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本編
03
しおりを挟む目覚めると身体に激痛が走った。あまりの痛さに身悶えていると呆れたような声が頭上から降ってくる。
「なーにやってんのさぁ…」
痛みが走らない程度の力加減で擦られつつ、男の言う通りにすると思いの外、早く痛みがマシになる…
「落ち着いた?薬が切れる頃だから仕方ないね~」
「っ…はぁ…ありがとうございます。ごめんなさい。」
微かに痛むから顔が痛みに歪むけれど、お礼は言っておいた。
「取り敢えず、軽く食べて薬、飲んでおこっか~」
そう言ってサイドテーブルを引っ張ると、食べやすいようにセッティングする。そして、その上に食事が並べられた。
箸の代わりにメロンスプーンが置かれている。ヒビが入っていない方の手で使えという事なのだろう…
消化に良さそうなバランスの良い食事にスプーンを差し込み掬い上げてそっと口の中へと運んだ。
凄く美味いソレに自然と口角が上がる。その様子を眺めていた男の人は俺に声をかけてきた。
「食事の片手間に聞いてくれて大丈夫だから、取り敢えず、話も聞いてくれる?」
「分かった」
そう言ったのを確認した男はさらに口を開く。そして、衝撃の一言を放った。
「その足、感覚ある?」
そう言って指を差したのは粉砕した方の足だった。その言葉に『はて?』となり、ご飯どころではなくなった俺は今一度その足へと触れてみる。
「あれ?なんで…」
「やっぱりね…そんな気はしてたんだ。傷を負った際に神経を傷つけちゃってるみたいでね。片足は今のままでは使いものにならないよ。車椅子生活になるね」
感覚の無い俺の足を撫でながら男はそう言って微笑んだ。笑い事ではない…そういう意味を込めて睨むと困ったような表情を浮かべる。
「怒っちゃった?ごめんね。車椅子はこちらで準備しといてあげるから心配いらないよ。それにー…」
という男に『まだ、あるのか!?』と見返す。すると続きを口にした。
「君は暫くここで生活する事になるからね~。勝手な行動はとれなくなるけど…暫く我慢してね。全てが終われば自由になれるから。君しだいだけど~」
そう言いながら紙の束を捲る。そして、1枚の紙を俺に差し出して爆弾を投下した。
「あぁ、後…コレ、君の新しい名前と本籍及び戸籍だよ。」
その言葉に手からスプーンが滑り落ちる。そして、呆けた顔のまま目の前の男を凝視した。
男はクスクス笑いながら軽い動作で落ちたスプーンをひょいと拾い上げると、目の前に新しいスプーンを差し出してきた。
半ば条件反射でソレを受け取っていた…
*
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