上 下
50 / 91
Main Story〜アルファな彼とオメガな僕。〜

48

しおりを挟む
 
 「そうか、お前は俺が・・怖いというわけではなく、自分以外の全てが怖い対象だったんだな…身辺調査とは言ってもお前自身の気持ちなんて調べられないし、本当に上辺だけの調査しかできない。」

 そう言いながら僕の背中を優しく撫でている崇陽の背中に腕を回してギュッと抱きしめると、安心して少し荒れていた心に平穏が戻ってくる…

 怖かったはずの崇陽が今の僕に安らぎを与えてくれている…雰囲気で圧倒される時も多々あるけど…それ以上に一緒に居たい。そう思えるようになっていた。

 知らぬ間に当たり前のように心の中に崇陽という存在があるという事を知り、ソレを認めると次に湧き出てくるのは『愛おしい』という感情だけだった…

 その思いに気づいた時…凄く恥ずかしくなり回している腕に力が入る。しかし、僕の力なんて崇陽には痛くも痒くもないらしく、寧ろ大丈夫だという風に頭をポンポンされた。

ー気づかれてない?…

 僕の心情に気づかれていないのをこれ幸いと自分の心を落ち着けるために頑張ったが、全く意に介さず、深呼吸をした時に崇陽から香る本当に少しのフェロモンを嗅ぎとった事で鼓動が早くなる。

 すると、崇陽の身体がピクリと反応し、少し身体を動かして僕の項へ鼻を近づけてきた。
 そのまま流れるような動きで『スンスン』と匂いを嗅いでくる。

 「甘いフェロモンの香りがする」

 そう言って顔を離すと僕の顎を優しく掴むとクイッと上げて崇陽の方を向かせられる。そして、僕の瞳を観察するように真剣な表情で見ている。
 その瞳を見ると、さらに鼓動が早くなる。

ー僕はどうなってしまったの!?…

 自覚をしただけでここまで・・・・になるのかと、動揺を隠せずにいると、崇陽が微かに目を見開く。

 「蒼…落ち着いて聞いてくれ」と真剣な表情で前置きをされた。途端に不安になったが…次の崇陽の台詞で拍子抜けした。

 「無自覚なのかは分からないが…フェロモンで俺を落としにきてるぞ…」

 なんてほんのり顔を赤らめて言ってくるので、恐らく僕が思っているよりも濃いフェロモンが出ているのだと思う。
 証拠に崇陽のフェロモンが発情した時と同じくらい甘くて濃いものに変わっている。
 しかし、崇陽はその・・フェロモンにも関わらず、表情はいつものものと変わらない。冷静そのものだ…

 自覚するまでならば気づいていなかったであろう変化だった。
 自覚した瞬間に全ての意識が崇陽に向き、一挙手一投足の全てを見逃すまいと目で追ってしまう。

 もっと、僕を見てほしい。求めてほしい。離れたくない。愛してほしい。
 そう強く思っている自分がいる。言い表すならばー…

 完全・・にこのアルファに落ちた。

 そういう事なんだろうと思う。自覚する前の僕だったらあり得ない…それくらいに心境の変化が凄すぎた…

 「蒼?どうしっ…」

 気づけば僕は崇陽の顔へ自分の顔を近づけていて…自らの意思で触れるだけのキスをしていた…

 
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

完結・虐げられオメガ側妃なので敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン溺愛王が甘やかしてくれました

美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!

花婿候補は冴えないαでした

BL
バース性がわからないまま育った凪咲は、20歳の年に待ちに待った判定を受けた。会社を経営する父の一人息子として育てられるなか結果はΩ。 父親を困らせることになってしまう。このまま親に従って、政略結婚を進めて行こうとするが、それでいいのかと自分の今後を考え始める。そして、偶然同じ部署にいた25歳の秘書の孝景と出会った。 本番なしなのもたまにはと思って書いてみました! ※pixivに同様の作品を掲載しています

運命には抗えない〜第二幕〜

みこと
BL
レオナルドと無事結婚したルーファスは久しぶりにリトに会いに行く。しかし訪れたグリーンレイクは普段と様子が違っていて…。 ルーファスたちがまたもや不思議な事件に巻き込まれます。あの変態二人組もさらにパワーアップして戻ってきました♪ 運命には抗えない〜第一幕〜から読んで下さい。

侯爵様の愛人ですが、その息子にも愛されてます

muku
BL
魔術師フィアリスは、地底の迷宮から湧き続ける魔物を倒す使命を担っているリトスロード侯爵家に雇われている。 仕事は魔物の駆除と、侯爵家三男エヴァンの家庭教師。 成人したエヴァンから突然恋心を告げられたフィアリスは、大いに戸惑うことになる。 何故ならフィアリスは、エヴァンの父とただならぬ関係にあったのだった。 汚れた自分には愛される価値がないと思いこむ美しい魔術師の青年と、そんな師を一心に愛し続ける弟子の物語。

俺にとってはあなたが運命でした

ハル
BL
第2次性が浸透し、αを引き付ける発情期があるΩへの差別が医療の発達により緩和され始めた社会 βの少し人付き合いが苦手で友人がいないだけの平凡な大学生、浅野瑞穂 彼は一人暮らしをしていたが、コンビニ生活を母に知られ実家に戻される。 その隣に引っ越してきたαΩ夫夫、嵯峨彰彦と菜桜、αの子供、理人と香菜と出会い、彼らと交流を深める。 それと同時に、彼ら家族が頼りにする彰彦の幼馴染で同僚である遠月晴哉とも親睦を深め、やがて2人は惹かれ合う。

風俗店で働いていたら運命の番が来ちゃいました!

白井由紀
BL
【BL作品】(20時毎日投稿) 絶対に自分のものにしたい社長α×1度も行為をしたことない風俗店のΩ アルファ専用風俗店で働くオメガの優。 働いているが1度も客と夜の行為をしたことが無い。そのため店長や従業員から使えない認定されていた。日々の従業員からのいじめで仕事を辞めようとしていた最中、客として来てしまった運命の番に溺愛されるが、身分差が大きいのと自分はアルファに不釣り合いだと番ことを諦めてしまう。 それでも、アルファは番たいらしい なぜ、ここまでアルファは番たいのか…… ★ハッピーエンド作品です ※この作品は、BL作品です。苦手な方はそっと回れ右してください🙏 ※これは創作物です、都合がいいように解釈させていただくことがありますのでご了承くださいm(_ _)m ※フィクション作品です ※誤字脱字は見つけ次第訂正しますが、脳内変換、受け流してくれると幸いです ※長編になるか短編になるかは未定です

皇帝にプロポーズされても断り続ける最強オメガ

手塚エマ
BL
テオクウィントス帝国では、 アルファ・べータ・オメガ全階層の女性のみが感染する奇病が蔓延。 特効薬も見つからないまま、 国中の女性が死滅する異常事態に陥った。 未婚の皇帝アルベルトも、皇太子となる世継ぎがいない。 にも関わらず、 子供が産めないオメガの少年に恋をした。

春風の香

梅川 ノン
BL
 名門西園寺家の庶子として生まれた蒼は、病弱なオメガ。  母を早くに亡くし、父に顧みられない蒼は孤独だった。  そんな蒼に手を差し伸べたのが、北畠総合病院の医師北畠雪哉だった。  雪哉もオメガであり自力で医師になり、今は院長子息の夫になっていた。  自身の昔の姿を重ねて蒼を可愛がる雪哉は、自宅にも蒼を誘う。  雪哉の息子彰久は、蒼に一心に懐いた。蒼もそんな彰久を心から可愛がった。  3歳と15歳で出会う、受が12歳年上の歳の差オメガバースです。  オメガバースですが、独自の設定があります。ご了承ください。    番外編は二人の結婚直後と、4年後の甘い生活の二話です。それぞれ短いお話ですがお楽しみいただけると嬉しいです!

処理中です...