妹に全てを奪われた私は〜虐げられた才女が愛されることを知るまで〜

私のしていたこと （ソシリア視点）

「……え？」

　アルフォードの言葉に、私は呆然と声を漏らす。
　今まで頑なに思いを告げる必要がないと言い張ってきたアルフォード。
　その姿をずっと目にしてきたせいで、私はその可能性を考えてもいなかった。
　だが、今になって気付く。

　……あれだけ、サーシャリアに会いに行っていたアルフォードが、アプローチをしていてもなんらおかしくないことを。

「婚約破棄されて、ようやく手に入れられる状態でやってきたサーシャリアに、俺が気持ちを隠そうと決意すると思うか？」

　その私の考えを肯定するように、アルフォードはそう告げる。

「……それじゃ、どうして言うことをあんな拒否した」

「予兆があったからだ」

　マルクの問いにそう答えたアルフォードの顔には、どれだけ悩んだかを示すような苦悩が浮かんでいた。

「俺が思いを告げても、サーシャリアを傷つけるだけという予兆がな」

「……それは確かなの？」

「ああ」

　リーリアの問いに、アルフォードは間髪入れず頷く。

「それを確かめるために、俺が何度サーシャリアの部屋に行ったと思う？　……伯爵家に関して話すのは絶対だめだと言うのも、その予兆を確認してわかったことだ」

　そう語るアルフォードの目は真剣そのものだった。
　その態度からは、嘘や誤魔化しのようには感じられない。

「おそらく、サーシャリアが感じているのは、俺達に見捨てられたくないという不安だ。そして、そのせいでサーシャリアは正常に好意等を感じられず、負担に感じている」

　……だからこそ、私は思わずにはいられない。
　一体どんな予兆に気付けば、アルフォードはここまでサーシャリアの心を読めるのかと。
　たとえ、アルフォードがサーシャリアと話していたとはいえ、それでも異常で、私は聞かずにはいられなかった。

「……アルフォード、予兆て何なの？」

　……それを聞けば後戻りできないと知りつつも。

「え？」

　私の質問に、一瞬アルフォードが言葉に詰まる。
　まるで、聞かれたくないとこをつかれたと言いたげに。
　しかし、アルフォードは平静を装いつつ告げる。

「……書類だ。夜に無茶をしてやる書類の量が、サーシャリアの心的負担を物語る予兆だ」

「……っ！」

　そして、その瞬間ようやく私は理解した。

　──私がやってきた全てが、サーシャリアの心に負担としかなっていなかったことに。