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本編
11ー義輝Sideー
しおりを挟む………時は少し遡る………
「義輝…お前、その子…」
傷だらけの子どもを抱えている俺をあ然として見ているのは庇護鬼である白蓮。その腕の中には強面の白蓮に似つかわしくない可愛い顔をした人間の赤ちゃんがガラガラを握って上機嫌に遊んでいる。
例えるならそうだな…ヤの付く職業の組長…もしくは若頭あたりが慣れない手付きで愛娘を抱っこしている何とも言えない絵面だ。
まぁ、赤ちゃんの性別は男の子だけど…
そして、そんな白蓮の後ろからハラハラと様子を覗っているのは同じく俺の庇護鬼の海斗と陽斗。
「あぁ、拾った。俺の所有地でぶっ倒れてた。」
素っ気なくそう答えると海斗と陽斗は顔を見合わせて口を開く。
「てっきり白蓮みたいに段ボールに入っていた子を拾ってきたのかと…」
「確かに白蓮は『貴方の子です』ってメモ付きで家の前に放置されてた赤ちゃんを拾ってきたね…人間で言うお人好しすぎて律儀に育ててるし…『俺にはもう、番も嫁も出来ないから』とか言って」
そう言って呆れ顔を浮かべる双子に焦ったような声を上げたのは白蓮だった。
「いや、まぁ…そうだけど…俺の事は良いんだよ!今はこの子!そうだろ!」
なんて言って賑やかにコントを繰り広げている。緊張感の欠片もないその雰囲気に『やれやれ』と力が抜けそうになる…
「そーだよ!その子だよ!義輝どうした?らしくないぞ。拾ってくるなんて」
「そーだ!そーだ!『ゴミが俺の所有地を汚していた』とか言ってサラっと処理しそうな感じなのに!」
「へぇ…俺って海斗と陽斗にそんな風に見られてたんだ。」
そう言って海斗と陽斗を見ると、臆する事なく失礼な事をガンガン言ってくる。
「裏では凄いじゃん義輝!間延びした口調とか一切ないし、一人称も『僕』じゃないし…両親や兄弟の前ですら猫被ってんじゃん!いつもの笑みで全て処理じゃん…」
「双子の兄である樹輝は堅物だって噂だし。双子の弟である義輝!お前は性格がアレだし…母親は優しいって噂だし…しかも、その上、年々可愛くなってるって聞いたことある。一度見てみたい…ん"ん"…何でもない。今のは聞かなかった事にして!まだ、殺されたくない!まぁ、最近は『神木』も近寄りやすくなったらしいけど…番が絡むとヤバいって有名だし…」
「『神木』のすっっっっっっごい威嚇で恐ろしくて近づけなかったぞ…アレは近寄りやすくなったと言って良いのか??隣に番が居たからそうだったのか?見れたとは言っても…短時間だし…それも、ほぼ一瞬だけだぞ…遠目で見た感じ、確かに小柄だったが…ガリガリだったし、不健康そうで顔色も悪かったように見えたな…恐すぎてガン見できる雰囲気じゃなかったけどな…じっくり見れなかったのが悔やまれる…可愛かったのか?」
「白蓮が見たのって強行された『お披露目』の時だったでしょ?そりゃ~今と比べたら変わってるでしょ?あの老害たちも最近、騒いでたよ~。相変わらず子柄ではあるけど…健康的になったし…何より『神木』の寵愛を受けているからか…年々可愛くなってるって。奴らに褒められても気持ち悪いだけだよね~」
「確かに気持ち悪いだけだし…消えれば良いのに…いや、寧ろ『神木』にボコられてしまえって感じだな…でも良いよな~泰虎も見たんだろ?良いな~義輝のお母さん見てみたかったな~。中層の鬼は呼ばれてなかったもんな~」
なんて言っている双子と白蓮に分かりやすく舌打ちをして、この3名を本格的にどうしてやろうかと考えている。
すると、赤ちゃんをあやしながら話に参加していた白蓮が何かに気づいたかのようにこの子を見て口を開いた。
「俺…この子なんか見たことあるような気がするぞ…」
その言葉に触発されたかのように双子がこの子を覗き込む。そしてじっくりと観察して分かったのか海斗が叫ぶように言ったあと続くように陽斗が口を開く。
「あー!義輝の初恋の相手!」
「ホントだ。言われてみれば面影あるわ~」
「でもっでもでも!この子ってベータでありながら義輝を裏切って劣等種のアルファと付き合ってたんだよねぇ!」
「その事を知った時の義輝の怒りは相当だったからー…」
「「ハッ…まさか、義輝の事だから傷めつけて攫ってきたんじゃ…」」
という息ぴったりのリアクションで俺を見る。
「そこまでするわけないだろ。まぁ、落とし前は何らかの形でしてもらうか考えた事もあったけど。」
肩を竦めてそう言うと白蓮がボソッと失礼な事を言ってきた。
「義輝…お前が言うと洒落になんねーわ。」
「本当にお前ら3人って失礼な奴らだよな…今更だけど…」
否定はしないけど、無遠慮なコイツらを見て溜め息が出たのは仕方ないと思う。
まぁ、俺の性格を唯一、知っており、その上で庇護鬼契約してきた物好きたちなんだけど…
*
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