虐げられた平民魔術師の反撃~幼馴染みの勇者を誘拐します~

影茸

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 部屋になだれ込んできた大量の兵士。
 それにようやく俺はアーザスの執着の強さを理解する。
 これだけの人数を揃えるのに掛かる時間は、数ヶ月かかってもおかしくない。
 俺を確実に殺す、そのためだけにアーザスはこれだけの人数を揃えたのだ。

 ……それに、俺が相手をしなければならないのは、この人数の騎士だけではなく、勇者パーティーの一員であるアーザスもなのだ。

 たしかにアーザスは屑だ。
 だが、その実力は侮って良いものではない。

 「いくらお前でも、俺と同時にこれだけの人数を相手に出来ないだろう。──特に、触媒を全て取り上げられた今の状況では」

 アーザスは、大人数の騎士を前に戦闘態勢をとる俺を嘲笑う。

 触媒系、いわゆる設置型魔術の俺が勇者パーティーになれた理由、その大きな理由は常に前もって作り出した触媒を持っていたからだ。
 色々な制約が存在するが、そうすれば、常に通常の魔術師よりも早く魔術を発動させることができ、そのおかげで俺は魔術師として大成した。

 しかし今俺は、その触媒全てを追放された時奪われていて、唯一持っているのは頑丈が取り柄だけのなまくらだけ。

 「流石のお前も、武器なしじゃ出来ることは殆ど無いだろう?」

 ……つまり俺は、アーザスの言う通り丸腰といっても過言では無い状況にあった。

 圧倒的優位な状況にアーザスは、勝利を確信していた。

 「お前から奪ったこの名剣で、お前を殺してやるよ」

 その顔に浮かぶ笑み、それがそのことを何より雄弁に語っていて──そんな状況の中、俺は笑った。

 「ははっ、お前らじゃ俺は殺せねぇよ」

 圧倒的劣勢な中、俺が吐き捨てた言葉。
 それに、騎士達の中に動揺が走る。
 そんな中、俺の言葉を虚勢と判断したのかアーザスだけは冷静だった。

 「もういい殺すぞお前ら。あの成り上がりを負け惜しみも言えない状態にしろ」

 「全員殺せ」

 アーザスの命令に反応し騎士達が動き出したのと、俺がある触媒の魔術を発動したのは同時だった……
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