16 / 35
16
しおりを挟む
男爵令嬢が自室にやってくる、その突然の出来事に、一瞬私とマーレイアは驚きを隠せず固まる。
侯爵令嬢の部屋に、ノック無しで入るなど明らかなターブーで、そんなことが起きると私は思っていなかったのだ。
「……え?」
驚いたのは私だけではなかった。
扉を開けた男爵令嬢も、荷物を直前まで奪い合っていた私とマーレイアの姿に、動揺を漏らす。
だが、男爵令嬢が動揺していたのは一瞬のことだった。
「あははっ!そうよ!やっぱり私は恵まれているわ!侍女を虐めているなんて、明らかに悪役令嬢じゃない!」
次の瞬間、唐突に男爵令嬢は笑い始めた。
それも酷く嬉しそうに、声を上げて。
「……これは関わらない方が良いわね」
「はい。絶対にそうです」
……そして、その姿を見た瞬間、私は男爵令嬢と関わらないようにすることを決心した。
どうやら男爵令嬢は、私がマーレイアを虐めているという勘違いをしているらしい。
しかし、その誤解を解こうとすら、私は思わなかった。
ただ胸に抱くのは、目の前で高笑いをあげる少女に対する危機感。
こういう令嬢は、たしかに騙しやすいいいカモではあるが、身近にいる場合は災厄と変化する。
人の話を聞かず、自分の思い通りにことが進んでいると気に入らず、プライドだけは無駄に高い。
出来る限り関わらない方が良い人種なのだ。
「さあ、ネストリア。あんたの計画は絶対に阻止してみせるわ!」
……だが、そう判断して動く前に、男爵令嬢は私の自室の中へと無遠慮に入り込んでいた。
その態度に、思わず私の顔が引き攣る。
この男爵令嬢は相当自分勝手らしい。
「私はあんたの思い通りにはさせないから!」
だが、そんな私の様子に一切気づくことなく、男爵令嬢は言葉を重ねる。
「さあ早く、マーク様の側から離れて侯爵家の領地に戻りなさい!」
「言われなくても戻りますわ」
「そう、あくまで抵抗………え?」
……だが次の瞬間、私の返答に男爵令嬢の言葉は途切れることとなった。
侯爵令嬢の部屋に、ノック無しで入るなど明らかなターブーで、そんなことが起きると私は思っていなかったのだ。
「……え?」
驚いたのは私だけではなかった。
扉を開けた男爵令嬢も、荷物を直前まで奪い合っていた私とマーレイアの姿に、動揺を漏らす。
だが、男爵令嬢が動揺していたのは一瞬のことだった。
「あははっ!そうよ!やっぱり私は恵まれているわ!侍女を虐めているなんて、明らかに悪役令嬢じゃない!」
次の瞬間、唐突に男爵令嬢は笑い始めた。
それも酷く嬉しそうに、声を上げて。
「……これは関わらない方が良いわね」
「はい。絶対にそうです」
……そして、その姿を見た瞬間、私は男爵令嬢と関わらないようにすることを決心した。
どうやら男爵令嬢は、私がマーレイアを虐めているという勘違いをしているらしい。
しかし、その誤解を解こうとすら、私は思わなかった。
ただ胸に抱くのは、目の前で高笑いをあげる少女に対する危機感。
こういう令嬢は、たしかに騙しやすいいいカモではあるが、身近にいる場合は災厄と変化する。
人の話を聞かず、自分の思い通りにことが進んでいると気に入らず、プライドだけは無駄に高い。
出来る限り関わらない方が良い人種なのだ。
「さあ、ネストリア。あんたの計画は絶対に阻止してみせるわ!」
……だが、そう判断して動く前に、男爵令嬢は私の自室の中へと無遠慮に入り込んでいた。
その態度に、思わず私の顔が引き攣る。
この男爵令嬢は相当自分勝手らしい。
「私はあんたの思い通りにはさせないから!」
だが、そんな私の様子に一切気づくことなく、男爵令嬢は言葉を重ねる。
「さあ早く、マーク様の側から離れて侯爵家の領地に戻りなさい!」
「言われなくても戻りますわ」
「そう、あくまで抵抗………え?」
……だが次の瞬間、私の返答に男爵令嬢の言葉は途切れることとなった。
0
お気に入りに追加
4,053
あなたにおすすめの小説
泣き虫令嬢は自称商人(本当は公爵)に愛される
琴葉悠
恋愛
エステル・アッシュベリーは泣き虫令嬢と一部から呼ばれていた。
そんな彼女に婚約者がいた。
彼女は婚約者が熱を出して寝込んでいると聞き、彼の屋敷に見舞いにいった時、彼と幼なじみの令嬢との不貞行為を目撃してしまう。
エステルは見舞い品を投げつけて、馬車にも乗らずに泣きながら夜道を走った。
冷静になった途端、ごろつきに囲まれるが謎の商人に助けられ──
死に戻るなら一時間前に
みねバイヤーン
恋愛
「ああ、これが走馬灯なのね」
階段から落ちていく一瞬で、ルルは十七年の人生を思い出した。侯爵家に生まれ、なに不自由なく育ち、幸せな日々だった。素敵な婚約者と出会い、これからが楽しみだった矢先に。
「神様、もし死に戻るなら、一時間前がいいです」
ダメ元で祈ってみる。もし、ルルが主人公特性を持っているなら、死に戻れるかもしれない。
ピカッと光って、一瞬目をつぶって、また目を開くと、目の前には笑顔の婚約者クラウス第三王子。
「クラウス様、聞いてください。私、一時間後に殺されます」
一時間前に死に戻ったルルは、クラウスと共に犯人を追い詰める──。
婚約破棄ですか?それは死ぬ覚悟あっての話ですか?
R.K.
恋愛
結婚式まで数日という日──
それは、突然に起こった。
「婚約を破棄する」
急にそんなことを言われても困る。
そういった意味を込めて私は、
「それは、死ぬ覚悟があってのことなのかしら?」
相手を試すようにそう言った。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
この作品は登場人物の名前は出てきません。
短編の中の短編です。
前世軍医だった傷物令嬢は、幸せな花嫁を夢見る
花雨宮琵
恋愛
侯爵令嬢のローズは、10歳のある日、背中に刀傷を負い生死の境をさまよう。
その時に見た夢で、軍医として生き、結婚式の直前に婚約者を亡くした前世が蘇る。
何とか一命を取り留めたものの、ローズの背中には大きな傷が残った。
“傷物令嬢”として揶揄される中、ローズは早々に貴族女性として生きることを諦め、隣国の帝国医学校へ入学する。
背中の傷を理由に六回も婚約を破棄されるも、18歳で隣国の医師資格を取得。自立しようとした矢先に王命による7回目の婚約が結ばれ、帰国を余儀なくされる。
7人目となる婚約者は、弱冠25歳で東の将軍となった、ヴァンドゥール公爵家次男のフェルディナンだった。
長年行方不明の想い人がいるフェルディナンと、義務ではなく愛ある結婚を夢見るローズ。そんな二人は、期間限定の条件付き婚約関係を結ぶことに同意する。
守られるだけの存在でいたくない! と思うローズは、一人の医師として自立し、同時に、今世こそは愛する人と結ばれて幸せな家庭を築きたいと願うのであったが――。
この小説は、人生の理不尽さ・不条理さに傷つき悩みながらも、幸せを求めて奮闘する女性の物語です。
※この作品は2年前に掲載していたものを大幅に改稿したものです。
(C)Elegance 2025 All Rights Reserved.無断転載・無断翻訳を固く禁じます。
婚約破棄をしてくれた王太子殿下、ありがとうございました
hikari
恋愛
オイフィア王国の王太子グラニオン4世に婚約破棄された公爵令嬢アーデルヘイトは王国の聖女の任務も解かれる。
家に戻るも、父であり、オルウェン公爵家当主のカリオンに勘当され家から追い出される。行き場の無い中、豪商に助けられ、聖女として平民の生活を送る。
ざまぁ要素あり。
令嬢が婚約破棄をした数年後、ひとつの和平が成立しました。
夢草 蝶
恋愛
公爵の妹・フューシャの目の前に、婚約者の恋人が現れ、フューシャは婚約破棄を決意する。
そして、婚約破棄をして一週間も経たないうちに、とある人物が突撃してきた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる