冤罪で追放された令嬢〜周囲の人間達は追放した大国に激怒しました〜

第31話 マルドーレ

 「くそ！まだサーレ達は、マーセリアは戻ってこないのか！」

 「ぐっ！も、申し訳ございません」

 それはサーレとアナが王都を後にした二日後のこと、マルドーレは側にいた文官に八つ当たりしていた。
 マーセリアがいなくなってもはやかなりの日数が経過した今、当たり前のことであるが数日でその行方がわかれば奇跡、その程度のものなのだ。
 だが、感情的に怒鳴り散らすマルドーレはそれを理解できない。
 いや、正しくは理解していても納得は出来ないと言うべきか。

 「くそ！くそ！くそ！なぜこの私がこんな目に合わなくてはならないのだ！」

 ……ここまでマルドーレが感情的になっている理由、それは大陸連盟が潰れたことにより大陸に流れ出したある噂が理由だった。
 大陸連盟というか存在が潰れたことにより、大陸には激震が走った。
 当たり前だろう。
 それ程までに大陸連盟は大陸中から注目を浴びている存在だったのだから。

 だからこそ、大陸連盟が潰れたという情報はは一瞬のうちに大陸中に知れ渡ることとなった。

 そして今まで、順調に物事が進んでいたかのように見えた大陸連盟が潰れたことでさまざまな憶測が飛ぶことになった。
 ただ、どの憶測もある一つの前提条件だけは同じだった。


 ……そう、マルドーレの愚かさのせいで大陸連盟は潰れたという。


 そして、それを耳にしたマルドーレは怒り狂った。
 ……その情報は決して間違いではないにもかかわらずに。
 さらに現在、大陸ではマーセリアは冤罪だったのではないかというそんな噂も広がりめている。
 愚かなマルドーレが考えなしにマーセリアを追放したのではないかという噂が。

 …….そしてその噂が広まったことにより現在、マルドーレは大陸中から疎まれる存在となっていた。

 自身の愚かさにより、優秀な臣下を冤罪で追放し、大陸連盟を崩壊させた愚王。
 それが今の大陸のマルドーレに対する評価なのだ。
 ……そして、それは偶然真実と全く一致していた。

 けれども、プライドだけは高いマルドーレがそよ評価を受け入れられるわけがなかった。

 「くそ！もういい！マーセリアのような無能の存在などもうどうでもいい！」

 「え、ですが……竜の国に助けをこうならマーセリア嬢の存在は必要不可欠……」

 「黙れぇぇ！」

 「うがっ！？」

 ……そして、マルドーレはいさめようとする文官を殴り、とある決断をくだす。

 「今から私は竜の国に行って元大陸連盟加盟国を襲うよう命じてくる！ふははは！そうだ！最初からこうすれば良かったのだ！これで私は大陸を支配することが出来るようになる！」

 それがどれほど愚かな決断なのか、マルドーレだけが気づいていなかった……