41 / 91
第41話 配信は決して娯楽だけじゃない配信
しおりを挟む
----リモート会議。
配信はどんなに距離を越えても、ほとんど時間的なラグなく、映像を届けることが出来る。
そんな配信技術を用いて、離れた距離にいる相手と会議することがリモート会議であり、スコティッシュさんと頻繁にやっているドラスト商会との契約内容を確認しているコラボ配信も、リモート会議の一種である。
今回、教会の人達に提案しているのは、そんなリモート会議をしようという事である。
会議内容は『研鑽の神アカデミア様は存在しているのか否か』、そして『そもそも研鑽の神アカデミア様とはなんなのか』。
教会の人達は私と話したいだけなのだから、総本山に集まるよりも、こうやって配信で話す方がよっぽど自然と言えよう。
「という訳で、どう? リモート会議配信だったら、私は何の問題もないんだけど」
「はい、これ」と、以前に作っておいた10個くらいの配信用キットを、タメリックに渡す私。
そのまま落とすという事は流石にしなかったが、明らかにタメリックは、嫌そうに配信キットを持っていた。
「配信で、ですか……?」
ガタガタと怯えながら、私にそう聞くタメリック。
その反応を見て、私は予想通りだなと思いつつ、頷いた。
教会に仕える聖職者としては、配信に嫌悪感を持つのは自然な反応である。
彼らにとって配信とは、娯楽を愛する魔王ユギーに繋がる監視対象物であり、自分達の方からその監視対象である配信をするという考えには至らないだろう。
「(だからこそ、これで教会とも縁が切れるというモノだ)」
私は別に、教会に対して、『研鑽の神アカデミア様についてどう思っているか』を話す義務はない。
私の意見はあの時、タメリックに言ったし、もしそれ以上に話したいのなら、自分達のホームである総本山ではなく、あなた達にとってはアウェーである配信内で語れば良いのだ。
「そもそも、なんで配信を毛嫌いするのか分からないよ、私には。色々と連絡もすぐに出来るし、便利でしょうに」
「だって、配信は娯楽だし……」
「『配信は娯楽である』という偏見から入っているから、そういう考えは良くないよ」
配信は、確かに娯楽という側面があるのは事実だ。
だがしかし、配信は娯楽だけではない。
「えーっと、確かここら辺に……あぁ、これこれ」
私は彼女に渡した配信キットの1つを操作して、とある配信を探す。
お目当ての配信を探し出すと、彼女にどうぞと、見せるようにして渡す。
「これは……『はじめての園芸』?」
「園芸初心者でも簡単に出来る知識を教えてくれる、教育系配信者ですね。彼女の配信の登録者数は私よりも上で、多くの人達が彼女の配信を見て園芸を学んでますよ」
彼女に見せたのは、園芸を教えてくれる配信者の中でも、かなり分かりやすい事で有名な配信者『がでりん』さんの動画である。
1つ1つ分かりやすい説明、初心者が陥りがちな失敗、種選びや植え方などを分かりやすく紹介してくれており、百合営業なんかで伸びた私よりも、はるかに多い視聴者を持つ有名配信者さんだ。
『がでりん』さんのような配信者を、私は教育系配信者と呼んでいる。
自分達の知識を分かりやすく紹介して、動画にしてみんなに教えている配信者さん達。
『新しくこれを始めたいけど、どこから始めれば良いか分からない』という初心者さんに大人気で、『がでりん』さん以外にも多くの分野で、教育系配信をしている人は大勢いる。
「確かに配信には娯楽の面もある。しかし、この配信者さんのように、教師のように教えてくれる配信動画だってあるんですよ」
そう、配信は何も娯楽だけではなく、『がでりん』さんのように皆を教えたいという想いで配信している配信者さんだっている。
『配信=魔王ユギーに繋がる娯楽』として、色眼鏡で見ているから、こういった活動もあるって事が分からないんですよ。
教会にとっては、研鑽し続ける事が正義みたいな見方をしているみたいだけど、私からして見たらそんな事はない。
研鑽も、ちゃんと正しい方法を知ってやった方が早く上達するに決まっている。
その方法の1つとして、配信を活用するというのは、決して悪い事ではないはずなのだ。
「その配信キットは差し上げます。もし、その動画を見ても、『配信だから娯楽』なんて判断が下せるんでしたら、この家から出て行ってくださいね」
私はそう言って、ベータちゃんのご飯が待つ食堂へと入って行く。
食堂に着くなり、ベータちゃんは配膳をしながら、
「あれで、教会が変わってくれると良いですね。マスター」
と、そう言ってくれる。
なるほど、ベータちゃんが彼女を家に迎え入れたのは、教会が変わってくれるのを期待して、か。
教会が変わってくれれば、私は教会を嫌いではなくなるという寸法ね。
「マスターの好き嫌いをなくす。それもまた、ベータちゃんの使命なんです」
「……食べ物の好き嫌いと、同じ扱いで直そうとしてる? ベータちゃん?」
あとで少し、ベータちゃんの設定を見直そうと思う私なのだった。
配信はどんなに距離を越えても、ほとんど時間的なラグなく、映像を届けることが出来る。
そんな配信技術を用いて、離れた距離にいる相手と会議することがリモート会議であり、スコティッシュさんと頻繁にやっているドラスト商会との契約内容を確認しているコラボ配信も、リモート会議の一種である。
今回、教会の人達に提案しているのは、そんなリモート会議をしようという事である。
会議内容は『研鑽の神アカデミア様は存在しているのか否か』、そして『そもそも研鑽の神アカデミア様とはなんなのか』。
教会の人達は私と話したいだけなのだから、総本山に集まるよりも、こうやって配信で話す方がよっぽど自然と言えよう。
「という訳で、どう? リモート会議配信だったら、私は何の問題もないんだけど」
「はい、これ」と、以前に作っておいた10個くらいの配信用キットを、タメリックに渡す私。
そのまま落とすという事は流石にしなかったが、明らかにタメリックは、嫌そうに配信キットを持っていた。
「配信で、ですか……?」
ガタガタと怯えながら、私にそう聞くタメリック。
その反応を見て、私は予想通りだなと思いつつ、頷いた。
教会に仕える聖職者としては、配信に嫌悪感を持つのは自然な反応である。
彼らにとって配信とは、娯楽を愛する魔王ユギーに繋がる監視対象物であり、自分達の方からその監視対象である配信をするという考えには至らないだろう。
「(だからこそ、これで教会とも縁が切れるというモノだ)」
私は別に、教会に対して、『研鑽の神アカデミア様についてどう思っているか』を話す義務はない。
私の意見はあの時、タメリックに言ったし、もしそれ以上に話したいのなら、自分達のホームである総本山ではなく、あなた達にとってはアウェーである配信内で語れば良いのだ。
「そもそも、なんで配信を毛嫌いするのか分からないよ、私には。色々と連絡もすぐに出来るし、便利でしょうに」
「だって、配信は娯楽だし……」
「『配信は娯楽である』という偏見から入っているから、そういう考えは良くないよ」
配信は、確かに娯楽という側面があるのは事実だ。
だがしかし、配信は娯楽だけではない。
「えーっと、確かここら辺に……あぁ、これこれ」
私は彼女に渡した配信キットの1つを操作して、とある配信を探す。
お目当ての配信を探し出すと、彼女にどうぞと、見せるようにして渡す。
「これは……『はじめての園芸』?」
「園芸初心者でも簡単に出来る知識を教えてくれる、教育系配信者ですね。彼女の配信の登録者数は私よりも上で、多くの人達が彼女の配信を見て園芸を学んでますよ」
彼女に見せたのは、園芸を教えてくれる配信者の中でも、かなり分かりやすい事で有名な配信者『がでりん』さんの動画である。
1つ1つ分かりやすい説明、初心者が陥りがちな失敗、種選びや植え方などを分かりやすく紹介してくれており、百合営業なんかで伸びた私よりも、はるかに多い視聴者を持つ有名配信者さんだ。
『がでりん』さんのような配信者を、私は教育系配信者と呼んでいる。
自分達の知識を分かりやすく紹介して、動画にしてみんなに教えている配信者さん達。
『新しくこれを始めたいけど、どこから始めれば良いか分からない』という初心者さんに大人気で、『がでりん』さん以外にも多くの分野で、教育系配信をしている人は大勢いる。
「確かに配信には娯楽の面もある。しかし、この配信者さんのように、教師のように教えてくれる配信動画だってあるんですよ」
そう、配信は何も娯楽だけではなく、『がでりん』さんのように皆を教えたいという想いで配信している配信者さんだっている。
『配信=魔王ユギーに繋がる娯楽』として、色眼鏡で見ているから、こういった活動もあるって事が分からないんですよ。
教会にとっては、研鑽し続ける事が正義みたいな見方をしているみたいだけど、私からして見たらそんな事はない。
研鑽も、ちゃんと正しい方法を知ってやった方が早く上達するに決まっている。
その方法の1つとして、配信を活用するというのは、決して悪い事ではないはずなのだ。
「その配信キットは差し上げます。もし、その動画を見ても、『配信だから娯楽』なんて判断が下せるんでしたら、この家から出て行ってくださいね」
私はそう言って、ベータちゃんのご飯が待つ食堂へと入って行く。
食堂に着くなり、ベータちゃんは配膳をしながら、
「あれで、教会が変わってくれると良いですね。マスター」
と、そう言ってくれる。
なるほど、ベータちゃんが彼女を家に迎え入れたのは、教会が変わってくれるのを期待して、か。
教会が変わってくれれば、私は教会を嫌いではなくなるという寸法ね。
「マスターの好き嫌いをなくす。それもまた、ベータちゃんの使命なんです」
「……食べ物の好き嫌いと、同じ扱いで直そうとしてる? ベータちゃん?」
あとで少し、ベータちゃんの設定を見直そうと思う私なのだった。
0
お気に入りに追加
54
あなたにおすすめの小説
辻ダンジョン掃除が趣味の底辺社畜、迷惑配信者が汚したダンジョンを掃除していたらうっかり美少女アイドルの配信に映り込み神バズりしてしまう
なっくる
ファンタジー
ダンジョン攻略配信が定着した日本、迷惑配信者が世間を騒がせていた。主人公タクミはダンジョン配信視聴とダンジョン掃除が趣味の社畜。
だが美少女アイドルダンジョン配信者の生配信に映り込んだことで、彼の運命は大きく変わる。実はレアだったお掃除スキルと人間性をダンジョン庁に評価され、美少女アイドルと共にダンジョンのイメージキャラクターに抜擢される。自身を慕ってくれる美少女JKとの楽しい毎日。そして超進化したお掃除スキルで迷惑配信者を懲らしめたことで、彼女と共にダンジョン界屈指の人気者になっていく。
バラ色人生を送るタクミだが……迷惑配信者の背後に潜む陰謀がタクミたちに襲い掛かるのだった。
※他サイトでも掲載しています
最強のコミュ障探索者、Sランクモンスターから美少女配信者を助けてバズりたおす~でも人前で喋るとか無理なのでコラボ配信は断固お断りします!~
尾藤みそぎ
ファンタジー
陰キャのコミュ障女子高生、灰戸亜紀は人見知りが過ぎるあまりソロでのダンジョン探索をライフワークにしている変わり者。そんな彼女は、ダンジョンの出現に呼応して「プライムアビリティ」に覚醒した希少な特級探索者の1人でもあった。
ある日、亜紀はダンジョンの中層に突如現れたSランクモンスターのサラマンドラに襲われている探索者と遭遇する。
亜紀は人助けと思って、サラマンドラを一撃で撃破し探索者を救出。
ところが、襲われていたのは探索者兼インフルエンサーとして知られる水無瀬しずくで。しかも、救出の様子はすべて生配信されてしまっていた!?
そして配信された動画がバズりまくる中、偶然にも同じ学校の生徒だった水無瀬しずくがお礼に現れたことで、亜紀は瞬く間に身バレしてしまう。
さらには、ダンジョン管理局に目をつけられて依頼が舞い込んだり、水無瀬しずくからコラボ配信を持ちかけられたり。
コミュ障を極めてひっそりと生活していた亜紀の日常はガラリと様相を変えて行く!
はたして表舞台に立たされてしまった亜紀は安らぎのぼっちライフを守り抜くことができるのか!?
【祝・追放100回記念】自分を追放した奴らのスキルを全部使えるようになりました!
高見南純平
ファンタジー
最弱ヒーラーのララクは、ついに冒険者パーティーを100回も追放されてしまう。しかし、そこで条件を満たしたことによって新スキルが覚醒!そのスキル内容は【今まで追放してきた冒険者のスキルを使えるようになる】というとんでもスキルだった!
ララクは、他人のスキルを組み合わせて超万能最強冒険者へと成り上がっていく!
ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い
平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。
ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。
かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。
王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します
有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。
妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。
さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。
そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。
そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。
現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
おっさん料理人と押しかけ弟子達のまったり田舎ライフ
双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
真面目だけが取り柄の料理人、本宝治洋一。
彼は能力の低さから不当な労働を強いられていた。
そんな彼を救い出してくれたのが友人の藤本要。
洋一は要と一緒に現代ダンジョンで気ままなセカンドライフを始めたのだが……気がつけば森の中。
さっきまで一緒に居た要の行方も知れず、洋一は途方に暮れた……のも束の間。腹が減っては戦はできぬ。
持ち前のサバイバル能力で見敵必殺!
赤い毛皮の大きなクマを非常食に、洋一はいつもの要領で食事の準備を始めたのだった。
そこで見慣れぬ騎士姿の少女を助けたことから洋一は面倒ごとに巻き込まれていく事になる。
人々との出会い。
そして貴族や平民との格差社会。
ファンタジーな世界観に飛び交う魔法。
牙を剥く魔獣を美味しく料理して食べる男とその弟子達の田舎での生活。
うるさい権力者達とは争わず、田舎でのんびりとした時間を過ごしたい!
そんな人のための物語。
5/6_18:00完結!
【完結】小さなフェンリルを拾ったので、脱サラして配信者になります~強さも可愛さも無双するモフモフがバズりまくってます。目指せスローライフ!〜
むらくも航
ファンタジー
ブラック企業で働き、心身が疲労している『低目野やすひろ』。彼は苦痛の日々に、とにかく“癒し”を求めていた。
そんな時、やすひろは深夜の夜道で小犬のような魔物を見つける。これが求めていた癒しだと思った彼は、小犬を飼うことを決めたのだが、実は小犬の正体は伝説の魔物『フェンリル』だったらしい。
それをきっかけに、エリートの友達に誘われ配信者を始めるやすひろ。結果、強さでも無双、可愛さでも無双するフェンリルは瞬く間にバズっていき、やすひろはある決断をして……?
のんびりほのぼのとした現代スローライフです。
他サイトにも掲載中。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる