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1.ギルド編
第47話 勇者破滅(勇者目線)
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「貴様は勇者としてふさわしくない」
勇者として身分が保証された、そんな気ままな生活。
けれどもそれはあっさりと崩れ去ることになった。
そう、突然の勇者からクビだという、国王の言葉によって。
「ふざけるな!」
そしてその言葉に対して、勇者は思わずそう声を上げていた。
「いや、冗談などではない。もう貴様から勇者の称号は剥奪させてもらう。戦場に出ない勇者など、なんの意味もない」
……しかし、その言葉は決してなんらかの間違いなどではなかった。
そのことを悟り、勇者は呆然とする。
なぜなら勇者は、自分が戦場にでないのはただ平和主義者だからで……
……そう言っておけばなんの責任も追及されないと、そう思い込んでいたのだから。
「早く聖剣を置いて立ち去れ!」
「っ!」
……けれども、今までとは違う酷く強硬な国王の態度に勇者は悟る。
いや、悟らざるを得なくなる。
これは現実で、本当に自分は勇者としての座を追われているのだと。
「ふざけるな!」
そしてその瞬間、勇者は耐え難い怒りを覚えてそう叫んだ。
突然召喚した癖に、その責任も果たそうともせず、自分の言い分を無視して役立たずの烙印を押した国王に対して勇者は隠しきれない怒りを抱いていた。
確かに自分は戦場には出ようとしなかったかもしれない。
けれども、それは自分が平和主義者だったからに過ぎない。
しかも、平和主義者ではありつつも、自分にはこの国を守れるだけの力があって、それは国防としての役目を果たしている。
と、そう勇者は自分を正当化して国王へと向けて叫ぶ。
「それにそもそも、魔族を攻めるとか可哀想だと思わないのか!」
そしてそれだけでは勇者の話は終わりではなかった。
今まで頭にありつつも、面倒事の匂いがするとあえて無視していた思いをここぞとばかりに表に出して叫ぶ。
そもそも魔族と言えども侵略はいけないだろう。
同じ人ならば人権を考えなければならない。
そしてさらに自分は選ばれた勇者だ。
つまり選んだこの国は責任を果たさなければならないのだと。
……勇者は、かつてもっと酷い境遇であった人間を見捨てたことさえ忘れ、あたまかも自分が正義の使徒であるかのように、そんな言葉を続ける。
「それで」
「っ!」
……だが、そんな言葉が国王に伝わる訳がなかった。
かつてただ巻き込まれただけの人間をなんの迷いもなく放逐した国王が自分勝手に叫び続けるだけの似非勇者を尊重する理由などあるはずがなかったのだ。
「この勇者を敵に回したことを、後悔するなよ」
そして、その国王の態度に勇者は怒りに突き動かされるままに聖剣を抜きはなった。
「っ!」
聖剣には、使い手が未熟であるにも関わらず、鋭い光が宿っていて、この場に同席していた宰相が小さく悲鳴を漏らす。
だが国王はなんの反応も返すことはなかった。
ただ呆れとような目を勇者に向けて手をあげる。
「ほう、だったら勇者の実力を見せてもらおう」
「なっ!」
……その瞬間、大量の兵士が室内へと雪崩れ込んできた。
そしてその兵士たちの数に勇者から余裕が消え去る。
……部屋へと雪崩れ込んできた兵士達。
それは決して精兵とは言えない練度しか誇っていない。
それがこの国の国力で、そして勇者の実力がこの程度相手にもならない。
「っぁ……」
……だが、今まで一対一の模擬戦程度しかしたことがない、勇者がその実力を知ることはなかった。
ただ、目の前に現れたかつてない大軍に恐れおののき、そして震えだす。
……自分に勇者としての力があることさえ、恐怖で忘れて。
「うわぁぁぁぁ!」
そして次の瞬間、そんな叫び声を後にし残して、聖剣だけを手にした勇者はこの場から走り去っていった……
惨めに勇者が逃げ出した時、それは今まで実力も伴わずに自身を過信していた勇者が追放された瞬間だった。
そして偶然にも、その時と一人の転移者が英雄として周囲の人間に認められた時間が同じだったことを知る者はいない……
勇者として身分が保証された、そんな気ままな生活。
けれどもそれはあっさりと崩れ去ることになった。
そう、突然の勇者からクビだという、国王の言葉によって。
「ふざけるな!」
そしてその言葉に対して、勇者は思わずそう声を上げていた。
「いや、冗談などではない。もう貴様から勇者の称号は剥奪させてもらう。戦場に出ない勇者など、なんの意味もない」
……しかし、その言葉は決してなんらかの間違いなどではなかった。
そのことを悟り、勇者は呆然とする。
なぜなら勇者は、自分が戦場にでないのはただ平和主義者だからで……
……そう言っておけばなんの責任も追及されないと、そう思い込んでいたのだから。
「早く聖剣を置いて立ち去れ!」
「っ!」
……けれども、今までとは違う酷く強硬な国王の態度に勇者は悟る。
いや、悟らざるを得なくなる。
これは現実で、本当に自分は勇者としての座を追われているのだと。
「ふざけるな!」
そしてその瞬間、勇者は耐え難い怒りを覚えてそう叫んだ。
突然召喚した癖に、その責任も果たそうともせず、自分の言い分を無視して役立たずの烙印を押した国王に対して勇者は隠しきれない怒りを抱いていた。
確かに自分は戦場には出ようとしなかったかもしれない。
けれども、それは自分が平和主義者だったからに過ぎない。
しかも、平和主義者ではありつつも、自分にはこの国を守れるだけの力があって、それは国防としての役目を果たしている。
と、そう勇者は自分を正当化して国王へと向けて叫ぶ。
「それにそもそも、魔族を攻めるとか可哀想だと思わないのか!」
そしてそれだけでは勇者の話は終わりではなかった。
今まで頭にありつつも、面倒事の匂いがするとあえて無視していた思いをここぞとばかりに表に出して叫ぶ。
そもそも魔族と言えども侵略はいけないだろう。
同じ人ならば人権を考えなければならない。
そしてさらに自分は選ばれた勇者だ。
つまり選んだこの国は責任を果たさなければならないのだと。
……勇者は、かつてもっと酷い境遇であった人間を見捨てたことさえ忘れ、あたまかも自分が正義の使徒であるかのように、そんな言葉を続ける。
「それで」
「っ!」
……だが、そんな言葉が国王に伝わる訳がなかった。
かつてただ巻き込まれただけの人間をなんの迷いもなく放逐した国王が自分勝手に叫び続けるだけの似非勇者を尊重する理由などあるはずがなかったのだ。
「この勇者を敵に回したことを、後悔するなよ」
そして、その国王の態度に勇者は怒りに突き動かされるままに聖剣を抜きはなった。
「っ!」
聖剣には、使い手が未熟であるにも関わらず、鋭い光が宿っていて、この場に同席していた宰相が小さく悲鳴を漏らす。
だが国王はなんの反応も返すことはなかった。
ただ呆れとような目を勇者に向けて手をあげる。
「ほう、だったら勇者の実力を見せてもらおう」
「なっ!」
……その瞬間、大量の兵士が室内へと雪崩れ込んできた。
そしてその兵士たちの数に勇者から余裕が消え去る。
……部屋へと雪崩れ込んできた兵士達。
それは決して精兵とは言えない練度しか誇っていない。
それがこの国の国力で、そして勇者の実力がこの程度相手にもならない。
「っぁ……」
……だが、今まで一対一の模擬戦程度しかしたことがない、勇者がその実力を知ることはなかった。
ただ、目の前に現れたかつてない大軍に恐れおののき、そして震えだす。
……自分に勇者としての力があることさえ、恐怖で忘れて。
「うわぁぁぁぁ!」
そして次の瞬間、そんな叫び声を後にし残して、聖剣だけを手にした勇者はこの場から走り去っていった……
惨めに勇者が逃げ出した時、それは今まで実力も伴わずに自身を過信していた勇者が追放された瞬間だった。
そして偶然にも、その時と一人の転移者が英雄として周囲の人間に認められた時間が同じだったことを知る者はいない……
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