異世界巻き込まれ転移譚~無能の烙印押されましたが、勇者の力持ってます~

影茸

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2.王国編

第5話 久しぶりの辺境街

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 シュライトさんの元に帰らない理由を、タイミングの悪い支部長のせいで失った僕。
 それでも最初僕は、何としてでも自分をシュライトさんの元に連れて行かせようとするエイナに抵抗していた。
 ……けれども、シュライトさんの元に帰るためと自分で決めていた目標を達成した今、その抵抗は長くは続かなかった。

 「こんな近くにシュライトさんはいたのね……」

 そして現在、僕はエイナとパラスというメンバーと共に辺境街へと向かっていた。
 近づいてくる辺境街のその光景に、複雑な感情が込められた言葉を漏らすエイナ。
 彼女とシュライトさんの関係を僕は知らない。
 けれども、僕は彼女からシュライトさんの身に何があったのかを聞くこととを条件にシュライトさんへと案内することを認めていた。
 僕はシュライトさんに何があったのかを知らないし、そして何でこんな場所に隠れるように住んでいるのかも知らない。
 けれども、ただ一つだけシュライトそんについて僕が言えることがある。
 ……それはシュライトさんは、本当に過去何かがあったのが信じられないほど、普通の男性だったということ。

 ーーー そしてそれは明らかに異常だった。

 何せシュライトさんは現在、性別を偽っているのだ。
 それは明らかに異常で、そしてその上過去に何かがあったとしたら、今シュライトさんが普通であることこそが異常だった。
 何せエイナの口ぶりからは、シュライトさんの身にあったことがただごとではないということを示しているのだから。

 「っ!」

 ……そこまで考えて、僕は誰にも知られないように唇を噛み締めた。
 一体なぜ、シュライトさんがそんな目にあったのかも、どんな目にあったのかも僕は知らないし、シュライトさんと過ごしてい時はそんな過去があったことさえ僕は知らなかった。
 だから、シュライトさんのその事情について僕が知らないのは当然のことかもしれない。

 ……けれども、僕はかけがえのない友人で恩人であるシュライトさんの事情を全く理解できていなかった自分に対して怒りを覚えていた。

 シュライトさんから僕が貰ったもの、それは全てかけがえのないもので、だからこそいつか恩返しをすると僕は誓っていた。
 ……けれども、現実には僕はシュライトさんの恩に対して何も報いることができていなくて。

 「だからこそ、今回は」

 だから、今度こそそんな失敗は犯さないと僕は誓う。
 そしてそれぞれの悩みを抱きながら、僕達は辺境街へと向かう。

 「な、なぁ、嘘だよな!尋ねる人間はあの地獄の湿地に放り込む、逞しいむきむきの美人に会いに行くって嘘だよなぁ!」

 ……その道中は絶えず、半泣きのパラスの叫びがこだましていた。







 ◇◆◇







 僕達が辺境街についたのは、未だお昼の時間帯だった。
 辺境街はギルドから小一時間程度しか離れておらず、それに僕達は昼前に出たので、その到着時間は決しておかしくはない。

 「……誰もいない」

 ……けれども、久々に来た辺境街は未だ昼だというのに酷く静かだった。
 僕は記憶を掘り起こし、明らかな辺境街の異常に首をかしげる。
 何せ辺境街の昼は、普段ならばかなり賑わっているはずなのだから。
 だから僕達は異常を感じながらも散策を始めて……

 「やめてください!」

 「っ!」

 ………そして少しした時だった。
 突然耳に入った女性のものと思われる悲鳴。
 それに僕達は顔を真剣なものにして声の元へと走る。

 ……けれども、走りながら僕たちの頭には隠しきれない疑問が渦巻いていた。

 辺境街に異常があったというのはわかる。
 だが、考えられる可能性として山賊ならばここが荒らされているし、魔獣の異常発生ならここら一帯は更地になっていてもおかしくない。
 だから僕達はその声の元に行けば今何がこの場所で起きているのかを確かめられると足を動かし……

 「なっ!?」

 ……そして、次の瞬間僕達の目に入って来たのは兵士が辺境街の人間を縛り上げているその光景だった。
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