121 / 169
隠し続けた理由 (マルク視点)
しおりを挟む
思わず言葉を失う俺とリーリア。
「一人の独断と言うことにすれば、ほかの人間が責められるのはましになるだろう。そうすれば、間違いなく被害はましになる」
……そのことに気付いていない訳がない訳がないのに、アルフォードはなにもないように話を続ける。
そんなアルフォードに、俺は我ながらかすれた声をあげる。
「待てよ、アルフォード」
「そうすれば、生徒会メンバー全員……どうした、マルク?」
「……どうした、じゃないに決まっているだろう」
俺はアルフォードをまっすぐと見返し告げる。
「もしかして、お前がその独断を行った体でいくつもりなのか?」
「……なにを言ってる?」
その質問に、アルフォードは首を傾げて聞いてくる。
「俺以外の誰に、その役をやれる人がいるわけないだろう?」
「っ!」
その言葉に、リーリアが言葉を失う。
……何かを察したように。
しかし、俺はアルフォードを睨むつけて告げる。
「うるせぇ。そんなの誰が認めるか。やるなら、俺がやる」
「王宮にやっときたマルクが、断行したなんて説得力がかけるだけだ」
……しかし、その俺の言葉をばっさりとアルフォードはたたききる。
「それとも、ソシリアに独断を装わせた方がいいとでも?」
「……っ!」
脳裏に、倒れたソシリアの姿が浮かぶ。
……それに、俺はなにもいえなくなる。
同時に俺は気付いてしまう。
──偽装婚約を必死に隠そうとしていたことも、この独断と無関係ではないだろうと。
自身が全ての責任を負うために、アルフォードは一体どれだけのことを……それもどれだけ前から考えていたのか。
その考えに、思わず唇をかみしめる。
そんな俺たちに、アルフォードは笑いかけてくる。
……サーシャリアのそばにいたとき目にした笑みとは比べものにならないぎこちない笑みで。
「マルクとリーリアには、俺の独断を糾弾してほしい。正直、そうでなくとも、サーシャリアは俺を恨むだろう。だが、それが生徒会メンバーに降りかかることはなんとしてでも避けたい」
なにもいえない俺達に、了承してもらえたと思ったのか、さらにアルフォードは続ける。
「サーシャリアが立ち直っても、信頼できる仲間が必要なのは変わらない。そのためにも、何とか協力してほしい」
「……いい、のかよ」
その言葉に、俺は思わず口を開いていた。
「なにが?」
表情を変えることのないアルフォードへと、俺は尋ねる。
「お前は、本当にそれで満足なのかよ?」
……本当に、思い人に嫌われる覚悟はあるのかと。
「一人の独断と言うことにすれば、ほかの人間が責められるのはましになるだろう。そうすれば、間違いなく被害はましになる」
……そのことに気付いていない訳がない訳がないのに、アルフォードはなにもないように話を続ける。
そんなアルフォードに、俺は我ながらかすれた声をあげる。
「待てよ、アルフォード」
「そうすれば、生徒会メンバー全員……どうした、マルク?」
「……どうした、じゃないに決まっているだろう」
俺はアルフォードをまっすぐと見返し告げる。
「もしかして、お前がその独断を行った体でいくつもりなのか?」
「……なにを言ってる?」
その質問に、アルフォードは首を傾げて聞いてくる。
「俺以外の誰に、その役をやれる人がいるわけないだろう?」
「っ!」
その言葉に、リーリアが言葉を失う。
……何かを察したように。
しかし、俺はアルフォードを睨むつけて告げる。
「うるせぇ。そんなの誰が認めるか。やるなら、俺がやる」
「王宮にやっときたマルクが、断行したなんて説得力がかけるだけだ」
……しかし、その俺の言葉をばっさりとアルフォードはたたききる。
「それとも、ソシリアに独断を装わせた方がいいとでも?」
「……っ!」
脳裏に、倒れたソシリアの姿が浮かぶ。
……それに、俺はなにもいえなくなる。
同時に俺は気付いてしまう。
──偽装婚約を必死に隠そうとしていたことも、この独断と無関係ではないだろうと。
自身が全ての責任を負うために、アルフォードは一体どれだけのことを……それもどれだけ前から考えていたのか。
その考えに、思わず唇をかみしめる。
そんな俺たちに、アルフォードは笑いかけてくる。
……サーシャリアのそばにいたとき目にした笑みとは比べものにならないぎこちない笑みで。
「マルクとリーリアには、俺の独断を糾弾してほしい。正直、そうでなくとも、サーシャリアは俺を恨むだろう。だが、それが生徒会メンバーに降りかかることはなんとしてでも避けたい」
なにもいえない俺達に、了承してもらえたと思ったのか、さらにアルフォードは続ける。
「サーシャリアが立ち直っても、信頼できる仲間が必要なのは変わらない。そのためにも、何とか協力してほしい」
「……いい、のかよ」
その言葉に、俺は思わず口を開いていた。
「なにが?」
表情を変えることのないアルフォードへと、俺は尋ねる。
「お前は、本当にそれで満足なのかよ?」
……本当に、思い人に嫌われる覚悟はあるのかと。
0
お気に入りに追加
7,698
あなたにおすすめの小説
前世軍医だった傷物令嬢は、幸せな花嫁を夢見る
花雨宮琵
恋愛
侯爵令嬢のローズは、10歳のある日、背中に刀傷を負い生死の境をさまよう。
その時に見た夢で、軍医として生き、結婚式の直前に婚約者を亡くした前世が蘇る。
何とか一命を取り留めたものの、ローズの背中には大きな傷が残った。
“傷物令嬢”として揶揄される中、ローズは早々に貴族女性として生きることを諦め、隣国の帝国医学校へ入学する。
背中の傷を理由に六回も婚約を破棄されるも、18歳で隣国の医師資格を取得。自立しようとした矢先に王命による7回目の婚約が結ばれ、帰国を余儀なくされる。
7人目となる婚約者は、弱冠25歳で東の将軍となった、ヴァンドゥール公爵家次男のフェルディナンだった。
長年行方不明の想い人がいるフェルディナンと、義務ではなく愛ある結婚を夢見るローズ。そんな二人は、期間限定の条件付き婚約関係を結ぶことに同意する。
守られるだけの存在でいたくない! と思うローズは、一人の医師として自立し、同時に、今世こそは愛する人と結ばれて幸せな家庭を築きたいと願うのであったが――。
この小説は、人生の理不尽さ・不条理さに傷つき悩みながらも、幸せを求めて奮闘する女性の物語です。
※この作品は2年前に掲載していたものを大幅に改稿したものです。
(C)Elegance 2025 All Rights Reserved.無断転載・無断翻訳を固く禁じます。
成人したのであなたから卒業させていただきます。
ぽんぽこ狸
恋愛
フィオナはデビュタント用に仕立てた可愛いドレスを婚約者であるメルヴィンに見せた。
すると彼は、とても怒った顔をしてフィオナのドレスを引き裂いた。
メルヴィンは自由に仕立てていいとは言ったが、それは流行にのっとった範囲でなのだから、こんなドレスは着させられないという事を言う。
しかしフィオナから見れば若い令嬢たちは皆愛らしい色合いのドレスに身を包んでいるし、彼の言葉に正当性を感じない。
それでも子供なのだから言う事を聞けと年上の彼に言われてしまうとこれ以上文句も言えない、そんな鬱屈とした気持ちを抱えていた。
そんな中、ある日、王宮でのお茶会で変わり者の王子に出会い、その素直な言葉に、フィオナの価値観はがらりと変わっていくのだった。
変わり者の王子と大人になりたい主人公のお話です。
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。
記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話
甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。
王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。
その時、王子の元に一通の手紙が届いた。
そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。
王子は絶望感に苛まれ後悔をする。
酒の席での戯言ですのよ。
ぽんぽこ狸
恋愛
成人前の令嬢であるリディアは、婚約者であるオーウェンの部屋から聞こえてくる自分の悪口にただ耳を澄ませていた。
何度もやめてほしいと言っていて、両親にも訴えているのに彼らは総じて酒の席での戯言だから流せばいいと口にする。
そんな彼らに、リディアは成人を迎えた日の晩餐会で、仕返しをするのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる