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「おそらく父上にも陛下にも、多分迷惑をかけることになるだろう」
呆然となる私に笑いかけながら、アラン様はさらに言葉を続けました。
「でも、発明姫であるリーリアの功績を考えればそれくらい許してくれるさ。……まぁ、その場合私は妻の功績に乗っかることになって情けないこと極まりないんだけど」
アラン様はそう告げると、恥ずかしそうに顔を赤らめました。
それでも、顔には満面の笑顔を浮かべながら。
「で、でも平民になったら私はきちんと働かせてもらうから!そこは安心してほしい。畑を耕す経験なんてないが、身分を捨てるまでにちゃんと学んでくるから!……ただ、時々でいいから一緒に畑を耕してみないか?そ、その、二人で共同作業とか、一度やってみたくて……」
そう未来の予想図を話すアラン様の顔は恥ずかしさからか真っ赤に染まっていました。
けれど、そうして平民になった時の話をするアラン様は本当に幸せそうに笑っていて。
「あ、あれ……」
そのことに気づいた時、私の目からは先程とは比べものにならない量の涙が溢れ出していました。
何故自分が泣いているのか分からなくて、一瞬私は戸惑いました。
けれども次の瞬間、私は胸に溢れる暖かい感情に自分の涙の理由を悟りました。
ーーー この涙は、アラン様が自分をここまで思ってくれていることに対する喜びなのだと。
そしてその瞬間私はもう私はアラン様から逃げられないことも理解しました。
この幸せを知った今、もう私はアラン様を拒絶することは出来ないと。
そのことを理解した瞬間、私は思わずアラン様へと文句を言っていました。
「アラン様が、こんなに卑怯だなんて、知りませんでした」
それは今の私に出来る精一杯の反撃でした。
けれども、嗚咽を挟みながらの、それでも先程とは違う柔らかい声は、アラン様の顔の浮かんだ笑みを深くするだけしか役に立ちませんでした。
「言っただろう。私は諦めてないって」
私の言葉に笑みを深くしたアラン様は柔らかい声でそう告げると、次の瞬間改まった表情で地面に跪きました。
「だから、改めて言わせて貰う。リーリア、僕の妻とこの国の王妃になってはくれないか?」
「っ!」
男性が跪き、女性にプロポーズする。
それはこの国で有名な英雄譚で物語の最後に英雄が救い出した王女に婚姻したシーンから風流な詩人が広めたプロポーズの方法で。
ーー 男性が跪くことで女性に対して、絶対に幸せにして見せると誓う意味があるプロポーズの方法でした。
「……本当に卑怯な人」
ここまでされてもう私には断ることなんて出来ませんでした。
元平民である私が王妃となれば絶対に数々の問題が吹き荒れるでしょう。
そしてそのことが原因で大切な人を亡くした私はそのことに対して隠しきれない恐怖を持っていました。
けれども何故か今、私の心は今までからはしんじられない程前向きで。
「お兄様、いえ、今からは旦那様でしょうか。よろしくお願いしますわ。貴方が私を幸せにしてくれるなら、私は貴方の幸せを守りますわ」
問題が起きるなら、夫婦で潰してやろうと思えるほど私は笑いました。
「ーーっ!は、はは。本当に勇ましい妻だな」
そしてその私の言葉にお兄様、いえ、旦那様は顔をくしゃりとして笑いを浮かべました。
「あら、お嫌いですか」
「いや、大好きだよ」
「ーーーっ!?」
「だから、絶対に君を僕は幸せにしてみせる」
旦那様の嘘偽りの無い本音は、恋愛に奥手だった私を赤面させるのは訳ないものでした。
そのせいで私は爆発してしまいそうな羞恥に襲われてしまうことになって。
ーーー けれども、そんなことも幸せに感じてしまうような幸福感に私は満ち溢れていました。
「そ、その……」
「ん?どうしたんだい?」
だから、私はその幸福感に突き動かされるまま、今まで言うことが出来なかったとある言葉を旦那様に告げることにしました。
今から口にする言葉のことを考えるたびに爆発しそうになる羞恥に襲われ顔を真っ赤にしながらながら、それでも私は笑いながら口を開きました。
「旦那様、大好きです」
「なっ!?」
その瞬間、今まで僅かに赤みを帯びるだけだった旦那様の顔が真っ赤に染まって。
「えい!」
「り、リーリア!?」
次の瞬間その旦那様の反応に耐えきれず私は抱きついていました。
そして、そんな私達を祝福するかのように、ゆらゆらと抱きついたことで一つになった私達の影を、窓から差し込んだ夕日が地面に大きく写していました……
◇◇◇
《あとがき》
エピローグに関してなのですが、悩みすぎて蛇足になりそうな感じが出てしまったので、ここで完結とさせて頂きます……申し訳ありません……何とかうまくまとめられれば、この先投稿させて頂く予定です……
呆然となる私に笑いかけながら、アラン様はさらに言葉を続けました。
「でも、発明姫であるリーリアの功績を考えればそれくらい許してくれるさ。……まぁ、その場合私は妻の功績に乗っかることになって情けないこと極まりないんだけど」
アラン様はそう告げると、恥ずかしそうに顔を赤らめました。
それでも、顔には満面の笑顔を浮かべながら。
「で、でも平民になったら私はきちんと働かせてもらうから!そこは安心してほしい。畑を耕す経験なんてないが、身分を捨てるまでにちゃんと学んでくるから!……ただ、時々でいいから一緒に畑を耕してみないか?そ、その、二人で共同作業とか、一度やってみたくて……」
そう未来の予想図を話すアラン様の顔は恥ずかしさからか真っ赤に染まっていました。
けれど、そうして平民になった時の話をするアラン様は本当に幸せそうに笑っていて。
「あ、あれ……」
そのことに気づいた時、私の目からは先程とは比べものにならない量の涙が溢れ出していました。
何故自分が泣いているのか分からなくて、一瞬私は戸惑いました。
けれども次の瞬間、私は胸に溢れる暖かい感情に自分の涙の理由を悟りました。
ーーー この涙は、アラン様が自分をここまで思ってくれていることに対する喜びなのだと。
そしてその瞬間私はもう私はアラン様から逃げられないことも理解しました。
この幸せを知った今、もう私はアラン様を拒絶することは出来ないと。
そのことを理解した瞬間、私は思わずアラン様へと文句を言っていました。
「アラン様が、こんなに卑怯だなんて、知りませんでした」
それは今の私に出来る精一杯の反撃でした。
けれども、嗚咽を挟みながらの、それでも先程とは違う柔らかい声は、アラン様の顔の浮かんだ笑みを深くするだけしか役に立ちませんでした。
「言っただろう。私は諦めてないって」
私の言葉に笑みを深くしたアラン様は柔らかい声でそう告げると、次の瞬間改まった表情で地面に跪きました。
「だから、改めて言わせて貰う。リーリア、僕の妻とこの国の王妃になってはくれないか?」
「っ!」
男性が跪き、女性にプロポーズする。
それはこの国で有名な英雄譚で物語の最後に英雄が救い出した王女に婚姻したシーンから風流な詩人が広めたプロポーズの方法で。
ーー 男性が跪くことで女性に対して、絶対に幸せにして見せると誓う意味があるプロポーズの方法でした。
「……本当に卑怯な人」
ここまでされてもう私には断ることなんて出来ませんでした。
元平民である私が王妃となれば絶対に数々の問題が吹き荒れるでしょう。
そしてそのことが原因で大切な人を亡くした私はそのことに対して隠しきれない恐怖を持っていました。
けれども何故か今、私の心は今までからはしんじられない程前向きで。
「お兄様、いえ、今からは旦那様でしょうか。よろしくお願いしますわ。貴方が私を幸せにしてくれるなら、私は貴方の幸せを守りますわ」
問題が起きるなら、夫婦で潰してやろうと思えるほど私は笑いました。
「ーーっ!は、はは。本当に勇ましい妻だな」
そしてその私の言葉にお兄様、いえ、旦那様は顔をくしゃりとして笑いを浮かべました。
「あら、お嫌いですか」
「いや、大好きだよ」
「ーーーっ!?」
「だから、絶対に君を僕は幸せにしてみせる」
旦那様の嘘偽りの無い本音は、恋愛に奥手だった私を赤面させるのは訳ないものでした。
そのせいで私は爆発してしまいそうな羞恥に襲われてしまうことになって。
ーーー けれども、そんなことも幸せに感じてしまうような幸福感に私は満ち溢れていました。
「そ、その……」
「ん?どうしたんだい?」
だから、私はその幸福感に突き動かされるまま、今まで言うことが出来なかったとある言葉を旦那様に告げることにしました。
今から口にする言葉のことを考えるたびに爆発しそうになる羞恥に襲われ顔を真っ赤にしながらながら、それでも私は笑いながら口を開きました。
「旦那様、大好きです」
「なっ!?」
その瞬間、今まで僅かに赤みを帯びるだけだった旦那様の顔が真っ赤に染まって。
「えい!」
「り、リーリア!?」
次の瞬間その旦那様の反応に耐えきれず私は抱きついていました。
そして、そんな私達を祝福するかのように、ゆらゆらと抱きついたことで一つになった私達の影を、窓から差し込んだ夕日が地面に大きく写していました……
◇◇◇
《あとがき》
エピローグに関してなのですが、悩みすぎて蛇足になりそうな感じが出てしまったので、ここで完結とさせて頂きます……申し訳ありません……何とかうまくまとめられれば、この先投稿させて頂く予定です……
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45話
《陛下とおられる方〜》とありますが
《陛下ともあられる方〜》ですかね?
《陛下とおられる方〜》だと
この場合、その時に陛下の側にいる人の事を指します。
《おられる》は《居る》という意味ですので。
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