303 / 346
第8章『【街】/武装姫ヘミングウェイの章』
第287話 ココア、落ちる
しおりを挟む
空海大地と天地海里、それに相対する回帰ダブルエム。
両者の戦いは、既に決着が見えていた。
空海大地と天地海里が合体して生まれたマイマイン、それが持つ専用スキル【絆の世界】。
全ての者に絆を与え、好感度を徐々に高めていく一種の洗脳スキルが発動する中、ダブルエムは2人を愛する前に殺さなければならない。
もはや決着は、時間の問題と言えよう。
----さて、話は両者が戦う少し前に遡る。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「----ん?」
ココア・ガールハント・ヒアリング3世は、キョトンと首を傾げる。
「(落ち着くのじゃ。落ち着いて、状況を整理するのじゃ、妾)」
一旦、深呼吸をして、ココアは冷静に状況を思い返していく。
自分達は、ココアの妹----武装姫ヘミングウェイを奪った【街】を倒すため、行動を開始。
【街】が潜伏しているレムリア大陸に向かうため、【アバトゥワの塔】というダンジョンを攻略。
そして、ダンジョンを無事に抜けて----
----ココアは、空の上に居た。
しかも、十数メートルなんてちゃちな高さではなく、数百メートルという、物凄い高所に。
「なっ、なんで妾! 空に居るんじゃよぉぉぉぉぉぉ!!」
ひゅーっと、まるで今ようやく思い出したかのように、ココアの身体は重力に沿って、落ちて行く。
その横には同じように落ちるマルガリータと冴島渉の姿も見えるが、2人とも気を失っているみたいで、ピクリとも動かない。
「妾以外が気絶しておる……いや、妾だけが気絶を受けなかったというべきかのう?」
そこで、ココアは自分のスキルを思い出した。
===== ===== =====
後天スキル;【原罪の妖狐・色欲】
;【原罪の妖狐】のスキルのうちの1つ。相手の状態異常攻撃を全て無効化する
===== ===== =====
「状態異常の全無効化! 恐らくこのスキルが、妾を気絶から守ったのじゃろう!」
ともあれ、状況を把握できてるってだけで、事態は何も解決していないのだが。
「落ちる前に対処せねば! これは敵からの攻撃じゃからのう!」
そう、これは空に転移させられたという、敵からの攻撃である。
そもそも【アバトゥワの塔】は、レムリア大陸に繋がる4つの道のうちの1つ。
敵が罠を仕掛けていないと、油断したこちらが愚かだったのである。
「まさか、空に繋げておるとは----!!」
落ちて行く中、下にはちゃんとレムリア大陸らしき場所があるのを確認する。
しかし同時に、その大陸との激突が今か今かと迫っているという危機であるという事も、再認識する。
ココアは、大丈夫だ。
レベルⅤの召喚獣であるココア、そして同じく高いレベルを持つマルガリータも、怪我こそ負うが、命に別状はないはず。
しかし、問題は【召喚士】冴島渉。
ココアと同じレベルⅤではあるが、正直、この高さから落ちて無事に済むような未来は見えない。
いや、最悪死ぬ可能性の方が高いとも言える。
こんな時に助けてくれそうな雪ん子とファイントの姿は、どこにも見えない。
恐らく、自分達とは違う場所に転移してしまったのだろう。
ともかく、今なんとか出来るのはココアだけという事実に気付くも、事態は刻一刻と悪い方向に進んでいる。
最悪の事態までおよそ30秒を切っていた。
「とっ、とにかくなんとかするのじゃ! 妾の持つスキルで!」
ココアはそう決めると、使えそうなスキルがないかを探り、2つのスキルを採用した。
===== ===== =====
後天スキル;【原罪の妖狐・強欲】
;【原罪の妖狐】のスキルのうちの1つ。自分の味方に対するアイテムやスキル効果の効果時間を倍にする
後天スキル;【雷狐・風狐】
;雷と風の2種類の狐神を使役するスキル
===== ===== =====
ココアが選んだのは、この2つのスキル。
「まずは、【雷狐・風狐】!」
ココアがスキルを発動すると、2匹の狐が目の前に現れる。
1匹は全身から雷を迸らせる黄色い雷狐、そしてもう1匹は全身に風を纏わせる緑色の風狐。
ココアは風狐の方に指示を出し、風狐はすぐさま冴島渉の元に行き、そのモフモフとした毛の中に包ませる。
風狐に次の指示として、風を物凄い勢いで吐き出させ、落下の衝撃を少しでも軽くさせる。
当然、そんな勢いで風を使わせれば、スキルとして呼び出した風狐はエネルギー切れで消えてしまう。
その前に、【原罪の妖狐・強欲】のスキルで、風狐の効果時間を倍にして、少しでも消えるまでの時間を延ばす。
「ふぅ、これで良しっと……あっ」
そして、初めから風魔法を使えば済んだんじゃないかと、地面に激突した瞬間に気付くココアなのであった。
(※)【雷狐・風狐】
ココア・ガールハント・ヒアリング3世が持つ、スキルのうちの1つ。2匹の属性が異なる狐を呼び出し使役する
雷狐はその名の通り雷を操り、風狐は同じく風を操る。現在の効果時間は1時間であるが、今回のように風を思いっきり出させるなどの無茶な使い方をすると効果時間、召喚されている時間は短くなる
両者の戦いは、既に決着が見えていた。
空海大地と天地海里が合体して生まれたマイマイン、それが持つ専用スキル【絆の世界】。
全ての者に絆を与え、好感度を徐々に高めていく一種の洗脳スキルが発動する中、ダブルエムは2人を愛する前に殺さなければならない。
もはや決着は、時間の問題と言えよう。
----さて、話は両者が戦う少し前に遡る。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「----ん?」
ココア・ガールハント・ヒアリング3世は、キョトンと首を傾げる。
「(落ち着くのじゃ。落ち着いて、状況を整理するのじゃ、妾)」
一旦、深呼吸をして、ココアは冷静に状況を思い返していく。
自分達は、ココアの妹----武装姫ヘミングウェイを奪った【街】を倒すため、行動を開始。
【街】が潜伏しているレムリア大陸に向かうため、【アバトゥワの塔】というダンジョンを攻略。
そして、ダンジョンを無事に抜けて----
----ココアは、空の上に居た。
しかも、十数メートルなんてちゃちな高さではなく、数百メートルという、物凄い高所に。
「なっ、なんで妾! 空に居るんじゃよぉぉぉぉぉぉ!!」
ひゅーっと、まるで今ようやく思い出したかのように、ココアの身体は重力に沿って、落ちて行く。
その横には同じように落ちるマルガリータと冴島渉の姿も見えるが、2人とも気を失っているみたいで、ピクリとも動かない。
「妾以外が気絶しておる……いや、妾だけが気絶を受けなかったというべきかのう?」
そこで、ココアは自分のスキルを思い出した。
===== ===== =====
後天スキル;【原罪の妖狐・色欲】
;【原罪の妖狐】のスキルのうちの1つ。相手の状態異常攻撃を全て無効化する
===== ===== =====
「状態異常の全無効化! 恐らくこのスキルが、妾を気絶から守ったのじゃろう!」
ともあれ、状況を把握できてるってだけで、事態は何も解決していないのだが。
「落ちる前に対処せねば! これは敵からの攻撃じゃからのう!」
そう、これは空に転移させられたという、敵からの攻撃である。
そもそも【アバトゥワの塔】は、レムリア大陸に繋がる4つの道のうちの1つ。
敵が罠を仕掛けていないと、油断したこちらが愚かだったのである。
「まさか、空に繋げておるとは----!!」
落ちて行く中、下にはちゃんとレムリア大陸らしき場所があるのを確認する。
しかし同時に、その大陸との激突が今か今かと迫っているという危機であるという事も、再認識する。
ココアは、大丈夫だ。
レベルⅤの召喚獣であるココア、そして同じく高いレベルを持つマルガリータも、怪我こそ負うが、命に別状はないはず。
しかし、問題は【召喚士】冴島渉。
ココアと同じレベルⅤではあるが、正直、この高さから落ちて無事に済むような未来は見えない。
いや、最悪死ぬ可能性の方が高いとも言える。
こんな時に助けてくれそうな雪ん子とファイントの姿は、どこにも見えない。
恐らく、自分達とは違う場所に転移してしまったのだろう。
ともかく、今なんとか出来るのはココアだけという事実に気付くも、事態は刻一刻と悪い方向に進んでいる。
最悪の事態までおよそ30秒を切っていた。
「とっ、とにかくなんとかするのじゃ! 妾の持つスキルで!」
ココアはそう決めると、使えそうなスキルがないかを探り、2つのスキルを採用した。
===== ===== =====
後天スキル;【原罪の妖狐・強欲】
;【原罪の妖狐】のスキルのうちの1つ。自分の味方に対するアイテムやスキル効果の効果時間を倍にする
後天スキル;【雷狐・風狐】
;雷と風の2種類の狐神を使役するスキル
===== ===== =====
ココアが選んだのは、この2つのスキル。
「まずは、【雷狐・風狐】!」
ココアがスキルを発動すると、2匹の狐が目の前に現れる。
1匹は全身から雷を迸らせる黄色い雷狐、そしてもう1匹は全身に風を纏わせる緑色の風狐。
ココアは風狐の方に指示を出し、風狐はすぐさま冴島渉の元に行き、そのモフモフとした毛の中に包ませる。
風狐に次の指示として、風を物凄い勢いで吐き出させ、落下の衝撃を少しでも軽くさせる。
当然、そんな勢いで風を使わせれば、スキルとして呼び出した風狐はエネルギー切れで消えてしまう。
その前に、【原罪の妖狐・強欲】のスキルで、風狐の効果時間を倍にして、少しでも消えるまでの時間を延ばす。
「ふぅ、これで良しっと……あっ」
そして、初めから風魔法を使えば済んだんじゃないかと、地面に激突した瞬間に気付くココアなのであった。
(※)【雷狐・風狐】
ココア・ガールハント・ヒアリング3世が持つ、スキルのうちの1つ。2匹の属性が異なる狐を呼び出し使役する
雷狐はその名の通り雷を操り、風狐は同じく風を操る。現在の効果時間は1時間であるが、今回のように風を思いっきり出させるなどの無茶な使い方をすると効果時間、召喚されている時間は短くなる
0
お気に入りに追加
105
あなたにおすすめの小説
なぜかクセすご美少女たちに振り回されている俺は本の物語に出てくる武器を具現化する能力で無双する!!
浅羽ふゆ
ファンタジー
【男性向けHOTランキング最高9位記録】なんやかんやあって美少女たちに振り回される毎日を送るケイタ。
じつはけっこう強かった。というよりかなり強かった。
しかし、なぜかなかなかその実力を発揮しきれない。
その理由は……美少女たちのクセがすごすぎたからである!
それでもケイタはめげません。なぜならーーーー。
この生活、けっこう悪くないんですよね!!
自由都市のダンジョン探索者 ~精霊集めてダンジョン攻略~【第一部:初級探索者編完結】
高田 祐一
ファンタジー
祖父の死をきっかけに村を出て、自由都市のダンジョンで探索者を目指すユーリの成長の物語。最初はウサギ相手にも苦戦しますが、徐々に召喚精霊達を仲間に加え、人々に支えられながら、やがてダンジョンの危機に立ち向かう探索者に成長する物語です。
【第一部:初級探索者編】完結しました。
同時投稿中:魔族に荒らされた異世界をスキルの力でゲーム世界に改編する物語
【転生したのはAIでした ~精霊として転生した私は《特殊スキル》システム管理AIで村の復興から始めます~】
あわせて宜しくお願い致します。
階段落ちたら異世界に落ちてました!
織原深雪
ファンタジー
どこにでも居る普通の女子高生、鈴木まどか17歳。
その日も普通に学校に行くべく電車に乗って学校の最寄り駅で下りて階段を登っていたはずでした。
混むのが嫌いなので少し待ってから階段を登っていたのに何の因果かふざけながら登っていた男子高校生の鞄が激突してきて階段から落ちるハメに。
ちょっと!!
と思いながら衝撃に備えて目を瞑る。
いくら待っても衝撃が来ず次に目を開けたらよく分かんないけど、空を落下してる所でした。
意外にも冷静ですって?内心慌ててますよ?
これ、このままぺちゃんこでサヨナラですか?とか思ってました。
そしたら地上の方から何だか分かんない植物が伸びてきて手足と胴に巻きついたと思ったら優しく運ばれました。
はてさて、運ばれた先に待ってたものは・・・
ベリーズカフェ投稿作です。
各話は約500文字と少なめです。
毎日更新して行きます。
コピペは完了しておりますので。
作者の性格によりざっくりほのぼのしております。
一応人型で進行しておりますが、獣人が出てくる恋愛ファンタジーです。
合わない方は読むの辞めましょう。
お楽しみ頂けると嬉しいです。
大丈夫な気がするけれども一応のR18からR15に変更しています。
トータル約6万字程の中編?くらいの長さです。
予約投稿設定完了。
完結予定日9月2日です。
毎日4話更新です。
ちょっとファンタジー大賞に応募してみたいと思ってカテゴリー変えてみました。
王太子殿下に婚約者がいるのはご存知ですか?
通木遼平
恋愛
フォルトマジア王国の王立学院で卒業を祝う夜会に、マレクは卒業する姉のエスコートのため参加をしていた。そこに来賓であるはずの王太子が平民の卒業生をエスコートして現れた。
王太子には婚約者がいるにも関わらず、彼の在学時から二人の関係は噂されていた。
周囲のざわめきをよそに何事もなく夜会をはじめようとする王太子の前に数名の令嬢たちが進み出て――。
※以前他のサイトで掲載していた作品です
『龍殺し』の嘘と罪
玄城 克博
ファンタジー
世界が一度滅び、魔術が普遍的な法則の一つとなった世界。
かつて世界を滅ぼしたとされる『殻の異形』と呼ばれる存在と、それらと戦う魔術師達の物語。
若くして『殻の異形』の中でも最上位種である龍を殺した『龍殺し』の称号を得た魔術師、ルイン。だが、彼にはある秘密があり――
美少女に転生して料理して生きてくことになりました。
ゆーぞー
ファンタジー
田中真理子32歳、独身、失業中。
飲めないお酒を飲んでぶったおれた。
気がついたらマリアンヌという12歳の美少女になっていた。
その世界は加護を受けた人間しか料理をすることができない世界だった
余りモノ異世界人の自由生活~勇者じゃないので勝手にやらせてもらいます~
藤森フクロウ
ファンタジー
相良真一(サガラシンイチ)は社畜ブラックの企業戦士だった。
悪夢のような連勤を乗り越え、漸く帰れるとバスに乗り込んだらまさかの異世界転移。
そこには土下座する幼女女神がいた。
『ごめんなさあああい!!!』
最初っからギャン泣きクライマックス。
社畜が呼び出した国からサクッと逃げ出し、自由を求めて旅立ちます。
真一からシンに名前を改め、別の国に移り住みスローライフ……と思ったら馬鹿王子の世話をする羽目になったり、狩りや採取に精を出したり、馬鹿王子に暴言を吐いたり、冒険者ランクを上げたり、女神の愚痴を聞いたり、馬鹿王子を躾けたり、社会貢献したり……
そんなまったり異世界生活がはじまる――かも?
ブックマーク30000件突破ありがとうございます!!
第13回ファンタジー小説大賞にて、特別賞を頂き書籍化しております。
♦お知らせ♦
余りモノ異世界人の自由生活、コミックス1~3巻が発売中!
漫画は村松麻由先生が担当してくださっています。
第四巻は11月18日に発送。店頭には2~3日後くらいには並ぶと思われます。
よかったらお手に取っていただければ幸いです。
書籍1~7巻発売中。イラストは万冬しま先生が担当してくださっています。
コミカライズの連載は毎月第二水曜に更新となります。
漫画は村松麻由先生が担当してくださいます。
※基本予約投稿が多いです。
たまに失敗してトチ狂ったことになっています。
原稿作業中は、不規則になったり更新が遅れる可能性があります。
現在原稿作業と、私生活のいろいろで感想にはお返事しておりません。
転生料理人の異世界探求記(旧 転生料理人の異世界グルメ旅)
しゃむしぇる
ファンタジー
こちらの作品はカクヨム様にて先行公開中です。外部URLを連携しておきましたので、気になる方はそちらから……。
職場の上司に毎日暴力を振るわれていた主人公が、ある日危険なパワハラでお失くなりに!?
そして気付いたら異世界に!?転生した主人公は異世界のまだ見ぬ食材を求め世界中を旅します。
異世界を巡りながらそのついでに世界の危機も救う。
そんなお話です。
普段の料理に使えるような小技やもっと美味しくなる方法等も紹介できたらなと思ってます。
この作品は「小説家になろう」様及び「カクヨム」様、「pixiv」様でも掲載しています。
ご感想はこちらでは受け付けません。他サイトにてお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる