妹に全てを奪われた私は〜虐げられた才女が愛されることを知るまで〜

影茸

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両親の帰還

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 それから二日後、私の想定通り両親は屋敷に帰ってきた。
 そんな両親達に、アメリアとマールスが挨拶して去ったのを確認し、私は歩き出した。

「お帰りなさいませ、お父様、お母様」

「……サーシャリアか」

 アメリアとマールスとの会話の最中、両親の顔に浮かんでいた笑みが、私の姿を確認した瞬間消える。

「もう少し早くに挨拶に来たらどうなの、サーシャリア。アメリアとマールスを見習いなさい」

 私とアメリアと同じ金髪碧眼の顔に、不機嫌な色を浮かべ、そう吐き捨てるお母様。
 それはほとんどこじつけに近い叱責だが、私は文句も言わず頭を下げる。

「申し訳ありません」

「次から、もう少し気をつけるんだ。伯爵家の一員としての自覚をもって動け」

 したり顔で、そういうお父様に内心私は溜息を漏らす。
 いつものことながら、あまりにも無意味な時間だ。
 実ところ、私が怒られるのは今日だけではない。
 以前、早めに来ても両親は「アメリアとマールスが来るのを邪魔している」なんて、理由で私を叱責した。
 両親にとっては、理由なんてどうでもいいのだ。
 ただ、私をこき下ろす口実さえあれば。

 もちろん、私だって思うことがないわけじゃない。
 それでも今は、何も言わず私は黙る。
 これから、私は両親に頼み事をするのだ。
 それを考えれば、少しぐらい厄介でも両親には機嫌がよい状態でいてくれた方がいい。

「まあいい。これからは気をつけろ」

「はい。申し訳ありません」

 そう判断した私は、いつもよりも大仰に頭を下げてみせる。
 そして、話を切り出した。

「ところで、少しお父様とお母様のお耳に入れたい話があるのですが、よろしいでしょうか?」

「うん、どうした?」

 素直にそう問いかけてくるお父様の姿に、私はすんなり話を聞いてくれる流れとなったことに内心安堵する。

 それを表に出さないようにしながら、私は頭の中で計算する。
 一体どう話を切り出せば、私の望む話の流れに導けるかを。
 そして、私は意図的にカインがアメリアと婚約しようとしていることを隠し、そう告げた。

「この度、私は侯爵令息カイン様との婚約を破棄されまた」

 もちろん、アメリアとの婚約のことを言っても、両親は少なからず混乱するだろう。
 何せ、侯爵家との婚約だ。
 いくら本人達の同意があろうが、変えるには時間がかかる。
 しかし、最終的にアメリア可愛さで、私の話を聞かない可能性も充分にある。

 故に私は、一先ずアメリアのことを隠し、両親に婚約破棄のデメリットについて話す。
 そして協力するよう頼み、了承を確認してから相手がアメリアであることを明かす。
 そうすれば、一度了承した手前、両親でも直ぐに言葉を取り消すことはできないだろう。

 そんな私の計算は。

「ああ、知っているさ。アメリアに変えたのだろう」

「本当におめでたいことだもの。忘れはしないわ」

「え?」

 ……満面の笑みでそう告げた両親を前にして、崩れ去ることになった。
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