上 下
57 / 118

第57話 みんなでポーションを改良しよう配信(2)

しおりを挟む
 ポーションを一旦別容器に移した私は、そのままガラス瓶製作に取り掛かる。

 味に関しては正直な所、そこまで大差は出てこないと思う。
 メキスさんも蒸留という手段を使ってでも味を美味しくしようとしているみたいだけれども、どんなに美味しくしようが『ちょいマズい』か、『飲んでも良いか』くらいの味にしかならないだろう。
 子供達にとっては、そこまで味の変化は分かってもらえないと思う。

 だから、味以外に・・・・変化を付ける。
 ポーションは液体と、それを入れるガラス瓶の2つで構成されているので、味以外の変化だと、当然、こっちの容器であるガラス瓶の改革になる。

 ポーションの歴史上、味の変化と比べると、ガラス瓶の改革はあまりされていない。
 精々が、冒険で多少雑に扱っても大丈夫になるくらい、かなり頑丈に作っておいてるくらいである。
 だから味なんかと比べて、こっちのガラス瓶に関してはまだまだ工夫のし甲斐がある。

「(子供達が好きなモノと言えば、触って面白いモノ)」

 おもちゃのスライムのような感触が斬新だったり、あるいは戦隊もののロボットのように変形させて合体させたり。
 そういう、触っていて面白いといえるようなモノが、子供達は大好きなのだ。


 ----要するに、娯楽。
 ----大人も、子供も、みんなが娯楽大好きなのだから。


「それじゃあ、ガラス瓶を錬金して行こうか」

 私は頭の中で思い描いているガラス瓶の設計図通りに、手に持っているガラス瓶の形を変形させていく。

 ポーションが入っていたガラス瓶を、真ん中を少し凹ませたガラス瓶に変形。
 瓶に凹みをつけるのはこの後の作業にも関係あるが、それよりも重要なのは持ちやすさのため。

 ポーションは子供の手と比べると、少し大きめのサイズ。
 さらにガラス瓶ということもあって、飲もうとしても滑ってしまう可能性もあった。
 そこで凹みを付ける事で、指が入る場所を作り、子供の小さな手でも持ちやすいように設計した、という訳なのである。

「さて、次はポーションの改良と行きましょうか」

 ガラス瓶の改良は、いったん終了。
 続いて、ポーション自体にも一工夫加えておく。

 まず、ポーションの味を薬効を損なわない程度に、冒険者組合ギルドから提供された花の蜜を加えて、軽く味を甘くしておく。
 まぁ、焼け石に水なくらいで、やらないよりかはマシ程度。
 そしてここに、風属性の魔術で二酸化炭素----シュワシュワとハジける泡を加えておく。

 シュワシュワとハジける泡----そう、炭酸である。

 私はポーションに泡を発生させて、炭酸飲料化しているのだ。
 味で大きな差が出ないとは言っても、炭酸かそうでないかは、味に大きな差が出るといっても良い。
 ポーションの審査なので、どうしても、同じような味の審査になりがちだろうし、こういった、ちょっとした工夫でもあれば、印象が良くなると思うし。

「そして、この炭酸を逃がさないように、ビー玉で蓋をして、っと」

 私はそう言いながら、錬金でビー玉を作り出した蓋をする。

 ----そして、完成っ!

 私渾身の、お子様向けポーション!
 その名も、炭酸入りポーション、ラムネ瓶!

「これで優勝、目指すぞ~!!」

 そして私は、時間内に20個のポーションを完成させ、提出するのであった。
 いや、かなりギリギリだったみたいで、私が最後だったみたいだけど、間に合ったから良かった。良かった。



 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆



 ----彼女の名前はメキス。第8回『錬金術師大会』の決勝に挑む、ただの錬金術師。

 いま現在、メキスはこの大会に優勝すべく、ポーション作りにまい進していた。
 『錬金術師大会』には既に3回も優勝しているけれども、この第8回大会は絶対に優勝したいと、いつも以上に思っていた。

 何故なら----今回なら、全力で戦えると思ったからだ。

 メキスが大会に参加していた理由は、業界の広さを知るため。
 錬金術師としての自分の実力がどれくらいなのか、他に優秀な錬金術師が居れば教えを請うための交流の場として、参加していたようなモノ。

 しかしながら、それは叶わなかった。
 何故なら、今までの大会は、めちゃくちゃショボかったから。

 錬金術師の大会が他にないから参加していたけれども、そもそも私が参加してないからって、薬師が優勝候補筆頭になるような大会の、どこが凄いと言えるのか。
 だから前大会優勝者である薬師のチアンに引導を渡して、大会4回優勝を持って、この大会からは身を引くつもりだった。

 ----しかし、この第8回大会はレベルが段違いだった。

 特に、冬ブロックに割り当てられていたススリアという錬金術師。
 きっかけこそ、大会出場できるかの検査で気になったからという事だが、彼女を知れば知るほど、その錬金術の凄さに憧れた。
 配信のアーカイブで見た彼女の手際の良さに、メキスは惚れこんでいた。


 ----だから、このポーション作りという決勝のお題も、彼女は真剣に取り込んでいる。


 ススリアの凄さは、メキスも良く知っている。
 だからこそ、あのススリアとどれだけの差があるのか、それを知っておきたいのだ。

「----頑張りますよ、私」


 ----彼女はメキス。錬金術師として格上の相手に挑もうとする、ただの錬金術師。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

俺の召喚獣だけレベルアップする

摂政
ファンタジー
【第10章、始動!!】ダンジョンが現れた、現代社会のお話 主人公の冴島渉は、友人の誘いに乗って、冒険者登録を行った しかし、彼が神から与えられたのは、一生レベルアップしない召喚獣を用いて戦う【召喚士】という力だった それでも、渉は召喚獣を使って、見事、ダンジョンのボスを撃破する そして、彼が得たのは----召喚獣をレベルアップさせる能力だった この世界で唯一、召喚獣をレベルアップさせられる渉 神から与えられた制約で、人間とパーティーを組めない彼は、誰にも知られることがないまま、どんどん強くなっていく…… ※召喚獣や魔物などについて、『おーぷん2ちゃんねる:にゅー速VIP』にて『おーぷん民でまじめにファンタジー世界を作ろう』で作られた世界観……というか、モンスターを一部使用して書きました!! 内容を纏めたwikiもありますので、お暇な時に一読していただければ更に楽しめるかもしれません? https://www65.atwiki.jp/opfan/pages/1.html

長女は家族を養いたい! ~凍死から始まるお仕事冒険記~

灰色サレナ
ファンタジー
とある片田舎で貧困の末に殺された3きょうだい。 その3人が目覚めた先は日本語が通じてしまうのに魔物はいるわ魔法はあるわのファンタジー世界……そこで出会った首が取れるおねーさん事、アンドロイドのエキドナ・アルカーノと共に大陸で一番大きい鍛冶国家ウェイランドへ向かう。 魔物が生息する世界で生き抜こうと弥生は真司と文香を護るためギルドへと就職、エキドナもまた家族を探すという目的のために弥生と生活を共にしていた。 首尾よく仕事と家、仲間を得た弥生は別世界での生活に慣れていく、そんな中ウェイランド王城での見学イベントで不思議な男性に狙われてしまう。 訳も分からぬまま再び死ぬかと思われた時、新たな来訪者『神楽洞爺』に命を救われた。 そしてひょんなことからこの世界に実の両親が生存していることを知り、弥生は妹と弟を守りつつ、生活向上に全力で遊んでみたり、合流するために路銀稼ぎや体力づくり、なし崩し的に侵略者の撃退に奮闘する。 座敷童や女郎蜘蛛、古代の優しき竜。 全ての家族と仲間が集まる時、物語の始まりである弥生が選んだ道がこの世界の始まりでもあった。 ほのぼののんびり、時たまハードな弥生の家族探しの物語

虐げられた武闘派伯爵令嬢は辺境伯と憧れのスローライフ目指して魔獣狩りに勤しみます!~実家から追放されましたが、今最高に幸せです!~

雲井咲穂(くもいさほ)
ファンタジー
「戦う」伯爵令嬢はお好きですか――? 私は、継母が作った借金のせいで、売られる形でこれから辺境伯に嫁ぐことになったそうです。 「お前の居場所なんてない」と継母に実家を追放された伯爵令嬢コーデリア。 多額の借金の肩代わりをしてくれた「魔獣」と怖れられている辺境伯カイルに身売り同然で嫁ぐことに。実母の死、実父の病によって継母と義妹に虐げられて育った彼女には、とある秘密があった。 そんなコーデリアに待ち受けていたのは、聖女に見捨てられた荒廃した領地と魔獣の脅威、そして最凶と恐れられる夫との悲惨な生活――、ではなく。 「今日もひと狩り行こうぜ」的なノリで親しく話しかけてくる朗らかな領民と、彼らに慕われるたくましくも心優しい「旦那様」で?? ――義母が放置してくれたおかげで伸び伸びこっそりひっそり、自分で剣と魔法の腕を磨いていてよかったです。 騎士団も唸る腕前を見せる「武闘派」伯爵元令嬢は、辺境伯夫人として、夫婦二人で仲良く楽しく魔獣を狩りながら領地開拓!今日も楽しく脅威を退けながら、スローライフをまったり楽しみま…す? ーーーーーーーーーーーー 1/13 HOT 42位 ありがとうございました!

なろう370000PV感謝! 遍歴の雇われ勇者は日々旅にして旅を住処とす

大森天呑
ファンタジー
〜 報酬は未定・リスクは不明? のんきな雇われ勇者は旅の日々を送る 〜 魔獣や魔物を討伐する専門のハンター『破邪』として遍歴修行の旅を続けていた青年、ライノ・クライスは、ある日ふたりの大精霊と出会った。 大精霊は、この世界を支える力の源泉であり、止まること無く世界を巡り続けている『魔力の奔流』が徐々に乱れつつあることを彼に教え、同時に、そのバランスを補正すべく『勇者』の役割を請け負うよう求める。 それも破邪の役目の延長と考え、気軽に『勇者の仕事』を引き受けたライノは、エルフの少女として顕現した大精霊の一人と共に魔力の乱れの原因を辿って旅を続けていくうちに、そこに思いも寄らぬ背景が潜んでいることに気づく・・・ ひょんなことから勇者になった青年の、ちょっと冒険っぽい旅の日々。 < 小説家になろう・カクヨム・エブリスタでも同名義、同タイトルで連載中です >

おっさん料理人と押しかけ弟子達のまったり田舎ライフ

双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
真面目だけが取り柄の料理人、本宝治洋一。 彼は能力の低さから不当な労働を強いられていた。 そんな彼を救い出してくれたのが友人の藤本要。 洋一は要と一緒に現代ダンジョンで気ままなセカンドライフを始めたのだが……気がつけば森の中。 さっきまで一緒に居た要の行方も知れず、洋一は途方に暮れた……のも束の間。腹が減っては戦はできぬ。 持ち前のサバイバル能力で見敵必殺! 赤い毛皮の大きなクマを非常食に、洋一はいつもの要領で食事の準備を始めたのだった。 そこで見慣れぬ騎士姿の少女を助けたことから洋一は面倒ごとに巻き込まれていく事になる。 人々との出会い。 そして貴族や平民との格差社会。 ファンタジーな世界観に飛び交う魔法。 牙を剥く魔獣を美味しく料理して食べる男とその弟子達の田舎での生活。 うるさい権力者達とは争わず、田舎でのんびりとした時間を過ごしたい! そんな人のための物語。 5/6_18:00完結!

完)まあ!これが噂の婚約破棄ですのね!

オリハルコン陸
ファンタジー
王子が公衆の面前で婚約破棄をしました。しかし、その場に居合わせた他国の皇女に主導権を奪われてしまいました。 さあ、どうなる?

魔法仕掛けのルーナ

好永アカネ
ファンタジー
女性を模して作られた美しいゴーレム、ルーナ。 これは彼女に関わった人間たちの紡ぐ物語。 (この作品はマグネット!、アルファポリス、ノベルバ、エブリスタ、noteで公開しています)

魔法のせいだからって許せるわけがない

ユウユウ
ファンタジー
 私は魅了魔法にかけられ、婚約者を裏切って、婚約破棄を宣言してしまった。同じように魔法にかけられても婚約者を強く愛していた者は魔法に抵抗したらしい。  すべてが明るみになり、魅了がとけた私は婚約者に謝罪してやり直そうと懇願したが、彼女はけして私を許さなかった。

処理中です...