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57 (セルベルト目線)
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私は最近アランに対してリーリアの身の上を教えた。
そしてその時、ようやくアランはリーリアの過ごしてきた境遇を理解することになったのだ。
……そう、リーリアが苦しんでいる間も、全く自分はそのことに関われなかったことを。
それだけではない。
今回のことで、アランはさらに自分こそがリーリアに対してさらなる悩みのためとなっていたことも理解したのだ。
愛する人のためを思って踏み込まなかったとこが、さらに彼女を追い詰めていたのだ。
そのことを理解したからこそ、現在アランは自分に対して怒りを抑えることが出来ないのだろう。
リーリアの自分への想いをようやく理解できた今だからこそなおさら。
「だから、もう私は悩まない」
ーーー けれども、その声には一切諦めの色はなかった。
「陛下、今回私を次期国王についてと呼び出したのは全てを理解してのことですか?」
そう、それこそが現在この国では一番解決しなければならない問題だった。
何せ侯爵家の蛮行が明らかになった今、マークは王族として認められる未来はない。
ほかに王族がいない今、他の貴族から次期国王を探さなければならないのだ。
「さあ?何のことかわからないな。まあ、リーリアの本音を全く理解できない鈍感を呼び出す口実にそんなことを言ったのは否定しないがね」
「っ!……気にしているのだから、そこを指摘するのはやめて下さい」
「はは。自業自得だろう」
けれども、私は敢えてそんなことは些事であるかのように振舞ってみせる。
いや、実際にそんなことは些事でしか無かった。
ーーー 何せ、もう次期国王は決まっているのだから。
「で、どうするつもりだ?」
「……はあ、全て計算尽くですか。でも、もう答えなんて決まりきっているでしょう」
敢えてふざけた態度をとる私に対して、アランは深々と溜息を漏らす。
そしてその言葉を最後にアランはその顔を真剣なものに変え、身をひるがえしこの部屋を後にするべく扉に手をかけた。
「リーリアと結ばれる未来が許されるのが婚約者を自由に選べる権限を有する国王になることだけだというなら、私はリーリアのために国王になりますよ。賢王である貴方から見ればさぞ不純な動機でしょうが」
その言葉を最後にして、アランは部屋を後にした。
次の瞬間、王宮を走るような靴音が響いてきて、私はアランがリーリアを追いかけていったことを悟り、私は口元に笑みを浮かべた。
「気にすることないさ。私だって同じなのだから」
その私の言葉、それは私一人となった部屋の中、誰の耳に入ることなく霧散することになった……
そしてその時、ようやくアランはリーリアの過ごしてきた境遇を理解することになったのだ。
……そう、リーリアが苦しんでいる間も、全く自分はそのことに関われなかったことを。
それだけではない。
今回のことで、アランはさらに自分こそがリーリアに対してさらなる悩みのためとなっていたことも理解したのだ。
愛する人のためを思って踏み込まなかったとこが、さらに彼女を追い詰めていたのだ。
そのことを理解したからこそ、現在アランは自分に対して怒りを抑えることが出来ないのだろう。
リーリアの自分への想いをようやく理解できた今だからこそなおさら。
「だから、もう私は悩まない」
ーーー けれども、その声には一切諦めの色はなかった。
「陛下、今回私を次期国王についてと呼び出したのは全てを理解してのことですか?」
そう、それこそが現在この国では一番解決しなければならない問題だった。
何せ侯爵家の蛮行が明らかになった今、マークは王族として認められる未来はない。
ほかに王族がいない今、他の貴族から次期国王を探さなければならないのだ。
「さあ?何のことかわからないな。まあ、リーリアの本音を全く理解できない鈍感を呼び出す口実にそんなことを言ったのは否定しないがね」
「っ!……気にしているのだから、そこを指摘するのはやめて下さい」
「はは。自業自得だろう」
けれども、私は敢えてそんなことは些事であるかのように振舞ってみせる。
いや、実際にそんなことは些事でしか無かった。
ーーー 何せ、もう次期国王は決まっているのだから。
「で、どうするつもりだ?」
「……はあ、全て計算尽くですか。でも、もう答えなんて決まりきっているでしょう」
敢えてふざけた態度をとる私に対して、アランは深々と溜息を漏らす。
そしてその言葉を最後にアランはその顔を真剣なものに変え、身をひるがえしこの部屋を後にするべく扉に手をかけた。
「リーリアと結ばれる未来が許されるのが婚約者を自由に選べる権限を有する国王になることだけだというなら、私はリーリアのために国王になりますよ。賢王である貴方から見ればさぞ不純な動機でしょうが」
その言葉を最後にして、アランは部屋を後にした。
次の瞬間、王宮を走るような靴音が響いてきて、私はアランがリーリアを追いかけていったことを悟り、私は口元に笑みを浮かべた。
「気にすることないさ。私だって同じなのだから」
その私の言葉、それは私一人となった部屋の中、誰の耳に入ることなく霧散することになった……
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