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本編
21ー義輝Sideー
しおりを挟む……時は少し遡る……
あの薬を飲み始めて30日くらい経った頃、微弱ではあるが、修兵のフェロモンに変化があった。恐らく俺にしか分からない程度の変化だ。
修兵は何も知らず、何も気づかず普通に生活を送っている。そして、今日も何の変化も感じていないような顔でテレビを見ながら欠伸をしている。
「眠そうだね」
「ん~…いや、何か最近この時間帯になってくるとすごーく眠たいんだよ。」
習慣付いたのかな…?なんて暢気に言っている。恐らく、薬の効果により身体が変化を起こし始めているので寝て負担を減らそうと本能が働いているのだろう。
そんな愚鈍なところも可愛くて好ましく思う…
「寝室に連れて行ってあげようか?寝ちゃう?」
「う~ん…」
覗き込むと先程よりも眠くなっているらしい修兵が俺へ両腕を伸ばしてくる。極度に眠くなり寝惚けると大体甘えてくるが、目覚めると覚えていない。
修兵を抱き上げると寝室へ連れて行く、空調の調整をすると、そのままベッドへ寝かせた。
布団を被せると暫く幼子がぐずるような仕草をしたが、丁度良い室温になり布団も丁度良くなったのかスヤスヤと寝息を立て始めた。
こうなると修兵は悪戯に触っても起きない。いや、起きかけはするが寝かしつけるようにしてやると直ぐにまた寝る。そして、ナニをされたかも分かっていない。
いろいろと検証してみたからまず間違いない。寝顔を眺めるとその顔を快楽に歪めたくなる。小柄な身体が性的な刺激により微かに戦慄く姿を目の当たりにして突っ込まなかった俺を褒めてほしいくらいだ…
『ふぅ…』と息を付き気持ちを落ち着かせると眠る修兵の頭を撫でて一度、部屋を出る。
すると、タイミングを見計らったかのように双子が現れた。白蓮は赤ちゃんの世話で自室に居る。
そして、口を揃えて開口一番こう言った…「鬼!悪魔!変態!」と…
睨むと一瞬、たじろぐが直ぐに持ち直した。その辺は流石だと思う。
「寝ている同居人にエッチな事して密かに愉しんでるとか変態でしょ!?」
「え、義輝!!もう挿れたの!?」
「五月蝿い。挿れてないから黙ってろ。」
「いやいやいや…そういう問題じゃないからね?分かってる?」
「義輝って執着丸出しだよね…重苦しい告白っぽい事はしたけど…返事もらってなくね?」
「返事なんて要らない。アレは俺のモノだから…」
そう言いながら双子を掴んでリビングへと押し込んだ。起きないとはいえ、寝室の前で騒がれて良い気はしない…万が一を考えてとった行動だ。
空気が変わったのを察したらしい双子は従う庇護鬼の顔になった。
「それで?ゴミの処理は?」
「元家族である母親は何らかの不幸が続き、借金地獄に落ちたのを確認しました。元実家の者たちは近所から『虚言を信じ、息子の言葉を信じず虐待をした最低家族』だと噂が広がり肩身の狭い思いをしているようです。」
「多額の借金があるため引っ越すことも出来ず周囲から非難の目を向けられていますね。母親は息子のお骨に縋り付いて泣いているようですね。」
「何だ…お墓は建てていないのか…」
「『愚息にかけるお金は無い』と庭に放置していたようですね。近所で武勇伝の如く語っていたらしいです。」
バカだバカ過ぎる。常識人ならばドン引きものだ…いくら人工的な偽物のお骨だったとしても、だ…供養くらいはできるだろうと3人で顔を顰めてしまった。
「なるほど…今更建てようにもお金が無いからできないと?」
「そのようです。被害者かのように泣き叫ぶ声があの家から聞こえてくるので近所の方々も辟易しているようですね。」
「そして、愚かな父親ですがー…最愛であるオメガの愛人がなぜか失踪してしまったようで、そのショックで廃人になりかけているみたいですね」
「何だ…壊れてなかったのか…意外としぶといな…」
という俺の台詞に双子の顔が呆れ顔になっていたが、構わず続ける。
「ふむ。残念だけど…手始めにちゃんとあのオメガを教育できなかった代償を払ってもらう事にしようか…その愛人に、な…」
そう言った瞬間に双子は顔を見合わせて、引きつった顔のまま俺に視線を戻した。
*
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