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2.王国編
第1話 再びの湿地
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「本当に懐かしい……」
僕の目の前に広がる光景、それは人身大のナメクジやらミミズやらが動き回る、懐かしの湿地の光景だった。
その湿地が、森の深部よりは浅い方が安全だという常識の中の数少ない例外、つまり、凄く危険な場所であることを知ったのは最近のことだ。
いや危険どころか、エイナでやっとこの湿地から逃げ出すことが出来る程度の難易度だったらしい。
……いやシュライトさん、少し厳しすぎなしませんかねぇ!?と、その話を聞いて僕が思ってしまったのも仕方がないことだろう。
たしかに最初の間はシュライトさんが見ていたとし、それからもシュライトはこっそりと僕を見守ってくれていたのだろう。
……けれども、初日で10回以上死にかけるなんて明らかに素人に課すメニューではない。
そのおかげで、魔力操作を覚えられたのだが。
「本当に、懐かしいな……」
ーーー しかし、今の僕は心底心穏やかだった。
気持ち悪く蠢く巨大ナメクジと巨大ミミズ。
その姿は僕みたいに死にかけた人間で無かったとしても悲鳴をあげそうになる光景で……
「応援しているぞ!」
「……え、まさか本当にこの中に」
けれども、今回自分がこの湿地に入る必要が無いことを知っている僕は心底心穏やかだった。
そして、その僕から発せられたその言葉に、同行者であるパラスがこの先に待つ自分の運命に勘付いて顔を青ざめさせる。
「死ねぇ!」
「ぁぁぁぁぁぁあいやぁぁぁぁ!?」
だが、彼が逃げるその前に僕はパラスの身体を湿地へと蹴り落とした。
断末魔をあげながらパラスは湿地へと転がり落ちて行って、そして次の瞬間自分の下敷きになったナメクジの姿に悲鳴をあげて杖を振り回し始める。
「ふははは!すごい爽快な気分だ!」
……そして、その光景を見て僕は哄笑を上げていた。
我ながら性格がねじ曲がってしまった気もするが、これは別に僕の本心ではなかった。
というのも、実は今僕はパラスを鍛えているのだ。
ポイズンウルフとの戦闘で先日新たな力を手にしたパラス。
彼は僕に対して引き目を感じていたらしく、一度ギルド職員をやめ冒険者として僕のパーティーになることを決めたのだ。
経験豊富かつ、先日彼が得た力がどれほど強力かを知っている僕には、もちろんその申し出を断るつもりなど無く、晴れて僕ははじめての仲間を得ることになった。
……だが、その話はそれだけで終わりではなかった。
何故なら、パラスは強力な力を得たものの酷く不安定だったのだ。
パラスは得た力、それはシュライトさんでさえ知らないような凄まじいもの。
だが、だからこそパラスをその力を持て余していた。
何せ強力な分、その力は消耗が激しい。
しかもそれだけではなく、通常の魔法さえパラスは使えないようになっていたのだ。
「ぎゃぁぁぁぁあああ!?」
そしてそれを聞いた僕の解決方法こそ、パラスがナメクジから逃げ回る光景だった。
パラスが得た能力、それは魔力操作とよく似ている。
そしてだからこそ、僕はこう考えたのだ。
つまり、魔力の扱い方がわかればパラスは新しい能力を使いこなせるのでは無いかと。
だから僕は今、シュライトさんにやられたようにパラスをこの湿地に連れてきていた。
この湿地はたしかにかなりの難易度を誇る。
けれども、ナメクジやミミズ達は獲物を食べる時必ず獲物を拘束して溶かすのだ。
……それも生きたまま。
だからこそ、負けて捕まることがあってもすぐに死ぬことは余程のことがなければなくて……
だからこそ、僕はシュライトさんの訓練の中で何度も地獄を味わうことになった。
「うん、強く生きろよ……」
僕は自分の体験を思い出して、逃げ回るパラスに対して僕はそう呟く。
そしてそんな僕に答えるかのように、湿地には、悲惨な悲鳴が響いていた……
僕の目の前に広がる光景、それは人身大のナメクジやらミミズやらが動き回る、懐かしの湿地の光景だった。
その湿地が、森の深部よりは浅い方が安全だという常識の中の数少ない例外、つまり、凄く危険な場所であることを知ったのは最近のことだ。
いや危険どころか、エイナでやっとこの湿地から逃げ出すことが出来る程度の難易度だったらしい。
……いやシュライトさん、少し厳しすぎなしませんかねぇ!?と、その話を聞いて僕が思ってしまったのも仕方がないことだろう。
たしかに最初の間はシュライトさんが見ていたとし、それからもシュライトはこっそりと僕を見守ってくれていたのだろう。
……けれども、初日で10回以上死にかけるなんて明らかに素人に課すメニューではない。
そのおかげで、魔力操作を覚えられたのだが。
「本当に、懐かしいな……」
ーーー しかし、今の僕は心底心穏やかだった。
気持ち悪く蠢く巨大ナメクジと巨大ミミズ。
その姿は僕みたいに死にかけた人間で無かったとしても悲鳴をあげそうになる光景で……
「応援しているぞ!」
「……え、まさか本当にこの中に」
けれども、今回自分がこの湿地に入る必要が無いことを知っている僕は心底心穏やかだった。
そして、その僕から発せられたその言葉に、同行者であるパラスがこの先に待つ自分の運命に勘付いて顔を青ざめさせる。
「死ねぇ!」
「ぁぁぁぁぁぁあいやぁぁぁぁ!?」
だが、彼が逃げるその前に僕はパラスの身体を湿地へと蹴り落とした。
断末魔をあげながらパラスは湿地へと転がり落ちて行って、そして次の瞬間自分の下敷きになったナメクジの姿に悲鳴をあげて杖を振り回し始める。
「ふははは!すごい爽快な気分だ!」
……そして、その光景を見て僕は哄笑を上げていた。
我ながら性格がねじ曲がってしまった気もするが、これは別に僕の本心ではなかった。
というのも、実は今僕はパラスを鍛えているのだ。
ポイズンウルフとの戦闘で先日新たな力を手にしたパラス。
彼は僕に対して引き目を感じていたらしく、一度ギルド職員をやめ冒険者として僕のパーティーになることを決めたのだ。
経験豊富かつ、先日彼が得た力がどれほど強力かを知っている僕には、もちろんその申し出を断るつもりなど無く、晴れて僕ははじめての仲間を得ることになった。
……だが、その話はそれだけで終わりではなかった。
何故なら、パラスは強力な力を得たものの酷く不安定だったのだ。
パラスは得た力、それはシュライトさんでさえ知らないような凄まじいもの。
だが、だからこそパラスをその力を持て余していた。
何せ強力な分、その力は消耗が激しい。
しかもそれだけではなく、通常の魔法さえパラスは使えないようになっていたのだ。
「ぎゃぁぁぁぁあああ!?」
そしてそれを聞いた僕の解決方法こそ、パラスがナメクジから逃げ回る光景だった。
パラスが得た能力、それは魔力操作とよく似ている。
そしてだからこそ、僕はこう考えたのだ。
つまり、魔力の扱い方がわかればパラスは新しい能力を使いこなせるのでは無いかと。
だから僕は今、シュライトさんにやられたようにパラスをこの湿地に連れてきていた。
この湿地はたしかにかなりの難易度を誇る。
けれども、ナメクジやミミズ達は獲物を食べる時必ず獲物を拘束して溶かすのだ。
……それも生きたまま。
だからこそ、負けて捕まることがあってもすぐに死ぬことは余程のことがなければなくて……
だからこそ、僕はシュライトさんの訓練の中で何度も地獄を味わうことになった。
「うん、強く生きろよ……」
僕は自分の体験を思い出して、逃げ回るパラスに対して僕はそう呟く。
そしてそんな僕に答えるかのように、湿地には、悲惨な悲鳴が響いていた……
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