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第43話 カーラ法王の、いつもとは違う日常配信

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 教会の総本山----【霊峰オリンポシア】。
 一部の、高い地位にいる者にしか教えられていない教会の総本山では、都会の喧騒とはまるで縁遠い、穏やかな時間が流れていた。



 教会の頂点トップである法皇【カーラ・スパイシィ】の朝は、朝日を浴び、ゆっくり伸びをする事に始まる。
 銀色の髪が太陽の光を浴びてキラキラと光り輝き、今日も健康に1日の始まりを迎えられたことを、彼女は神に感謝する。

「うっ、うーんっ! 今日も気持ちの良い朝です」

 研鑽の神アカデミア様を祀る教会、そのトップにしてエルフである、カーラ法皇。
 御年1000歳越えでありながら、長命種であるエルフであるが故に、まだまだ子供にしか見えないくらい若々しい彼女は、法皇としての職務を果たすべく、今日も今日とて健康になるための行動を心がけていた。

 彼女がそこまで健康にこだわるのは、それが法皇である、彼女の職務の1つだからだ。
 彼女は、神聖術『御神託』が使える唯一の人物であり、彼女のこの神聖術だけが、教会に神のお言葉を直接届けることが出来る唯一の手段だからだ。

 『御神託』は、術者本人の身体を神に貸し与える事で、神様をこの世に短時間ながらも呼び出すことが出来る高等神聖術。
 しかしながら、術者本人は神様をこの世界に留めるための身体を貸すため、身体に多大なる負荷をかける。

 具体的に言えば、筋肉痛を一年分くらい。

 そのため、普段から健康である事を心がけているカーラ法皇。
 今日は朝から体調も非常に良く、天気も良い。
 
「よし、出来そう! 久しぶりに『御神託』にて、神様のご意向を皆にお教えせねば!」

 そう思った、その時である。


『『法皇よ、それから霊峰オリンポシアに集いし教会の者達よ。我らが前に、姿を現したまえ』』


 彼女は、途轍とてつもないほどの、清らかなる者の気配を感じた。

「----っ! これは、神様の気配?!」

 その気配にいち早く、神の気を感じたのは、他ならぬカーラ法皇自身であった。
 神に身体を貸し与える際、多大なる神が持つ気―――神気を浴びている彼女は、これが神の降臨である事はすぐさま分かった。
 急いで気の発生源に向かう中、同じように発生地へと向かう信徒達と出会う。

「----?! カーラ法皇が、何故こちらに?!」
「あの神気は、カーラ法皇ではなかったのですか?!」
「いったい、今の声は誰だというのです?!」

 信徒達は、驚いていた。
 なにせ、いつもカーラ法皇が『御神託』を使った際に感じる神の気配を感じたため、てっきりカーラ法皇がその気配の発生源だと思っていたからだ。
 まさか自分達と同じように、発生源に向かっているだなんて、思ってもしなかった。

「……分かりません。ですが、神様の気である事は確かです。恐らくは、私と同じように『御神託』を使えるようになった信徒が、神に身体を貸して現れたモノかと」

「ならば、すぐさま向かわないといけませんね!」
「新たな法皇候補の誕生をお祝いせねば!」
「『御神託』は短時間しか持ちません! カーラ法皇も、お早く!」

 すっかり祝いモードの信徒達と共に、自身としても自分と同じように『御神託』を使えるほど信仰心厚い信徒が現れた事を嬉しく思いながら、向かって行く。

「(この総本山に来たという事は、ここに来たことがある方なのでしょう。さて、では早速向かわなくては!)」

 大急ぎで、カーラ法皇と皆は神気の発生地である、教会の玄関へと向かって行き----


『はじめまして、カーラ法皇。我が名はサラダ、神の代弁者たる天使だ』
『同じくはじめまして、カーラ法皇。我が名はラード、神聖術『天使降臨』によって呼び出されし天使だ』


 そこには、カーラ法皇すら扱うことが出来ない神聖術『天使降臨』を使って、呼び出された2人の天使が居た。

 直接、神に仕える天使という存在。
 なによりも、その神々しい雰囲気に、一部の信徒達は神々しさを受け止めきれず、その場で拝んだまま気を失ってしまっていた。

 この場で正気を保ってられたのは、常日頃から神様をその身に宿すことで神気による耐性が他の信徒よりも高かったカーラ法皇。
 そして、他ならぬ『天使降臨』によって、この現世に天使を呼び出した当人である聖職者。

「カーラ法皇様、今日はお話があってまいりました」
「あなたは……タメリックさん、でしたか」

 自らの10分の1も生きていない、聖職者タメリックの登場。
 そんな彼女が、自分よりも高等な神聖術を使えるという事態。

「ではタメリックさん、今日はどういう目的でこちらに天使と共に来られたんですか?」
「えぇ、今日はある提案をするために、こちらに来させていただきました」

 なんの提案をしに来たんだろう、とカーラ法皇が思っていると、聖職者タメリックは1つの提案をしてきた。


「私は、教会全体でのリモート会議配信を行うべく、参りました!
 ----どうか、カーラ法皇様! 教会全体でのリモート会議配信をさせていただきたく思います!」

『えぇ、神様からもそう進めるよう、伺っております』
『教会のカーラ法皇だけではなく、大司教クラスの者は全員出席で、行うよう伺っております』


 こうして、カーラ法皇は訳が分からぬまま、リモート会議配信というのをする事となった。
 神の使いである天使が、提案してきた以上、神に仕える教会のカーラ法皇としては従わざるを得なかった。

「……でも、なんで配信?」

 ただ、そう疑問符を浮かべる事しか、彼女には許されていなかったのだから。
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