婚約破棄されましたが、特に問題ありませんでした

影茸

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 「……息子、マークが、ありもしない罪で貴女を婚約破棄しようとしたこと、浮気したこと、そして貴方を強欲令嬢と罵ったことを謝罪する」

 私の言葉に負け、改めてサラベルトが口にしたのは、あまりにも酷い罪状だった。
 これなら、ギリギリまでサラベルトが罪状をはっきりと口にするのを迷ったのも、頷ける。
 私が圧倒的優位に立っていなければ、後で弁解出来るように出来る限り濁して痛かったに違いない。
 真っ青な顔をして、汗を拭うサラベルトの様子がそのことを何よりも雄弁に語っていた。

 「……本当にあんなことをするとは我が息子ながら情けない。本当に申し訳ない」

 次の瞬間、その言葉と共にサラベルトは私へと頭を下げた。

 「今回の騒ぎ、そのすべては私の監督不足が原因だ。本当にどうしてあんな息子になってしまったのか……だが、今回の婚約破棄は決して本意ではなかった。それだけは理解して欲しい」

 そう告げるサラベルトの顔には、隠しきれない苦渋が浮かんでいた。
 それはまるで息子の暴走に心を痛めるような態度で。

 「今回の件、非は全面的にバーベスト家にあることを認め、マークをバーベスト家から追放することも私は厭わない。本当に申し訳なかった。」

 そしてサラベルトは再度、私にそう頭を下げた。
 マークはサラベルトの一人息子ではあるが、ハーベスト家の跡継ぎは養子をとることでかわりに出来る。
 だが、それでも本来であれば一人息子を追放するなんて決断を下すことはできないだろう。
 それにもかかわらず、一人息子を追放すると決めたサラベルトの決断、それは私に対する最大の誠意に見える。

 ……だが、そのサラベルトの言葉に私は、ハーベスト家を捨てることを決断した。
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