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失恋と幸運
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ふと、自身の思いに気付いた私は思わず首を傾げる。
「あれ、何でかしら……? いえ、当たり前ね」
しかし、その疑問はすぐに納得に変わった。
それはただ単純な話──アルフォードが私を軽蔑する姿が想像できないというだけの。
「ふふ。謝るために、執事服を着てくる王子様だもんね」
別に私はアルフォードに謝ってもらう必要があるなんて思っていないし、当初はマルクやリーリアの時と同じく不安を感じてもいた。
それでも、毎日こうしてアルフォードがやってきてくれるうちに、私の気持ちも変化してきていた。
未だ、あちらこちらと翻弄されることになれた訳ではない。
そして、できるだけアルフォードと離れようとしているのも本心だ。
……しかし、そんな自分の心の中、アルフォードが来てくれることを純粋に楽しんでいる自分にも私は気付いていた。
怒ってもいない私に対し、毎日のように謝罪の為に来てくれること。
執事服を身につけ、私の世話をしようとしてくれること。
それらは、明らかにずれていて……それでも、必死に友人としてアルフォードは私に寄り添ってくれていた。
そのことに気付く度、私の中アルフォードへの思いが深まるのに気付いていた。
……それが、抱かない方がいい思いだと理解しつつも。
「……もう報われない思いなのに」
その言葉に、私の胸が痛む。
そう、どれだけ思いを募らせようが、この思いが実らないことを私は理解していた。
ソシリアに対して私程度が相手にならないことはもとより、恩人の仲を乱すつもりなんて私にはないのだから。
そう覚悟しつつも、あまりにもあきらめの悪い自分に、私は思わず笑ってしまう。
失恋の胸の痛みは、どれだけ無視しようとしても、私の心から消えることはない。
──しかし、その痛みを感じながらも、私はこの婚約が幸運であることを理解していた。
「でも、アルフォードが婚約していて良かった」
これまでのことを思い返しながら、私はしみじみとそう呟く。
確かに、アルフォードが婚約していなければ、私はこんな胸の痛みを感じることはなかっただろう。
……だが、アルフォードが婚約していなければ、私はアルフォードの前に姿を見せることもできなかっただろう。
自身のあまりに惨めな姿を見ながら、私はそう思う。
こんな姿を好きな人の前に晒せたのは、彼が友人としてつきあおうとしてくれたからだと。
そうでなければ、私はこんな姿をアルフォードに見せることなんてできなかっただろう。
そう思いながら、私は小さく呟く。
「……アルフォードに友人として接せられて、本当に良かった」
そして私は、握りしめていた書類を離す。
こんこん、と扉をノックする音が響いたは、そんな時だった。
「あれ、何でかしら……? いえ、当たり前ね」
しかし、その疑問はすぐに納得に変わった。
それはただ単純な話──アルフォードが私を軽蔑する姿が想像できないというだけの。
「ふふ。謝るために、執事服を着てくる王子様だもんね」
別に私はアルフォードに謝ってもらう必要があるなんて思っていないし、当初はマルクやリーリアの時と同じく不安を感じてもいた。
それでも、毎日こうしてアルフォードがやってきてくれるうちに、私の気持ちも変化してきていた。
未だ、あちらこちらと翻弄されることになれた訳ではない。
そして、できるだけアルフォードと離れようとしているのも本心だ。
……しかし、そんな自分の心の中、アルフォードが来てくれることを純粋に楽しんでいる自分にも私は気付いていた。
怒ってもいない私に対し、毎日のように謝罪の為に来てくれること。
執事服を身につけ、私の世話をしようとしてくれること。
それらは、明らかにずれていて……それでも、必死に友人としてアルフォードは私に寄り添ってくれていた。
そのことに気付く度、私の中アルフォードへの思いが深まるのに気付いていた。
……それが、抱かない方がいい思いだと理解しつつも。
「……もう報われない思いなのに」
その言葉に、私の胸が痛む。
そう、どれだけ思いを募らせようが、この思いが実らないことを私は理解していた。
ソシリアに対して私程度が相手にならないことはもとより、恩人の仲を乱すつもりなんて私にはないのだから。
そう覚悟しつつも、あまりにもあきらめの悪い自分に、私は思わず笑ってしまう。
失恋の胸の痛みは、どれだけ無視しようとしても、私の心から消えることはない。
──しかし、その痛みを感じながらも、私はこの婚約が幸運であることを理解していた。
「でも、アルフォードが婚約していて良かった」
これまでのことを思い返しながら、私はしみじみとそう呟く。
確かに、アルフォードが婚約していなければ、私はこんな胸の痛みを感じることはなかっただろう。
……だが、アルフォードが婚約していなければ、私はアルフォードの前に姿を見せることもできなかっただろう。
自身のあまりに惨めな姿を見ながら、私はそう思う。
こんな姿を好きな人の前に晒せたのは、彼が友人としてつきあおうとしてくれたからだと。
そうでなければ、私はこんな姿をアルフォードに見せることなんてできなかっただろう。
そう思いながら、私は小さく呟く。
「……アルフォードに友人として接せられて、本当に良かった」
そして私は、握りしめていた書類を離す。
こんこん、と扉をノックする音が響いたは、そんな時だった。
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