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第15章 生誕の刑
第124話 生命の連鎖
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その後、高城 亮は措置入院となり精神病棟へ収容される事となった。
罪人であっても治療が必要ならば当然の措置ではあるが、世論や警察内部では大きく物議を醸した。
それは、高城 亮の重ねた罪の残虐性、高城の異常性を見れば誰もがそう思う事だろう。
そして、その間にも被害者である三人の母の腹の中では順調に子供達は成長しているというのが残酷な現実であった。
「そうだ、子供達の名前を考えなくてはね。性別も判明はしていないが……まぁ、男でも『使える部位』はある、無駄な生命という事は無い」
ベッドに縛り付けられた高城は、毎日の様に人体解剖についての医学書を目にしながら、独り言を垂れ流し続けていた。
高城の症状は全く改善せず、それどころか被害者達との距離が離れた事により更に悪化しているとも考えられていた。
「どうせならば母親に由来した名を付けてやりたいね。そちらの方が愛着も湧く筈だろう?」
妄想の中の誰かと会話をしているのだろうか。最早、高城の視界には現実の世界など映ってすらいないのだろう。
『……ここに来てからは、ずっとあの様子です。特に幻覚と幻聴が酷くて……妄想の中の誰かと一日中会話を』
誰もいない個室でひたすらに会話を続ける高城へ、主治医と羽村が乾いた視線を送る。
『……北条の行動にも納得がいくよ、遺族に知られでもしたら殺さねかねない』
高城に反省の念など微塵も存在しない。あるのは、過去への達成感と未来への期待感。今でも高城の頭の中には『理想の聖処女』の姿をが映し出されている。
『北条さんと言えば……高城の取り調べを担当されたのですよね。彼女も……随分と参っていた様ですが……カウンセリングが必要なのでは?』
『……ああ、北条に担当をさせた俺が馬鹿だった。しばらくは精神的にも参って、仕事も休んでいたんだ。ついこの間何とか復帰はしたが……やはり、ずっと何かを迷っている様で……辛い思いをさせてしまった』
そして、高城の取り調べを担当した北条はあれから精神的なダメージを負い、しばらく休職していた。
これも良い経験になるだろう、などと浅はかな考えで北条を取り調べの担当にさせたのが間違いだったのだ。北条は高城の狂気に呑み込まれ、心を病んでしまった。
数日前、ようやく復職したものの以前とは明らかに様子もおかしい。心の傷は簡単には塞がらないとは言うが、正にその通りだと北条を見て誰もが思った事だろう。
『それならば尚更、私の元へ一度お連れ下さい。北条さんも……高城の被害者なんですから』
『関わった人間の全てを不幸にする……正真正銘の悪魔だ、この男は……』
羽村は高城への殺意を抑えながら、ただ妄想に耽る高城へと睨みを利かせていた。
そして、そんな外部からの視線も気にせず高城は更に妄想の奥側へと更に足を踏み入れていく。
「『理想の聖処女』……それは、『生命の連鎖』の果てに実現される。より多くの『生命』と『部品』を犠牲とする事で、より僕の理想は現実味を帯びてくる」
高城は絶望などしていない。
それどころか、希望を抱いてる。
新たな『生命』、新たな『部品』……それらの玩具を自らの手で組み換え、新たな形にへと造り替える事を高城は待ちきれない。
「もう少し、待っていてくれ。全てを片付けたら……僕が……パパが、君達を……」
生命の連鎖により、『理想の聖処女』を構成する為の礎が築かれる。
高城はようやく『答え』へ辿り着いたのだ。
一人の少女の血肉と生命ではまるで足りない。聖処女とは、多くの血肉と生命を礎とする事でようやく実現する事が出来る……高城にとっての『最高傑作』なのだと言う事を。
罪人であっても治療が必要ならば当然の措置ではあるが、世論や警察内部では大きく物議を醸した。
それは、高城 亮の重ねた罪の残虐性、高城の異常性を見れば誰もがそう思う事だろう。
そして、その間にも被害者である三人の母の腹の中では順調に子供達は成長しているというのが残酷な現実であった。
「そうだ、子供達の名前を考えなくてはね。性別も判明はしていないが……まぁ、男でも『使える部位』はある、無駄な生命という事は無い」
ベッドに縛り付けられた高城は、毎日の様に人体解剖についての医学書を目にしながら、独り言を垂れ流し続けていた。
高城の症状は全く改善せず、それどころか被害者達との距離が離れた事により更に悪化しているとも考えられていた。
「どうせならば母親に由来した名を付けてやりたいね。そちらの方が愛着も湧く筈だろう?」
妄想の中の誰かと会話をしているのだろうか。最早、高城の視界には現実の世界など映ってすらいないのだろう。
『……ここに来てからは、ずっとあの様子です。特に幻覚と幻聴が酷くて……妄想の中の誰かと一日中会話を』
誰もいない個室でひたすらに会話を続ける高城へ、主治医と羽村が乾いた視線を送る。
『……北条の行動にも納得がいくよ、遺族に知られでもしたら殺さねかねない』
高城に反省の念など微塵も存在しない。あるのは、過去への達成感と未来への期待感。今でも高城の頭の中には『理想の聖処女』の姿をが映し出されている。
『北条さんと言えば……高城の取り調べを担当されたのですよね。彼女も……随分と参っていた様ですが……カウンセリングが必要なのでは?』
『……ああ、北条に担当をさせた俺が馬鹿だった。しばらくは精神的にも参って、仕事も休んでいたんだ。ついこの間何とか復帰はしたが……やはり、ずっと何かを迷っている様で……辛い思いをさせてしまった』
そして、高城の取り調べを担当した北条はあれから精神的なダメージを負い、しばらく休職していた。
これも良い経験になるだろう、などと浅はかな考えで北条を取り調べの担当にさせたのが間違いだったのだ。北条は高城の狂気に呑み込まれ、心を病んでしまった。
数日前、ようやく復職したものの以前とは明らかに様子もおかしい。心の傷は簡単には塞がらないとは言うが、正にその通りだと北条を見て誰もが思った事だろう。
『それならば尚更、私の元へ一度お連れ下さい。北条さんも……高城の被害者なんですから』
『関わった人間の全てを不幸にする……正真正銘の悪魔だ、この男は……』
羽村は高城への殺意を抑えながら、ただ妄想に耽る高城へと睨みを利かせていた。
そして、そんな外部からの視線も気にせず高城は更に妄想の奥側へと更に足を踏み入れていく。
「『理想の聖処女』……それは、『生命の連鎖』の果てに実現される。より多くの『生命』と『部品』を犠牲とする事で、より僕の理想は現実味を帯びてくる」
高城は絶望などしていない。
それどころか、希望を抱いてる。
新たな『生命』、新たな『部品』……それらの玩具を自らの手で組み換え、新たな形にへと造り替える事を高城は待ちきれない。
「もう少し、待っていてくれ。全てを片付けたら……僕が……パパが、君達を……」
生命の連鎖により、『理想の聖処女』を構成する為の礎が築かれる。
高城はようやく『答え』へ辿り着いたのだ。
一人の少女の血肉と生命ではまるで足りない。聖処女とは、多くの血肉と生命を礎とする事でようやく実現する事が出来る……高城にとっての『最高傑作』なのだと言う事を。
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