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 「お疲れ様でした。お嬢様」

 「ただいまですわ」

 私が自室に戻ると、そこには私の専属侍女である、マーレイアの姿があった。
 通常であれば、専属侍女はパーティーの時主人に同行するのが普通だが、そのことで私がマーレイアを責めることはない。
 何せ、マーレイアが私から離れていたのは、私が彼女にある頼みごとをしたからなのだから。

 「で、マーレイア。どうしたか?」

 私は、挨拶の次にその成果をマーレイアに尋ねる。
 大体の予想はついていたが、出来る限りその予想は外れて欲しい、とそう思いながら。

 「黒でした」

 ……しかし、残念なことにその私の願いが聞き届けられることはなかったらしい。

 「はあ……」

 想像していた通りの答えをマーレイアから聞き、私は思わず溜息を漏らしていた。
 本当に、バーベスト家には身の程知らずしかいないらしい。
 貴族が謀略を巡らせるのは分かるが、それでも相手を見て仕掛けて欲しい。
 届かないと分かりながら、そんな願いに私は自分の顔を暗くする。

 「お嬢様、今は落ち込んでいる時ではありませんよ」

 しかし、そんな私をマーレイアの声が我に戻す。
 マーレイアへと視線を移すと、彼女は口を開いた。

 「おそらく明日、あのボンクラ息子の父、バーベスト家の当主から謝罪のために呼び出されると思います」

 「ですわね」

 そのマーレイアの言葉に同意を示すよう、私は頷く。
 私は現在、バーベスト家でかなりの商売に手を出している。
 それは一応は自分の家となるバーベスト家にも、恩を売っておこうという考えのもとの行動。
 だが今、その商売は軌道に乗り、かなりの利益を上げている。

 ……どうやらそれが、今回の騒動の原因となったらしい。

 婚約破棄した今、その利益をどうにかバーベスト家のものにしようと考えて行動するのは、ありありと想像できる未来だ。


 「では、その時に目にものを見せて差し上げましょう」

 だったらその時に、きっちりとやり返してやろう。
 そう考え、私は笑みを浮かべた。
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