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1.ギルド編
第13話 鍛錬II
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地獄の二週間、それを超えた後僕に待っていたのは魔獣を相手に生きて行く為の勉強だった。
「ようやく、休める……」
そしてその時僕は心のそこから安堵していた。
決して勉強が入ったからといっても全ての鍛錬が無くなるわけではない。
けれどもある程度鍛錬が少なくなるのは確実で、さらに勉強をしている間は身体を休めることもできるのだ。
しかも僕は日本でもそこまで勉強が苦手ではなく、正直異世界の勉強など何も気に病むことはない……
「さぁ、まずはこれを三日で覚えよう。もちろん丸暗記じゃなく、ちゃんと理解できる状態で!」
「えっ?」
……という僕の甘い見通しはシュライトさんに差し出された国語辞典並みに厚い魔獣の図鑑を差し出された時、砕けることになった。
一瞬僕は、何が起きたのか分からず言葉を失う。
「出来なかったら湿地からやり直すか!」
「くそったれぇ!」
……けれども次のシュライトさんの言葉に何処かの戦闘民族の王子のように叫んで死ぬ気で勉強に取り組むことになった。
そしてその日から僕とシュライトさんの勉強時間だけで僕が死にかけるという、明らかに異常な授業が始まった……
◇◆◇
そしてそんな地獄のような勉強時間があっても鍛錬が無くなることはなかった。
何故かやたら可愛らしいシュライトさんの丸文字に授業でトラウマを持ちかけた僕の今の鍛錬は技を覚えることだった。
今までは身体を鍛える修行だったらしく、土台を作るために僕はあれだけの地獄を過ごしてきたらしい。
……シュライトさん曰く、あれで本来なら10年かかるはずの一流の戦士の身体が作れたと笑っていた。
せめて短縮しても一年程度にして欲しかったとどれだけ僕が思ったことか……
とにかくそんなこんなで土台ではシュライトさんのお墨付きをもらった僕の身体能力は驚異的に飛躍していた。
それも最早能力を使わない状態での。
「出来た?」
そしてそこまで成長していた僕はあっさりとシュライトさんに教えてもらった技を習得することに成功した。
それは魔力と呼ばれる、所謂魔法の素を使い攻撃を強化する技。
難易度が高く、それが使えるかどうかが一流とそれ以外の人間を阻む壁となると言われる技。
そしてそれを僕はあっさりと成功させて目の前の岩に深々と傷をつけていた。
「えっ……よしっ!」
一瞬あまりにもあっさりと成功したその技に僕は戸惑い、そしてようやく自分が成功したことを悟って飛び跳ねる。
よく考えてみれば、湿地で逃げ回るうちになんか似たようなものを使っていた気がするが、今いきなり使えるようになった方がかっこいいのでそのことは忘れよう。
「ほぅ。流石だな翔。これでお前は一流の実力を持った」
そしてその僕を見た、シュライトさんはそう笑いながら告げる。
シュライトさんに褒められる、そんなことは滅多になくて僕の頬が思わず緩む。
「ありがとうございます!」
そして技を使えるようになったということは、この時間は休憩時間になるのかとそう想像しながら頭を下げた僕にシュライトさんは満足そうに頷いた。
「まぁ、まだ使えるだけで極められていないから全然駄目だがな」
「えっ?」
しかし、その僕の喜びは長く続くことはなかった。
突然重り、そう懐かしの湿地でつけていた相棒を腕につけられ僕の頭は真っ白になる。
「今度はこれで頑張れ」
「えっ?」
しかし、その僕に対するシュライトさんの返答は輝かんばかりの笑みだった。
僕は流石に我慢ができなくなって口を開く。
そして一流の実力、それを持っているならば僕はもう何も望むことはないと、そうシュライトさんに言おうとして……
「でも、使えているなら……」
……最後まで言い切ることはできなかった。
「まぁ、嫌というならまたし……」
「うぉぉおお!やる気が湧いてきた!」
必死に技を重りをつけた状態で岩に放つ僕、その目と鼻からは大粒の汗が溢れていた……
僕の地獄は未だ終わらない……
「ようやく、休める……」
そしてその時僕は心のそこから安堵していた。
決して勉強が入ったからといっても全ての鍛錬が無くなるわけではない。
けれどもある程度鍛錬が少なくなるのは確実で、さらに勉強をしている間は身体を休めることもできるのだ。
しかも僕は日本でもそこまで勉強が苦手ではなく、正直異世界の勉強など何も気に病むことはない……
「さぁ、まずはこれを三日で覚えよう。もちろん丸暗記じゃなく、ちゃんと理解できる状態で!」
「えっ?」
……という僕の甘い見通しはシュライトさんに差し出された国語辞典並みに厚い魔獣の図鑑を差し出された時、砕けることになった。
一瞬僕は、何が起きたのか分からず言葉を失う。
「出来なかったら湿地からやり直すか!」
「くそったれぇ!」
……けれども次のシュライトさんの言葉に何処かの戦闘民族の王子のように叫んで死ぬ気で勉強に取り組むことになった。
そしてその日から僕とシュライトさんの勉強時間だけで僕が死にかけるという、明らかに異常な授業が始まった……
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そしてそんな地獄のような勉強時間があっても鍛錬が無くなることはなかった。
何故かやたら可愛らしいシュライトさんの丸文字に授業でトラウマを持ちかけた僕の今の鍛錬は技を覚えることだった。
今までは身体を鍛える修行だったらしく、土台を作るために僕はあれだけの地獄を過ごしてきたらしい。
……シュライトさん曰く、あれで本来なら10年かかるはずの一流の戦士の身体が作れたと笑っていた。
せめて短縮しても一年程度にして欲しかったとどれだけ僕が思ったことか……
とにかくそんなこんなで土台ではシュライトさんのお墨付きをもらった僕の身体能力は驚異的に飛躍していた。
それも最早能力を使わない状態での。
「出来た?」
そしてそこまで成長していた僕はあっさりとシュライトさんに教えてもらった技を習得することに成功した。
それは魔力と呼ばれる、所謂魔法の素を使い攻撃を強化する技。
難易度が高く、それが使えるかどうかが一流とそれ以外の人間を阻む壁となると言われる技。
そしてそれを僕はあっさりと成功させて目の前の岩に深々と傷をつけていた。
「えっ……よしっ!」
一瞬あまりにもあっさりと成功したその技に僕は戸惑い、そしてようやく自分が成功したことを悟って飛び跳ねる。
よく考えてみれば、湿地で逃げ回るうちになんか似たようなものを使っていた気がするが、今いきなり使えるようになった方がかっこいいのでそのことは忘れよう。
「ほぅ。流石だな翔。これでお前は一流の実力を持った」
そしてその僕を見た、シュライトさんはそう笑いながら告げる。
シュライトさんに褒められる、そんなことは滅多になくて僕の頬が思わず緩む。
「ありがとうございます!」
そして技を使えるようになったということは、この時間は休憩時間になるのかとそう想像しながら頭を下げた僕にシュライトさんは満足そうに頷いた。
「まぁ、まだ使えるだけで極められていないから全然駄目だがな」
「えっ?」
しかし、その僕の喜びは長く続くことはなかった。
突然重り、そう懐かしの湿地でつけていた相棒を腕につけられ僕の頭は真っ白になる。
「今度はこれで頑張れ」
「えっ?」
しかし、その僕に対するシュライトさんの返答は輝かんばかりの笑みだった。
僕は流石に我慢ができなくなって口を開く。
そして一流の実力、それを持っているならば僕はもう何も望むことはないと、そうシュライトさんに言おうとして……
「でも、使えているなら……」
……最後まで言い切ることはできなかった。
「まぁ、嫌というならまたし……」
「うぉぉおお!やる気が湧いてきた!」
必死に技を重りをつけた状態で岩に放つ僕、その目と鼻からは大粒の汗が溢れていた……
僕の地獄は未だ終わらない……
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