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第74話 王子と王女の2人に、怒り心頭のようです配信

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「えっと、ですね……」

 どうも、いきなりシセン王子とシミット王女に詰め寄られて、苦笑いを浮かべる錬金術師のススリアです。
 私はいま、妹姫フランシアから『頼めばどんな無理難題だろうとも、答えをくれる素晴らしい人』『今までにない斬新な魔道具を開発する者』という、どう考えても過大評価すぎる評価を受けた私に、魔道具の依頼をしてきました。

 糸目のイケメン王子こと、シセン王子からは『商人同士の交流を円滑に進めるための魔道具』。
 西洋人形風美少女お姫様こと、シミット王女からは『お客様との交渉を円満に進めるための魔道具』。

 明らかに無茶ぶりすぎる、魔道具作成依頼である。
 商人の国の王族の癖に、発注というモノをなにも分かっていない。

「(いやいや、これはあまりにひどい。ひどすぎる)」

 いままで色々と無茶ぶりは受けてきたが、2人の依頼はぶっちぎりで酷い。
 過去一、いや歴代最悪レベルの発注だ。



 私が思うに----依頼とは、明確でなければならない。

 たとえば、この間の『錬金術師大会』での決勝戦のお題、"子供でも飲めるポーション"。
 これは『子供』という"人物"を対象とした、『飲みやすいポーション』という"目的"があった。

 しかしながら、今回の2人の依頼については、『なんかこの場面で使えそうな、良いのを作ってくれ』という漠然としたものだ。
 ----どういう年代か、どういう趣味嗜好なのか、どういう性別なのか……。
 そういうターゲット層がなにも分からない、本当にクソみたいな依頼である。

 大きさも、使う場所すら想定されていない、なにも決まっていない白紙状態で渡されたようなモノだ。

「(これは、話にもならないな)」

 「はぁ……」と溜め息混じりで立ち上がると、シガラキ代表が「待ってくれ!」と私を止めに来た。

「同じくモノの売買に携わっている者として、君の怒りは痛いほど、理解できる! だがしかし、シセン王子は20歳、シミット王女も19歳で、今まで自分から発注した経験と言うのが少ないのです! 文字通り、『経験不足』なのです!
 ----そうですので、どうか! どうか抑えてください、ススリアさん!」

 あっ、どうやらシガラキ代表も分かっているらしい。
 そりゃあそうだよなぁ~、こんなの初見で『意味不明な依頼』と分かるよなぁ~。
 こんなのが見抜けないなんて、代表とか以前に、商人として失格レベルである。

「(その上で、私に抑えて欲しい、か)」

 考えてみれば、シガラキ代表はドラスト商会の代表。
 そしてドラスト商会は、盟主様の御用商人。
 そんなドラスト商会の代表が、盟主様のご家族に物申す事なんて出来ないだろう。

 私が納得していると、シガラキ代表にガシッと掴まれて、ササっと移動させられた。
 その上で小声でこっそり、私はシガラキ代表に声をかけられた。

「でも、王子様や王女様を叱るのは出来るのですか……? (ぼそぼそっ)」
「親会社のようなモノなので、難しいですね……? (ぼそぼそっ)」

 ----でしょうねぇ。

 まぁ、今回は王族ゆえの失敗、経験不足と割り切る事としましょう。
 もう会う機会もない相手に、腹を立てても仕方がないし。

「とりあえず受けるふりしてください。あとで、ちゃんとした発注依頼書を書きますので(ぼそぼそっ)」
「大変だね。おいっ(ぼそぼそっ)」

 まぁ、私としたら、帰れるならなんだって良い。
 発注先が無茶を言うのは珍しい事ではないし、後から調整をしてくれるのだったら問題ないか。


「ちょっと待つアルよ、そこの2人組!」


 そうやってシガラキ代表とこそこそと裏工作をしていた私だったんだけど、それも無駄になってしまった。
 なにせジュールが、シセン王子とシミット王女の2人がビシッと指を突きつけていた。

「「ちょっ……!? ジュール?!」」

 私達が止めようとするが、ジュールは止まらない。
 止める間もなく、4本足を用いて、どんどんシセン王子とシミット王女の2人に近付いてきた。

「あっ、あんたは……?」
「いったい……?」

 いきなり迫って来た4本足型ゴーレムであるジュールに、シセン王子とシミット王女の2人は驚いていた。
 驚く顔をする2人の顔に、ジュールに指を突きつけて、2人に突きつける。

「ススリア代表と、シガラキ代表の2人! この私の製作者と、現在の雇用主を邪魔にされて、私のラーメン魂に火がついたアル!」

 ガシッと、シセン王子とシミット王女の2人の首根っこを掴む。

「「ちょっ……! 私達は王族ですよ!」」
「王族だろうと、私のラーメン魂には貴賎なしアル! さぁ、あなた達の灰汁あくを取って、更生させてやるで、ヨロシ!」

 そう言って、ジュールは2人の王族を連れて、部屋の外に出て行ってしまわれた。


「「…………。」」
「マスター、大丈夫ですか?」

 私とシガラキ代表の2人は、すぐさま逃げ出したかった。
 しかしながら、ベータちゃんは「ここで帰ってはいけないのでは?」という正論により、私達は待ってる事にしたのであった。

 ----頼むから、ジュールが2人の教育に成功しますようにと願いながら。
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