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第67話 (ライルハート目線)
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俺の言葉を、アリミナは剣幕を変えて否定した。
「違う!私は知らなかった!お父様があんなことを企んでいたなんて!お父様は私を自慢の娘だと言ってくれてたはずで……」
その言葉の途中で、顔を暗くして俯くアリミナ。
その姿を見て、俺の記憶に甦ったのはかつての自分の姿、神童と呼ばれた忌むべき記憶だった。
転生してまだ10年も立っていなかったあの時、俺はまだ自分の知識や力の恐ろしさなど欠片も理解していなかった。
ただ、自分の知識や力を見せる度に喜び、褒めてくれる貴族達を見て馬鹿みたいに調子に乗っていた。
自分の力はこうして周りの人を喜ばせるためにあるんだと、なんの疑いもせずに信じて、神童と煽てられるままに知識を、そして力を振るっていた。
……その自分の行動がどれだけ馬鹿なことだったのか、俺がようやく理解したのは、貴族達が自分を王太子に持ち上げようとしていると気づいた時だった。
俺が知識を披露し、この国を豊かにしようと奮闘するのを見て、貴族達が浮かべていた笑みの裏にあったのは、俺を持ち上げれば自分達の権力を強くできるかもしれないなんていう打算だけだった。
貴族達は、覇王に自分達の権力を削られたのをよく思っていなかった。
だから俺を利用しようとした。
俺を煽てて自分達の傀儡にし、権限を取り戻そうとした。
貴族達の甘い顔に騙されていた俺はそんなことに気づかなかった。
自分の力ならみんなが笑って暮らせる世界を作れるなんて、馬鹿みたいな考えを抱いていたから、そんなこと考えもしなかった。
俺が正しいことをしようとすれば、みんな着いてきてくれると思い込んでいて。
──結果、そんな馬鹿な俺が作り出したのは、唯一家族と思っている兄貴を殺そうとする最悪の集団だった。
それが俺の忌むべき過去。
この知識と力が、過ぎたる力であることに気づかず暴走した結果。
そしてその過去の俺と、今のアリミナの状況はよく似ていた。
過程から結果までも。
……認めたくはない。
しかし、認めざるを得なかった。
貴族の甘言に騙されたことも、貴族が自分を利用していることに気づかなかったのも、その結果最悪の事態を引き起こしたのも、全て俺と全く同じだ。
──ただ一つだけ、アリミナと俺には決定的に違うところがあった。
「私はお姉様にここまでする気なんてなかった!本当よ!ただ、私に文句ばかり言うお姉様はもう少し困るべきだと思っただけで……」
俺に慈悲をえようと、必死に言葉を重ねるアリミナ。
が、そのアリミナの思惑とは反し、俺の目は冷ややかになっていった。
アリミナと俺の違い。
それはたった一つで、けれどそれは致命的で決して違えてはならない違いだった。
それにアリミナは気づいてさえいなかった。
貴族達に裏切られたことを知った俺は、間接的にしか関わっていおらず、当時影響力が大きすぎた公爵家以外の主犯格の貴族を自らの手で潰し、それから一人部屋に引きこもった。
家族てある兄貴には申し訳なくて顔が合わせず、それ以外の人間は信じることが出来なかった。
そんな中、どれだけ拒絶されようが俺に歩みよってくれたのがアイリスだった。
あの時の俺は荒れていて、かなりアイリスにひどいことをした。
アイリスが唯一潰せなかった公爵家の人間だったことを言い訳に、八つ当たりをしたのだ。
それでもアイリスは俺を見捨てなかった。
アイリスだけは、俺の味方でいてくれた。
そんなアイリスのお陰で今の俺がいる。
……だが、アリミナはその救いの手に気づかなかったどころか、踏みにじったのだ。
「本当に私はここまでするつもりは無かったんです!」
「……どうしようもなく愚かだな」
「え……?」
そのことに未だ気づきもせず言い訳しているアリミナの姿に、俺の口から思わずそんな言葉が漏れる。
アリミナの顔に、俺の言葉に対する疑問が溢れるが、もはや俺はアリミナと会話する気も起きず、その場から背を向けた。
アレスルージュを身内で処理すると決めた今、アリミナには重くても爵位剥奪程度の罰しか与えられないだろう。
公爵令嬢には、爵位を剥奪されても王宮で働けることを考えれば、一見重くない罰に感じる。
だが、俺はこれ以上アリミナに関して手を出すつもりはなかった。
自分の力の恐ろしさも知らないアリミナにこの先何が待っているのか、理解出来ていたからだ。
その恐ろしさを理解出来た時、ようやくアリミナは気づくだろう。
自分が、一体どれだけ守られてきたか。
……そして、その庇護はもうないことを。
「違う!私は知らなかった!お父様があんなことを企んでいたなんて!お父様は私を自慢の娘だと言ってくれてたはずで……」
その言葉の途中で、顔を暗くして俯くアリミナ。
その姿を見て、俺の記憶に甦ったのはかつての自分の姿、神童と呼ばれた忌むべき記憶だった。
転生してまだ10年も立っていなかったあの時、俺はまだ自分の知識や力の恐ろしさなど欠片も理解していなかった。
ただ、自分の知識や力を見せる度に喜び、褒めてくれる貴族達を見て馬鹿みたいに調子に乗っていた。
自分の力はこうして周りの人を喜ばせるためにあるんだと、なんの疑いもせずに信じて、神童と煽てられるままに知識を、そして力を振るっていた。
……その自分の行動がどれだけ馬鹿なことだったのか、俺がようやく理解したのは、貴族達が自分を王太子に持ち上げようとしていると気づいた時だった。
俺が知識を披露し、この国を豊かにしようと奮闘するのを見て、貴族達が浮かべていた笑みの裏にあったのは、俺を持ち上げれば自分達の権力を強くできるかもしれないなんていう打算だけだった。
貴族達は、覇王に自分達の権力を削られたのをよく思っていなかった。
だから俺を利用しようとした。
俺を煽てて自分達の傀儡にし、権限を取り戻そうとした。
貴族達の甘い顔に騙されていた俺はそんなことに気づかなかった。
自分の力ならみんなが笑って暮らせる世界を作れるなんて、馬鹿みたいな考えを抱いていたから、そんなこと考えもしなかった。
俺が正しいことをしようとすれば、みんな着いてきてくれると思い込んでいて。
──結果、そんな馬鹿な俺が作り出したのは、唯一家族と思っている兄貴を殺そうとする最悪の集団だった。
それが俺の忌むべき過去。
この知識と力が、過ぎたる力であることに気づかず暴走した結果。
そしてその過去の俺と、今のアリミナの状況はよく似ていた。
過程から結果までも。
……認めたくはない。
しかし、認めざるを得なかった。
貴族の甘言に騙されたことも、貴族が自分を利用していることに気づかなかったのも、その結果最悪の事態を引き起こしたのも、全て俺と全く同じだ。
──ただ一つだけ、アリミナと俺には決定的に違うところがあった。
「私はお姉様にここまでする気なんてなかった!本当よ!ただ、私に文句ばかり言うお姉様はもう少し困るべきだと思っただけで……」
俺に慈悲をえようと、必死に言葉を重ねるアリミナ。
が、そのアリミナの思惑とは反し、俺の目は冷ややかになっていった。
アリミナと俺の違い。
それはたった一つで、けれどそれは致命的で決して違えてはならない違いだった。
それにアリミナは気づいてさえいなかった。
貴族達に裏切られたことを知った俺は、間接的にしか関わっていおらず、当時影響力が大きすぎた公爵家以外の主犯格の貴族を自らの手で潰し、それから一人部屋に引きこもった。
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それでもアイリスは俺を見捨てなかった。
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そんなアイリスのお陰で今の俺がいる。
……だが、アリミナはその救いの手に気づかなかったどころか、踏みにじったのだ。
「本当に私はここまでするつもりは無かったんです!」
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「え……?」
そのことに未だ気づきもせず言い訳しているアリミナの姿に、俺の口から思わずそんな言葉が漏れる。
アリミナの顔に、俺の言葉に対する疑問が溢れるが、もはや俺はアリミナと会話する気も起きず、その場から背を向けた。
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だが、俺はこれ以上アリミナに関して手を出すつもりはなかった。
自分の力の恐ろしさも知らないアリミナにこの先何が待っているのか、理解出来ていたからだ。
その恐ろしさを理解出来た時、ようやくアリミナは気づくだろう。
自分が、一体どれだけ守られてきたか。
……そして、その庇護はもうないことを。
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