15 / 35
15
しおりを挟む
サラベルトとの会談があった翌日、私は自室でマーレイアと共に荷物を纏めていた。
「……お嬢様、私が荷物を畳まさせて頂こうと思っているのですが」
当然のような顔をして、荷物を纏める私に、マーレイアが半眼でそう告げる。
本来、荷物を纏めるのはメイドや侍女達の仕事で、貴族の令嬢がするものではない。
と、そう言いたげにマーレイアはこちらに視線を向けてくる。
「いいじゃないの。もう時間も無いのですし」
だが私は、まるで応えた様子なくそれだけ告げて、作業を続行する。
その言葉通り、バーベスト家の一員などではなった私は、明日明後日には、馬車でこの場所を去ることになっている。
出来る限り早めに荷物を整えておかなくてはならないのだ。
「結構です。私で十分間に合います」
「あ、ちょっ、」
……だが、そんな言い訳でマーレイアが頷く訳がなかった。
取り付く暇もなく、マーレイアは私の言葉を否定し、こちらの手に持っている荷物を奪いにくる。
どうやら実力行使に出るつもりらしい。
だが、そうなれば私も手段を選ぶつもりはなかった。
「ほら、これでどうかしら」
「くっ!」
次の瞬間、私は自分の持っている荷物を天高く持ち上げた。
そうすると、発育があまり良くないというか、発達途中(希望)であるマーレイアの高さでは届かないのだ。
何とかマーレイアは背伸びをして、荷物を奪おうとするが、残念ながらそれではまだ届かない。
マーレイアは私の顔を見上げ、さも悔しげな顔を浮かべるが、私はまるで気にしない。
マーレイアは私が時々間諜としての役目を頼むだけあり、かなり身体能力が高い。
だから飛ぶことが出来れば、私の手に持っている荷物も取れるが、最近お堅く振る舞うようになったマーレイアには、主人である私の目の前で飛ぶことなんて出来ないだろう。
それを確信した私は、得意げな笑みを浮かべ、口を開いた。
「少しぐらい私が手伝ってもいいじゃないの。ほら、今まで私が掃除や洗濯などもしていた時期もあったじゃない」
「それは、事情が、あったからで」
その私の言葉に対し返信しながら、マーレイアは少しつっかえながら返答する。
途中荷物を取ろうと背伸びするせいで、言葉が途切れているのだ。
「今はやらなくてもいいではないですか!貴族社会で、お嬢様が雑用もしていると噂になればどうするのですか!」
だが、マーレイアは最終的に荷物を取ることを諦め、私の説得にかかる。
どうやら何としてでも、私が手伝うことを防ごうと考えているらしい。
だが、もうすでに貴族社会での噂は最悪なのに、今さら評判と言われたところで私が躊躇するわけがなかった。
「だから、今さら……」
その事をマーレイアに伝えるべく、私は口を開く。
「え……?」
私の自室の扉が、音をたてて開いたのはそのときだった。
侯爵令嬢である自分の部屋が、挨拶どころかノックさえなく開いたことに驚きながら、私は扉へと顔を向ける。
「ここが、ネストリアの部屋ね」
そこにいたのは、婚約破棄の時私に勝ち誇った笑みを見せてきた、マークの浮気相手の男爵令嬢だった。
「……お嬢様、私が荷物を畳まさせて頂こうと思っているのですが」
当然のような顔をして、荷物を纏める私に、マーレイアが半眼でそう告げる。
本来、荷物を纏めるのはメイドや侍女達の仕事で、貴族の令嬢がするものではない。
と、そう言いたげにマーレイアはこちらに視線を向けてくる。
「いいじゃないの。もう時間も無いのですし」
だが私は、まるで応えた様子なくそれだけ告げて、作業を続行する。
その言葉通り、バーベスト家の一員などではなった私は、明日明後日には、馬車でこの場所を去ることになっている。
出来る限り早めに荷物を整えておかなくてはならないのだ。
「結構です。私で十分間に合います」
「あ、ちょっ、」
……だが、そんな言い訳でマーレイアが頷く訳がなかった。
取り付く暇もなく、マーレイアは私の言葉を否定し、こちらの手に持っている荷物を奪いにくる。
どうやら実力行使に出るつもりらしい。
だが、そうなれば私も手段を選ぶつもりはなかった。
「ほら、これでどうかしら」
「くっ!」
次の瞬間、私は自分の持っている荷物を天高く持ち上げた。
そうすると、発育があまり良くないというか、発達途中(希望)であるマーレイアの高さでは届かないのだ。
何とかマーレイアは背伸びをして、荷物を奪おうとするが、残念ながらそれではまだ届かない。
マーレイアは私の顔を見上げ、さも悔しげな顔を浮かべるが、私はまるで気にしない。
マーレイアは私が時々間諜としての役目を頼むだけあり、かなり身体能力が高い。
だから飛ぶことが出来れば、私の手に持っている荷物も取れるが、最近お堅く振る舞うようになったマーレイアには、主人である私の目の前で飛ぶことなんて出来ないだろう。
それを確信した私は、得意げな笑みを浮かべ、口を開いた。
「少しぐらい私が手伝ってもいいじゃないの。ほら、今まで私が掃除や洗濯などもしていた時期もあったじゃない」
「それは、事情が、あったからで」
その私の言葉に対し返信しながら、マーレイアは少しつっかえながら返答する。
途中荷物を取ろうと背伸びするせいで、言葉が途切れているのだ。
「今はやらなくてもいいではないですか!貴族社会で、お嬢様が雑用もしていると噂になればどうするのですか!」
だが、マーレイアは最終的に荷物を取ることを諦め、私の説得にかかる。
どうやら何としてでも、私が手伝うことを防ごうと考えているらしい。
だが、もうすでに貴族社会での噂は最悪なのに、今さら評判と言われたところで私が躊躇するわけがなかった。
「だから、今さら……」
その事をマーレイアに伝えるべく、私は口を開く。
「え……?」
私の自室の扉が、音をたてて開いたのはそのときだった。
侯爵令嬢である自分の部屋が、挨拶どころかノックさえなく開いたことに驚きながら、私は扉へと顔を向ける。
「ここが、ネストリアの部屋ね」
そこにいたのは、婚約破棄の時私に勝ち誇った笑みを見せてきた、マークの浮気相手の男爵令嬢だった。
1
お気に入りに追加
4,052
あなたにおすすめの小説
死に戻るなら一時間前に
みねバイヤーン
恋愛
「ああ、これが走馬灯なのね」
階段から落ちていく一瞬で、ルルは十七年の人生を思い出した。侯爵家に生まれ、なに不自由なく育ち、幸せな日々だった。素敵な婚約者と出会い、これからが楽しみだった矢先に。
「神様、もし死に戻るなら、一時間前がいいです」
ダメ元で祈ってみる。もし、ルルが主人公特性を持っているなら、死に戻れるかもしれない。
ピカッと光って、一瞬目をつぶって、また目を開くと、目の前には笑顔の婚約者クラウス第三王子。
「クラウス様、聞いてください。私、一時間後に殺されます」
一時間前に死に戻ったルルは、クラウスと共に犯人を追い詰める──。
果たされなかった約束
家紋武範
恋愛
子爵家の次男と伯爵の妾の娘の恋。貴族の血筋と言えども不遇な二人は将来を誓い合う。
しかし、ヒロインの妹は伯爵の正妻の子であり、伯爵のご令嗣さま。その妹は優しき主人公に密かに心奪われており、結婚したいと思っていた。
このままでは結婚させられてしまうと主人公はヒロインに他領に逃げようと言うのだが、ヒロインは妹を裏切れないから妹と結婚して欲しいと身を引く。
怒った主人公は、この姉妹に復讐を誓うのであった。
※サディスティックな内容が含まれます。苦手なかたはご注意ください。
王妃そっちのけの王様は二人目の側室を娶る
家紋武範
恋愛
王妃は自分の人生を憂いていた。国王が王子の時代、彼が六歳、自分は五歳で婚約したものの、顔合わせする度に喧嘩。
しかし王妃はひそかに彼を愛していたのだ。
仲が最悪のまま二人は結婚し、結婚生活が始まるが当然国王は王妃の部屋に来ることはない。
そればかりか国王は側室を持ち、さらに二人目の側室を王宮に迎え入れたのだった。
婚約破棄された私は、処刑台へ送られるそうです
秋月乃衣
恋愛
ある日システィーナは婚約者であるイデオンの王子クロードから、王宮敷地内に存在する聖堂へと呼び出される。
そこで聖女への非道な行いを咎められ、婚約破棄を言い渡された挙句投獄されることとなる。
いわれの無い罪を否定する機会すら与えられず、寒く冷たい牢の中で断頭台に登るその時を待つシスティーナだったが──
他サイト様でも掲載しております。
お姉様は嘘つきです! ~信じてくれない毒親に期待するのをやめて、私は新しい場所で生きていく! と思ったら、黒の王太子様がお呼びです?
朱音ゆうひ
恋愛
男爵家の令嬢アリシアは、姉ルーミアに「悪魔憑き」のレッテルをはられて家を追い出されようとしていた。
何を言っても信じてくれない毒親には、もう期待しない。私は家族のいない新しい場所で生きていく!
と思ったら、黒の王太子様からの招待状が届いたのだけど?
別サイトにも投稿してます(https://ncode.syosetu.com/n0606ip/)
高いお金と引き換えに家族から売られた私ですが、どうやら最終的には過去一の幸せが待っているようです。
加集 奈都
恋愛
「2つも同じ顔など、我が家に必要はない。」
そう言われ、高いお金と引き換えに子供好きと噂される変態伯爵の元へと売られた男爵令嬢のアイヴィ。
幸せとは程遠い生活を送り、いやらしい要求を嫌々のむ毎日。
まだ愛玩動物としての価値があるだけ喜ばしいことなのか。それとも愛玩動物としての価値しかないことに絶望するべきなのか。
そんなことを考えていたアイヴィだったが、助けは突如としてやって来た。
助けられたことをきっかけに、高名な公爵家とされるウィンストン家の養女となったアイヴィ。そしてそこで出会う、3人の兄弟+1人の王太子。
家族に捨てられ、変態伯爵に可愛がられてしまったことで、すっかり感情を表に出すことが苦手になってしまったアイヴィと、そんなアイヴィを可愛がりたい兄弟達+王太子+大人達の物語。
父が再婚してから酷い目に遭いましたが、最終的に皆罪人にして差し上げました
四季
恋愛
母親が亡くなり、父親に新しい妻が来てからというもの、私はいじめられ続けた。
だが、ただいじめられただけで終わる私ではない……!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる