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Main Story〜アルファな彼とオメガな僕。〜
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しおりを挟む「そうか、お前は俺が怖いというわけではなく、自分以外の全てが怖い対象だったんだな…身辺調査とは言ってもお前自身の気持ちなんて調べられないし、本当に上辺だけの調査しかできない。」
そう言いながら僕の背中を優しく撫でている崇陽の背中に腕を回してギュッと抱きしめると、安心して少し荒れていた心に平穏が戻ってくる…
怖かったはずの崇陽が今の僕に安らぎを与えてくれている…雰囲気で圧倒される時も多々あるけど…それ以上に一緒に居たい。そう思えるようになっていた。
知らぬ間に当たり前のように心の中に崇陽という存在があるという事を知り、ソレを認めると次に湧き出てくるのは『愛おしい』という感情だけだった…
その思いに気づいた時…凄く恥ずかしくなり回している腕に力が入る。しかし、僕の力なんて崇陽には痛くも痒くもないらしく、寧ろ大丈夫だという風に頭をポンポンされた。
ー気づかれてない?…
僕の心情に気づかれていないのをこれ幸いと自分の心を落ち着けるために頑張ったが、全く意に介さず、深呼吸をした時に崇陽から香る本当に少しのフェロモンを嗅ぎとった事で鼓動が早くなる。
すると、崇陽の身体がピクリと反応し、少し身体を動かして僕の項へ鼻を近づけてきた。
そのまま流れるような動きで『スンスン』と匂いを嗅いでくる。
「甘いフェロモンの香りがする」
そう言って顔を離すと僕の顎を優しく掴むとクイッと上げて崇陽の方を向かせられる。そして、僕の瞳を観察するように真剣な表情で見ている。
その瞳を見ると、さらに鼓動が早くなる。
ー僕はどうなってしまったの!?…
自覚をしただけでここまでになるのかと、動揺を隠せずにいると、崇陽が微かに目を見開く。
「蒼…落ち着いて聞いてくれ」と真剣な表情で前置きをされた。途端に不安になったが…次の崇陽の台詞で拍子抜けした。
「無自覚なのかは分からないが…フェロモンで俺を落としにきてるぞ…」
なんてほんのり顔を赤らめて言ってくるので、恐らく僕が思っているよりも濃いフェロモンが出ているのだと思う。
証拠に崇陽のフェロモンが発情した時と同じくらい甘くて濃いものに変わっている。
しかし、崇陽はそのフェロモンにも関わらず、表情はいつものものと変わらない。冷静そのものだ…
自覚するまでならば気づいていなかったであろう変化だった。
自覚した瞬間に全ての意識が崇陽に向き、一挙手一投足の全てを見逃すまいと目で追ってしまう。
もっと、僕を見てほしい。求めてほしい。離れたくない。愛してほしい。
そう強く思っている自分がいる。言い表すならばー…
完全にこの男に落ちた。
そういう事なんだろうと思う。自覚する前の僕だったらあり得ない…それくらいに心境の変化が凄すぎた…
「蒼?どうしっ…」
気づけば僕は崇陽の顔へ自分の顔を近づけていて…自らの意思で触れるだけのキスをしていた…
*
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