には王族との婚姻関係もある、我が家の令息、お兄様を国王に!というか貴族が増えています。
 そしてそのお兄様に対して劣等感を抱える王子は時々このように暴走し始めることがあったので、今回私はお兄様を連れてきていませんでした。

 ……なのに何でまた暴走し始めてるんですかね。

 「はぁ……」

 私は思わず未だ何かたわ言を吐き続ける王子に向かってため息を漏らしました。
 うん、これは聞き流すことさえ苦痛です。

 ーーー だから私はこの場から離脱するべくこの場所に持ってきていた魔法具を取り出しました。






 ◇◆◇






 私の持ってきていた魔道具、それは私の発明してきたものの一つでした。
 と言いつつも、軍事用として使用するには未だあらがあるので、発明途中というべきなのでしょうが。

 ですが、この状況から逃げるには発明途中でも大丈夫でしょう。

 「……と、これで」

 そう判断した私は膝においていた魔法具を発動させました。


 「大丈夫だぞ!ナーセリア!私がお前を助けてる!」

 「おお!ようやく分かったてくれたな!」


 ……そして次の瞬間、王子の目が虚になり、王子はまるで目の前に何者かがいるかのように話しだしました。

 そう、実はこの魔道具は術者の思い描いた人間が対象の人間の前で頷いている幻覚を見せる効果があるのです。
 正直、魔法使いの使うものと比べると限定的ではありますが、けれども魔力のない人間が使う魔道具ならば、これだけの効果があれば破格外の性能と言えるでしょう。
 そう私は頷いて。

 「では、王子が正気戻ればその魔法具を公爵家にまで届けてくださると嬉しいです。まだその魔法具は使うので」

 「………え?」

 今まで私のことを憐れみのこもった視線で、けれども他人事に見ていた案内役の青年に笑顔で告げました。
 その瞬間、青年の顔が青に染まりましたが、まぁ、尊い犠牲だと無視して私は牢獄を後にしました。

 「いや、ちょ、本当に……」

 最後、哀れな犠牲者の嘆願がきこえたきもしましたが、気のせいでしょう。
 私が足を止めることはありませんでした。
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