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10.魔王に釣られた私

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やはりどの世界にもある入学式。
保健室に美少女を送り届けた関係で、少し出遅れ人通りが少なくなっている廊下を通り大ホールに向かう。

ちなみに私が使える魔法は風魔法。魔法の属性は火、風、水、光、闇があって、人間は魔法が使える使えないというハードルがまずあるが、保有していても基本、火、風、水のどれかである。光は滅多にいないがいることもある。それに対して闇は人間は保有できない。そして光のさらにその先に聖魔法という領域があり、光保有者の中でその気質があるものは聖魔法を取得できると言われている。
だがそれも700年前の結界を張った聖魔法使い以来現れていない。


私は風魔法を使って、大勢の声が集まる方地点を特定して、向かっている。私は魔力は大きくはないが、細かいコントロールは得意なので、風で音を拾うということができる。


『誰か助けて・・・助けて・・・』
え?なにこの声・・・
風に乗って聞こえてる・・のよね?頭に直接流れてる気もするけど・・・
確かに誰か助けを求めてる声は聞こえる。

女性の声のようだ。周りに先生や人は・・・いない。
1人で助けられないにしてもまずは場所の特定と状況判断は早めにすべきよね。

と、私は声が聞こえる方に向かった。

なんかこう、近づくほどに悪寒がする・・・
『早く・・助けて・・』

さほど遠くない距離にあった教室だ。日本の教室みたいに外に窓がないから見えないわね・・・入るしかない。

カチャ・・・そうっと顔を入れて見てみる。
と!
その距離5センチ未満!のところに人の顔面!!!
「き!」キャーと叫ぼうとしたら口に指を当てられ声が出なくなった。

え!なに!助け求めてたのこの人?!男ですよね!

「叫んじゃだめだよー⭐︎こんなに稚拙な罠にかかるなんておバカだね。」

罠?!ってことはこの人私を誘き寄せるために?まさか誘拐犯?けどそしたらなぜ私を・・・

というか、この人、黒髪だわ・・人間では見たことない・・そして真紅の瞳。魔族?でもそんなまさか・・・
そして怖いくらいに顔が整っているのと、口角だけあがって目は死んでる表情がまた不気味だ。これはいわゆる『絶対ヤバい人』だわ・・・

「少し話したいから、話せるようにするけど、叫んだら殺しちゃうからね。いい子にできる?」


怖がったりしてはダメ。話が通じないとなると本当に殺されるだろう。

うんうん と私は頷く。

男は姿勢を正し部屋の中に私を誘導する。
わざわざ屈んでて私とゼロ距離だったのね・・180は余裕である体躯で服装は全身真っ黒。シンプルな格好だがこの男に似合いすぎている。

誘導されるまま部屋に入ると、口の引っかかりがなくなった。魔法だったのね。相手の行動をコントロールしたりできるのって・・・闇魔法ね。魔族確定!!
特級のヤバ案件確定です!

こういう時に感情的になって相手を刺激するのはよくない。淡々とだ。

「目的は誘拐ですか?身代金でしたら期待できませんよ。」


「くく。君怖がらないんだ。いいね。
金銭なんて必要ない。ただ楽しそうだからだよ。ねぇ、君は何者?」

「平凡な子爵家の娘です。価値ある存在ではございません。」

「魂が二色なのはなんで?」

「へ?魂?」

「そう。魂。なんか複雑なことになってるみたいだけど。あーなんか美味しそう。」

ヤバいヤバいヤバい。
意味がわからない。

あ!もしかして前世の記憶を取り戻したから・・・?!平凡な私にとってイレギュラーなこととしてはそれだけだわ!
けどこちらの手の内を明かすのは得策ではないわ。

「すいません。心当たりがありません。」

「んーそっか。体を壊して魂が抜けた時に手に入れるかなー⭐︎」

ま・・まずい。殺す方向に向かい始めた。
こうなれば私の得意な交渉で・・・

「死人に口なしです。もし私が何か知っていてあえて答えていないとしたら?そこにあなたが求める楽しい秘密があるかもしれませんよ。」

黒男の目が少し動いた。

「俺に取引?いいね⭐︎けど話さないとこの場で殺すって俺が脅せば?」

「話しません。致し方ないです。」

「くく。君面白いかも。壊すのは惜しいね。じゃあ条件が?」

条件か・・安全の確保と、条件クリアしたという判断が難しいものにすべきね・・話したらその後すぐにっていうのもあり得そうだ。達成してないと言い張れるこちら都合の判断でいけるものを・・・

「では、2点。私とその身の回りの者に危害を加えないと制約を。そして、私と友達になること。」

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