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第十三話
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それから私はすぐに、商会の客室に案内された。
「で、何があったん? 詳しい話してや」
そう告げたジャルガに言われたままに、私は今までの経緯を話す。
すなわち、ソルタスが記憶喪失になり、私が子爵家に残ると決めた経緯を。
話ながら、私の心に鮮明にその時の思い出が蘇ってくる。
その時に感じた怒りと同時に。
ソルタスの記憶喪失。
それは確かに、想像よりはうまい演技だった。
けれど、ただの演技であることに私は容易く気づいていた。
いや、気づかない訳がなかった。
私が遺書、そう告げた時にソルタスの顔に浮かんだ歪んだ表情が頭によぎる。
……あれは罪悪感だった。
それをみた瞬間に、私は理解してしまった。
全てが偽りだと。
これは全て、私を子爵家にとどめる為の策謀なのだと。
つまり、私は別に子爵家に残る理由はなかったのだ。
そもそも、それが本当だとしても私が残る理由にはならなかった。
それだけの条件を私は整えていたのだから。
故に、カルバスのお願いという形でしか、私を引き留めることしかできなかった。
「なあ、あえて聞くけど何でそないなことしたん? それ、逃げよう思えば逃げれたやん」
そのことをつきあいの長いこの商人が見逃すことはなかった。
その細い目の下、金色の瞳をわずかにのぞかせながら、楽しそうに聞いてくる。
「まあ、言わんでも想像はつくけど。──内から食い破ろう、そう思ってるんやろ?」
ああ、やはりこの男はそれを理解しているのか。
そう分かって、私は唇をかみしめる。
話は早い。
けれど、本当におもしろくない男だと、私は内心ぼやく。
そんな私の内心さえ見抜いたようににやにやと笑いながら、ジャルガは告げる。
「で、それほどまでにおたくが頭に来てる理由はなんや。……あの子爵サマは何を踏みにじった?」
その声は、ふざけているように見えて、冷ややかな温度を持っていた。
それは私への心配から来る、ソルタスへの怒りだった。
それを理解し、私の胸を締め付ける感覚がよぎる。
いつもは茶化しているのに、どうしてこんな時だけ真剣に話を記憶とするのだと。
そのジャルガの表情に、私は気づかないながら自分が傷ついていたことを理解させられてしまう。
しかし、すぐに私はその思いを自分の胸の奥底へと封じ込める。
感傷に至るのは最後、全てが終わった後だと。
そうして自分を戒めた私は、真っ直ぐとジャルガの目を見返しながら告げる。
「あの人はお義母様の遺書を燃やした」
……それこそが、私の中に残る最後の信頼が消えた理由だった。
「で、何があったん? 詳しい話してや」
そう告げたジャルガに言われたままに、私は今までの経緯を話す。
すなわち、ソルタスが記憶喪失になり、私が子爵家に残ると決めた経緯を。
話ながら、私の心に鮮明にその時の思い出が蘇ってくる。
その時に感じた怒りと同時に。
ソルタスの記憶喪失。
それは確かに、想像よりはうまい演技だった。
けれど、ただの演技であることに私は容易く気づいていた。
いや、気づかない訳がなかった。
私が遺書、そう告げた時にソルタスの顔に浮かんだ歪んだ表情が頭によぎる。
……あれは罪悪感だった。
それをみた瞬間に、私は理解してしまった。
全てが偽りだと。
これは全て、私を子爵家にとどめる為の策謀なのだと。
つまり、私は別に子爵家に残る理由はなかったのだ。
そもそも、それが本当だとしても私が残る理由にはならなかった。
それだけの条件を私は整えていたのだから。
故に、カルバスのお願いという形でしか、私を引き留めることしかできなかった。
「なあ、あえて聞くけど何でそないなことしたん? それ、逃げよう思えば逃げれたやん」
そのことをつきあいの長いこの商人が見逃すことはなかった。
その細い目の下、金色の瞳をわずかにのぞかせながら、楽しそうに聞いてくる。
「まあ、言わんでも想像はつくけど。──内から食い破ろう、そう思ってるんやろ?」
ああ、やはりこの男はそれを理解しているのか。
そう分かって、私は唇をかみしめる。
話は早い。
けれど、本当におもしろくない男だと、私は内心ぼやく。
そんな私の内心さえ見抜いたようににやにやと笑いながら、ジャルガは告げる。
「で、それほどまでにおたくが頭に来てる理由はなんや。……あの子爵サマは何を踏みにじった?」
その声は、ふざけているように見えて、冷ややかな温度を持っていた。
それは私への心配から来る、ソルタスへの怒りだった。
それを理解し、私の胸を締め付ける感覚がよぎる。
いつもは茶化しているのに、どうしてこんな時だけ真剣に話を記憶とするのだと。
そのジャルガの表情に、私は気づかないながら自分が傷ついていたことを理解させられてしまう。
しかし、すぐに私はその思いを自分の胸の奥底へと封じ込める。
感傷に至るのは最後、全てが終わった後だと。
そうして自分を戒めた私は、真っ直ぐとジャルガの目を見返しながら告げる。
「あの人はお義母様の遺書を燃やした」
……それこそが、私の中に残る最後の信頼が消えた理由だった。
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