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59 (アラン視線)

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 一体何故、リーリアがナーセリアという人物に対してそこまで引け目を感じているのかは私は知らない。
そこまでは陛下も私に教えようとはしてくれなかった。
 ……だけど、それでもあるひとつのことだけは絶対に正しいと私は考えていることがある。

 ーー それは、決して今までのリーリアの生活は決してそのナーセリアという人物に恥じるようなものではないということ。

 確かにリーリアは最終的に私怨でもって侯爵家やスレアといった人間達を殺したかもしれない。
 そしてリーリアの様子を見る限り、それはそのナーセリアという人物にとって決して褒められないものであるのだろう。

 けれども、それだけで今までのリーリアの行動全てが否定されるわけではない。

 私がリーリアに恋をしたのは平民の生活を向上させるため、必死に動き回るリーリアの姿だった。
 その時のリーリアは真剣そのものだった。
 ただ、苦しむ人間に心を痛め助けようと動き回る姿。
 それは本当に美しくて、そしてそのリーリアの行動に私を含め、様々な人間が救われた。
 そしてそんなリーリアをナーセリアという人物が本当に咎めるなんてことはありえない。
 それ程の活躍をリーリアは行なっているのだ。

 「私は……」

 ……だからリーリアの口から出たナーセリア様に認められない、という言葉は決して彼女に言わせてはならない言葉だった。

 どうしようもない後悔に襲われ、私は唇を強く噛みしめた。
 リーリアに言わせてはならない言葉を言わせてしまったという後悔が自分自身の不甲斐なさに対する憤怒を煽る。

 「っ!」

 しかし、私はその怒りを原動力にして立ち上がった。
 自分の不甲斐なさに対しての怒りは全く弱まることはない。
 それだけのことを自分がしたことは理解しているし、そのことについてはまた自分を見つめなおさなければならないだろう。

 けれども、今やるべきことは自分の不甲斐なさに対して後悔することではない。

「……これは自業自得ですね。」

 「私はまだ、諦めていないのだが?」

 「っ!お兄様!?」

 次の瞬間、もう間違えないというその気持ちと共に私は言葉を発した…
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