57 / 60
2.王国編
第5話 久しぶりの辺境街
しおりを挟む
シュライトさんの元に帰らない理由を、タイミングの悪い支部長のせいで失った僕。
それでも最初僕は、何としてでも自分をシュライトさんの元に連れて行かせようとするエイナに抵抗していた。
……けれども、シュライトさんの元に帰るためと自分で決めていた目標を達成した今、その抵抗は長くは続かなかった。
「こんな近くにシュライトさんはいたのね……」
そして現在、僕はエイナとパラスというメンバーと共に辺境街へと向かっていた。
近づいてくる辺境街のその光景に、複雑な感情が込められた言葉を漏らすエイナ。
彼女とシュライトさんの関係を僕は知らない。
けれども、僕は彼女からシュライトさんの身に何があったのかを聞くこととを条件にシュライトさんへと案内することを認めていた。
僕はシュライトさんに何があったのかを知らないし、そして何でこんな場所に隠れるように住んでいるのかも知らない。
けれども、ただ一つだけシュライトそんについて僕が言えることがある。
……それはシュライトさんは、本当に過去何かがあったのが信じられないほど、普通の男性だったということ。
ーーー そしてそれは明らかに異常だった。
何せシュライトさんは現在、性別を偽っているのだ。
それは明らかに異常で、そしてその上過去に何かがあったとしたら、今シュライトさんが普通であることこそが異常だった。
何せエイナの口ぶりからは、シュライトさんの身にあったことがただごとではないということを示しているのだから。
「っ!」
……そこまで考えて、僕は誰にも知られないように唇を噛み締めた。
一体なぜ、シュライトさんがそんな目にあったのかも、どんな目にあったのかも僕は知らないし、シュライトさんと過ごしてい時はそんな過去があったことさえ僕は知らなかった。
だから、シュライトさんのその事情について僕が知らないのは当然のことかもしれない。
……けれども、僕はかけがえのない友人で恩人であるシュライトさんの事情を全く理解できていなかった自分に対して怒りを覚えていた。
シュライトさんから僕が貰ったもの、それは全てかけがえのないもので、だからこそいつか恩返しをすると僕は誓っていた。
……けれども、現実には僕はシュライトさんの恩に対して何も報いることができていなくて。
「だからこそ、今回は」
だから、今度こそそんな失敗は犯さないと僕は誓う。
そしてそれぞれの悩みを抱きながら、僕達は辺境街へと向かう。
「な、なぁ、嘘だよな!尋ねる人間はあの地獄の湿地に放り込む、逞しいむきむきの美人に会いに行くって嘘だよなぁ!」
……その道中は絶えず、半泣きのパラスの叫びがこだましていた。
◇◆◇
僕達が辺境街についたのは、未だお昼の時間帯だった。
辺境街はギルドから小一時間程度しか離れておらず、それに僕達は昼前に出たので、その到着時間は決しておかしくはない。
「……誰もいない」
……けれども、久々に来た辺境街は未だ昼だというのに酷く静かだった。
僕は記憶を掘り起こし、明らかな辺境街の異常に首をかしげる。
何せ辺境街の昼は、普段ならばかなり賑わっているはずなのだから。
だから僕達は異常を感じながらも散策を始めて……
「やめてください!」
「っ!」
………そして少しした時だった。
突然耳に入った女性のものと思われる悲鳴。
それに僕達は顔を真剣なものにして声の元へと走る。
……けれども、走りながら僕たちの頭には隠しきれない疑問が渦巻いていた。
辺境街に異常があったというのはわかる。
だが、考えられる可能性として山賊ならばここが荒らされているし、魔獣の異常発生ならここら一帯は更地になっていてもおかしくない。
だから僕達はその声の元に行けば今何がこの場所で起きているのかを確かめられると足を動かし……
「なっ!?」
……そして、次の瞬間僕達の目に入って来たのは兵士が辺境街の人間を縛り上げているその光景だった。
それでも最初僕は、何としてでも自分をシュライトさんの元に連れて行かせようとするエイナに抵抗していた。
……けれども、シュライトさんの元に帰るためと自分で決めていた目標を達成した今、その抵抗は長くは続かなかった。
「こんな近くにシュライトさんはいたのね……」
そして現在、僕はエイナとパラスというメンバーと共に辺境街へと向かっていた。
近づいてくる辺境街のその光景に、複雑な感情が込められた言葉を漏らすエイナ。
彼女とシュライトさんの関係を僕は知らない。
けれども、僕は彼女からシュライトさんの身に何があったのかを聞くこととを条件にシュライトさんへと案内することを認めていた。
僕はシュライトさんに何があったのかを知らないし、そして何でこんな場所に隠れるように住んでいるのかも知らない。
けれども、ただ一つだけシュライトそんについて僕が言えることがある。
……それはシュライトさんは、本当に過去何かがあったのが信じられないほど、普通の男性だったということ。
ーーー そしてそれは明らかに異常だった。
何せシュライトさんは現在、性別を偽っているのだ。
それは明らかに異常で、そしてその上過去に何かがあったとしたら、今シュライトさんが普通であることこそが異常だった。
何せエイナの口ぶりからは、シュライトさんの身にあったことがただごとではないということを示しているのだから。
「っ!」
……そこまで考えて、僕は誰にも知られないように唇を噛み締めた。
一体なぜ、シュライトさんがそんな目にあったのかも、どんな目にあったのかも僕は知らないし、シュライトさんと過ごしてい時はそんな過去があったことさえ僕は知らなかった。
だから、シュライトさんのその事情について僕が知らないのは当然のことかもしれない。
……けれども、僕はかけがえのない友人で恩人であるシュライトさんの事情を全く理解できていなかった自分に対して怒りを覚えていた。
シュライトさんから僕が貰ったもの、それは全てかけがえのないもので、だからこそいつか恩返しをすると僕は誓っていた。
……けれども、現実には僕はシュライトさんの恩に対して何も報いることができていなくて。
「だからこそ、今回は」
だから、今度こそそんな失敗は犯さないと僕は誓う。
そしてそれぞれの悩みを抱きながら、僕達は辺境街へと向かう。
「な、なぁ、嘘だよな!尋ねる人間はあの地獄の湿地に放り込む、逞しいむきむきの美人に会いに行くって嘘だよなぁ!」
……その道中は絶えず、半泣きのパラスの叫びがこだましていた。
◇◆◇
僕達が辺境街についたのは、未だお昼の時間帯だった。
辺境街はギルドから小一時間程度しか離れておらず、それに僕達は昼前に出たので、その到着時間は決しておかしくはない。
「……誰もいない」
……けれども、久々に来た辺境街は未だ昼だというのに酷く静かだった。
僕は記憶を掘り起こし、明らかな辺境街の異常に首をかしげる。
何せ辺境街の昼は、普段ならばかなり賑わっているはずなのだから。
だから僕達は異常を感じながらも散策を始めて……
「やめてください!」
「っ!」
………そして少しした時だった。
突然耳に入った女性のものと思われる悲鳴。
それに僕達は顔を真剣なものにして声の元へと走る。
……けれども、走りながら僕たちの頭には隠しきれない疑問が渦巻いていた。
辺境街に異常があったというのはわかる。
だが、考えられる可能性として山賊ならばここが荒らされているし、魔獣の異常発生ならここら一帯は更地になっていてもおかしくない。
だから僕達はその声の元に行けば今何がこの場所で起きているのかを確かめられると足を動かし……
「なっ!?」
……そして、次の瞬間僕達の目に入って来たのは兵士が辺境街の人間を縛り上げているその光景だった。
2
お気に入りに追加
3,239
あなたにおすすめの小説

凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

2回目チート人生、まじですか
ゆめ
ファンタジー
☆☆☆☆☆
ある普通の田舎に住んでいる一之瀬 蒼涼はある日異世界に勇者として召喚された!!!しかもクラスで!
わっは!!!テンプレ!!!!
じゃない!!!!なんで〝また!?〟
実は蒼涼は前世にも1回勇者として全く同じ世界へと召喚されていたのだ。
その時はしっかり魔王退治?
しましたよ!!
でもね
辛かった!!チートあったけどいろんな意味で辛かった!大変だったんだぞ!!
ということで2回目のチート人生。
勇者じゃなく自由に生きます?

スライムと異世界冒険〜追い出されたが実は強かった
Miiya
ファンタジー
学校に一人で残ってた時、突然光りだし、目を開けたら、王宮にいた。どうやら異世界召喚されたらしい。けど鑑定結果で俺は『成長』 『テイム』しかなく、弱いと追い出されたが、実はこれが神クラスだった。そんな彼、多田真司が森で出会ったスライムと旅するお話。
*ちょっとネタばれ
水が大好きなスライム、シンジの世話好きなスライム、建築もしてしまうスライム、小さいけど鉱石仕分けたり探索もするスライム、寝るのが大好きな白いスライム等多種多様で個性的なスライム達も登場!!
*11月にHOTランキング一位獲得しました。
*なるべく毎日投稿ですが日によって変わってきますのでご了承ください。一話2000~2500で投稿しています。
*パソコンからの投稿をメインに切り替えました。ですので字体が違ったり点が変わったりしてますがご了承ください。

俺のスキルが無だった件
しょうわな人
ファンタジー
会社から帰宅中に若者に親父狩りされていた俺、神城闘史(かみしろとうじ)。
攻撃してきたのを捌いて、逃れようとしていた時に眩しい光に包まれた。
気がつけば、見知らぬ部屋にいた俺と俺を狩ろうとしていた若者五人。
偉そうな爺さんにステータスオープンと言えと言われて素直に従った。
若者五人はどうやら爺さんを満足させたらしい。が、俺のステータスは爺さんからすればゴミカスと同じだったようだ。
いきなり金貨二枚を持たされて放り出された俺。しかし、スキルの真価を知り人助け(何でも屋)をしながら異世界で生活する事になった。
【お知らせ】
カクヨムで掲載、完結済の当作品を、微修正してこちらで再掲載させて貰います。よろしくお願いします。

備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ
ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。
見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は?
異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。
鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。
ボッチはハズレスキル『状態異常倍加』の使い手
Outlook!
ファンタジー
経緯は朝活動始まる一分前、それは突然起こった。床が突如、眩い光が輝き始め、輝きが膨大になった瞬間、俺を含めて30人のクラスメイト達がどこか知らない所に寝かされていた。
俺達はその後、いかにも王様っぽいひとに出会い、「七つの剣を探してほしい」と言われた。皆最初は否定してたが、俺はこの世界に残りたいがために今まで閉じていた口を開いた。
そしてステータスを確認するときに、俺は驚愕する他なかった。
理由は簡単、皆の授かった固有スキルには強スキルがあるのに対して、俺が授かったのはバットスキルにも程がある、状態異常倍加だったからだ。
※不定期更新です。ゆっくりと投稿していこうと思いますので、どうかよろしくお願いします。
カクヨム、小説家になろう、エブリスタにも投稿しています。
神様がチートをくれたんだが、いやこれは流石にチートすぎんだろ...
自称猫好き
ファンタジー
幼い頃に両親を無くし、ショックで引きこもっていた俺、井上亮太は高校生になり覚悟をきめやり直そう!!そう思った矢先足元に魔法陣が「えっ、、、なにこれ」
意識がなくなり目覚めたら神様が土下座していた「すまんのぉー、少々不具合が起きてのぉ、其方を召喚させてしもたわい」
「大丈夫ですから頭を上げて下さい」 「じゃがのぅ、其方大事な両親も本当は私のせいで死んでしもうてのぉー、本当にすまない事をした。ゆるしてはくれぬだろうがぁ」「そんなのすぎた事です。それに今更どうにもなりませんし、頭を上げて下さい」
「なんて良い子なんじゃ。其方の両親の件も合わせて何か欲しいものとかは、あるかい?」欲しいものとかねぇ~。「いえ大丈夫ですよ。これを期に今からやり直そうと思います。頑張ります!」そして召喚されたらチートのなかのチートな能力が「いや、これはおかしいだろぉよ...」
初めて書きます!作者です。自分は、語学が苦手でところどころ変になってたりするかもしれないですけどそのときは教えてくれたら嬉しいです!アドバイスもどんどん下さい。気分しだいの更新ですが優しく見守ってください。これから頑張ります!

念動力ON!〜スキル授与の列に並び直したらスキル2個貰えた〜
ばふぉりん
ファンタジー
こんなスキルあったらなぁ〜?
あれ?このスキルって・・・えい〜できた
スキル授与の列で一つのスキルをもらったけど、列はまだ長いのでさいしょのすきるで後方の列に並び直したらそのまま・・・もう一個もらっちゃったよ。
いいの?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる