78 / 81
波打ち際の幽かな戀 ー今なら素直に気持ちを伝えられるのに外伝ー
外伝―10 和歌
しおりを挟む
「もしかしてゆりさんって平安時代の人?」
「あらやだ、私そんなに老けて見られるのかしら?」
「いやいや、平安時代ってもう千年以上も前の話だよ。生きていたら驚きどころじゃないよ」
「……そうね」
初めてゆりさんの声に色が付いたような気がした。真っ青な、どこか冷たい影を落とすような声。
僕は軽い冗談がゆりさんを傷つけてしまったんじゃないかと思って、慌てて訂正に入った。
「冗談だから本気にしないでよ。その平安時代のことが好きなのかなって話に繋げようかなって」
「そこまで考えていたの? もしかして万次郎は菅原道真公の生まれ変わりなのかしら?」
「いやいや、どうしたらそこまで飛躍するのかな?」
羨望の眼差しを向けて言うゆりさんに、僕は苦笑で返した。
勉強自体は学年で十位台をキープできるくらいにはしているけれど、勉学の神様と比されるものでは到底ない。
しかし、ここでわざわざ平安時代の偉人の名を出してくるあたり、相当平安時代のことが好きなのだろうか?
「そうね。平安時代が好きと言うよりも、貴族文化が好きと言うのが正しいのかも」
「貴族文化って、お歯黒とか?」
「そうそう。あ、でも、私はしないわよ」
証拠のつもりなのだろうか、ゆりさんはにーと笑い白い歯を見せる。
疑っていたわけではないのに見せてくる姿が可愛らしくて、僕は笑みをこぼした。
「特に和歌が好きなの」
「和歌かー」
僕は頭の中で古典の授業を思い出す。
同じ日本語のはずなのに時代が違うだけでちんぷんかんぷん。置く意味の分からない言葉を理解するのは困難で、どの教科よりも覚えるのに苦労した記憶がある。
懇意にしている自称ひねくれものの友人にいたっては、脳内の回路がショートしたのだろう、堂々と机に突っ伏して寝る始末だ。
それ故、苦手意識はあるのだけれど。
「そうだ。和歌の話をしましょう」
「それがゆりさんの話したい事?」
「ええ」
「それなら、聞こうかな」
僕は少しの苦笑いと共にそう答えると、ゆりさんは両手を重ねて笑った。
「あらやだ、私そんなに老けて見られるのかしら?」
「いやいや、平安時代ってもう千年以上も前の話だよ。生きていたら驚きどころじゃないよ」
「……そうね」
初めてゆりさんの声に色が付いたような気がした。真っ青な、どこか冷たい影を落とすような声。
僕は軽い冗談がゆりさんを傷つけてしまったんじゃないかと思って、慌てて訂正に入った。
「冗談だから本気にしないでよ。その平安時代のことが好きなのかなって話に繋げようかなって」
「そこまで考えていたの? もしかして万次郎は菅原道真公の生まれ変わりなのかしら?」
「いやいや、どうしたらそこまで飛躍するのかな?」
羨望の眼差しを向けて言うゆりさんに、僕は苦笑で返した。
勉強自体は学年で十位台をキープできるくらいにはしているけれど、勉学の神様と比されるものでは到底ない。
しかし、ここでわざわざ平安時代の偉人の名を出してくるあたり、相当平安時代のことが好きなのだろうか?
「そうね。平安時代が好きと言うよりも、貴族文化が好きと言うのが正しいのかも」
「貴族文化って、お歯黒とか?」
「そうそう。あ、でも、私はしないわよ」
証拠のつもりなのだろうか、ゆりさんはにーと笑い白い歯を見せる。
疑っていたわけではないのに見せてくる姿が可愛らしくて、僕は笑みをこぼした。
「特に和歌が好きなの」
「和歌かー」
僕は頭の中で古典の授業を思い出す。
同じ日本語のはずなのに時代が違うだけでちんぷんかんぷん。置く意味の分からない言葉を理解するのは困難で、どの教科よりも覚えるのに苦労した記憶がある。
懇意にしている自称ひねくれものの友人にいたっては、脳内の回路がショートしたのだろう、堂々と机に突っ伏して寝る始末だ。
それ故、苦手意識はあるのだけれど。
「そうだ。和歌の話をしましょう」
「それがゆりさんの話したい事?」
「ええ」
「それなら、聞こうかな」
僕は少しの苦笑いと共にそう答えると、ゆりさんは両手を重ねて笑った。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
【R15】【第一作目完結】最強の妹・樹里の愛が僕に凄すぎる件
木村 サイダー
青春
中学時代のいじめをきっかけに非モテ・ボッチを決め込むようになった高校2年生・御堂雅樹。素人ながら地域や雑誌などを賑わすほどの美しさとスタイルを持ち、成績も優秀で運動神経も発達し、中でもケンカは負け知らずでめっぽう強く学内で男女問わずのモテモテの高校1年生の妹、御堂樹里。親元から離れ二人で学園の近くで同居・・・・というか樹里が雅樹をナチュラル召使的に扱っていたのだが、雅樹に好きな人が現れてから、樹里の心境に変化が起きて行く。雅樹の恋模様は?樹里とは本当に兄妹なのか?美しく解き放たれて、自由になれるというのは本当に良いことだけなのだろうか?
■場所 関西のとある地方都市
■登場人物
●御堂雅樹
本作の主人公。身長約百七十六センチと高めの細マッチョ。ボサボサ頭の目隠れ男子。趣味は釣りとエロゲー。スポーツは特にしないが妹と筋トレには励んでいる。
●御堂樹里
本作のヒロイン。身長百七十センチにIカップのバストを持ち、腹筋はエイトパックに分かれる絶世の美少女。芸能界からのスカウト多数。天性の格闘センスと身体能力でケンカ最強。強烈な人間不信&兄妹コンプレックス。素直ではなく、兄の前で自分はモテまくりアピールをしまくったり、わざと夜に出かけてヤキモチを焼かせている。今回新たな癖に目覚める。
●田中真理
雅樹の同級生で同じ特進科のクラス。肌質や髪の毛の性質のせいで不細工扱い。『オッペケペーズ』と呼ばれてスクールカースト最下層の女子三人組の一人。持っている素質は美人であると雅樹が見抜く。あまり思慮深くなく、先の先を読まないで行動してしまうところがある。
私たち、博麗学園おしがまクラブ(非公認)です! 〜特大膀胱JKたちのおしがま記録〜
赤髪命
青春
街のはずれ、最寄り駅からも少し離れたところにある私立高校、博麗学園。そのある新入生のクラスのお嬢様・高橋玲菜、清楚で真面目・内海栞、人懐っこいギャル・宮内愛海の3人には、膀胱が同年代の女子に比べて非常に大きいという特徴があった。
これは、そんな学校で普段はトイレにほとんど行かない彼女たちの爆尿おしがまの記録。
友情あり、恋愛あり、おしがまあり、そしておもらしもあり!? そんなおしがまクラブのドタバタ青春小説!
彼女に振られた俺の転生先が高校生だった。それはいいけどなんで元カノ達まで居るんだろう。
遊。
青春
主人公、三澄悠太35才。
彼女にフラれ、現実にうんざりしていた彼は、事故にあって転生。
……した先はまるで俺がこうだったら良かったと思っていた世界を絵に書いたような学生時代。
でも何故か俺をフッた筈の元カノ達も居て!?
もう恋愛したくないリベンジ主人公❌そんな主人公がどこか気になる元カノ、他多数のドタバタラブコメディー!
ちょっとずつちょっとずつの更新になります!(主に土日。)
略称はフラれろう(色とりどりのラブコメに精一杯の呪いを添えて、、笑)
学校の居心地
101の水輪
青春
世間でイメージされる学校像がある。それはみんな同じ格好をし、同じカリキュラムで受け、集団からはみ出さないことを意識した上で個性が求められる。そこにはあくまでも全体を優先する日本独自の学校感が、色濃く根付いてる。そんな既成観念をぶち壊す学校が現れた。ハチャメチャ感が満載で、個人を優先する点では、これまでの学校と比べられないほど異質に映る。101の水輪、第67話。なおこの作品の他に何を読むかは、101の水輪トリセツ(第77話と78話の間に掲載)でお探しください。
幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。
スタジオ.T
青春
幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。
そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。
ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。
俺を振った元カノがしつこく絡んでくる。
エース皇命
青春
〈未練たらたらな元カノ×エロ教師×超絶ブラコン姉さん〉
高校1年生の山吹秋空(やまぶき あきら)は、日曜日のデート後に彼女である長谷部千冬(はせべ ちふゆ)に別れを切り出される。
同棲してくれるなら別れないであげる、という強烈な条件に愛想を尽かし別れることを了承した秋空だったが、それからというもの、千冬のしつこい絡みが始まることになる……。
頭のおかしい美人教師と、秋空を溺愛する姉、秋空が千冬と別れたことで秋空を狙うクラスメイトの美少女たち。
クセの強い友達に囲まれる、秋空の苦悩に満ちた学校生活!
※小説家になろうにも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる