上 下
34 / 91
Main Story〜アルファな彼とオメガな僕。〜

32

しおりを挟む
 

 気がつくとソファーに横たわっており、真上では崇陽さんが備え付けられていたスライド式のサイドテーブルにノートパソコンを置いてカタカタとキーボードを叩きながらなにやら作業をしていた。

 足を伸ばせるように縦長にセッティングしてあったフカフカのソファーに足を投げ出している。そして、その足…膝の上に僕の頭はあった…
 僕が寝転んでいるのは横長にセッティングされているソファーで、このソファーは組み合わせに応じて使い分けできる。利便性に優れたソファーである…

 崇陽さんは僕が起きたのに気づいたのか、ノートパソコンが乗っているサイドテーブルを手で押し、横へとズラして僕を見た。
 その鋭い眼差しにピクリと身体が反応する。その微かな反応に崇陽さんの眉毛がピクリと反応した。が、それも一瞬で、直ぐに元の顔に戻ると僕の頬を手の甲で撫でながら様子を見てくる。

 「身体はどうだ?」
 「だ、大丈夫です」

 思っていたより声も出ているし、身体はまぁ、お察しといヤツで…情事後のソレだけだったので大丈夫な部類に入るはずだ…

 よく見ると崇陽さんの髪がしっとりと濡れており、身につけているのもガウンでお風呂上がりだという事が分かる。
 僕の身体もベタついておらず服は相変わらず崇陽さんのではあるが先程よりもしっかりしている物を身に着けていた。キレイに洗ってくれた上に着替えも、あの惨状も掃除してくれていたようだ…

 ただ違うのは崇陽さんの髪なんかはしっとりと濡れていたが、僕の方はしっかりと乾いている。
 
 「お仕事だったんじゃー…」
 「気にしなくて良い。急ぎの物以外は和人に押しt…任せてある」

ー今、押し付けてって言いそうになってなかった?…

 マジマジと崇陽さんを見ていると、くしゃりと頭を撫でられ、身動いだ拍子にズレたタオルケットを掛け直された。

 「もう少し寝ていろ」

 そう言って僕の身体を寝かしつけるかのようにポンポンとリズミカルに叩く。その声音が思いの外、甘く優しいもののように感じた。

 眠たいのか眠たくないのか分からずに、グシグシと目を擦っていると、その手を掴まれた。

 「それは目に悪いからやめておけ」
 「ぁ…ごめんなさい…」

 反射的にヒクンと身体が動いてしまう僕に何とも言い難い表情を浮かべていた…

 「怒ってないから怖がるな」
 「あ、えっと…」

ー雰囲気が特に怖いんです…

 なんて言えるはずもなく、ただただどもっていると、見かねたのか崇陽さんは溜め息をついて僕の頭を撫でている。

 「お前が俺を怖がっているのは知っている」

 そう言っている崇陽さんの表情は何だか憂いを帯びていた。そしてチラリと僕を見ると気まずそうに言葉を続ける。

 「俺はお前を大切にしたいと思っている。けど、蒼、お前がそんな感じだと俺でも流石に傷つく」

 そう言い切った崇陽さんの顔は何だか拗ねた子どものように見えて何か可愛く見えた。

 

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

侯爵令息セドリックの憂鬱な日

めちゅう
BL
 第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける——— ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。

初心者オメガは執着アルファの腕のなか

深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。 オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。 オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。 穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。

誰よりも愛してるあなたのために

R(アール)
BL
公爵家の3男であるフィルは体にある痣のせいで生まれたときから家族に疎まれていた…。  ある日突然そんなフィルに騎士副団長ギルとの結婚話が舞い込む。 前に一度だけ会ったことがあり、彼だけが自分に優しくしてくれた。そのためフィルは嬉しく思っていた。 だが、彼との結婚生活初日に言われてしまったのだ。 「君と結婚したのは断れなかったからだ。好きにしていろ。俺には構うな」   それでも彼から愛される日を夢見ていたが、最後には殺害されてしまう。しかし、起きたら時間が巻き戻っていた!  すれ違いBLです。 ハッピーエンド保証! 初めて話を書くので、至らない点もあるとは思いますがよろしくお願いします。 (誤字脱字や話にズレがあってもまあ初心者だからなと温かい目で見ていただけると助かります) 11月9日~毎日21時更新。ストックが溜まったら毎日2話更新していきたいと思います。 ※…このマークは少しでもエッチなシーンがあるときにつけます。 自衛お願いします。

そして永遠になる

三ツ葉りお
BL
有名ロックバンドボーカル(25)✕平凡なサラリーマン(20) 朝目覚めると、そこは自分の部屋ではなく、ホテルのスイートルームだった。自分が寝ているベッドの隣には、見知らぬ男性が寝ていて───。 一夜の過ちから始まるラブコメ。

【完結済】(無自覚)妖精に転生した僕は、騎士の溺愛に気づかない。

キノア9g
BL
完結済。騎士エリオット視点を含め全10話(エリオット視点2話と主人公視点8話構成) エロなし。騎士×妖精 ※主人公が傷つけられるシーンがありますので、苦手な方はご注意ください。 気がつくと、僕は見知らぬ不思議な森にいた。 木や草花どれもやけに大きく見えるし、自分の体も妙に華奢だった。 色々疑問に思いながらも、1人は寂しくて人間に会うために森をさまよい歩く。 ようやく出会えた初めての人間に思わず話しかけたものの、言葉は通じず、なぜか捕らえられてしまい、無残な目に遭うことに。 捨てられ、意識が薄れる中、僕を助けてくれたのは、優しい騎士だった。 彼の献身的な看病に心が癒される僕だけれど、彼がどんな思いで僕を守っているのかは、まだ気づかないまま。 少しずつ深まっていくこの絆が、僕にどんな運命をもたらすのか──? いいねありがとうございます!励みになります。

愛などもう求めない

白兪
BL
とある国の皇子、ヴェリテは長い長い夢を見た。夢ではヴェリテは偽物の皇子だと罪にかけられてしまう。情を交わした婚約者は真の皇子であるファクティスの側につき、兄は睨みつけてくる。そして、とうとう父親である皇帝は処刑を命じた。 「僕のことを1度でも愛してくれたことはありましたか?」 「お前のことを一度も息子だと思ったことはない。」 目が覚め、現実に戻ったヴェリテは安心するが、本当にただの夢だったのだろうか?もし予知夢だとしたら、今すぐここから逃げなくては。 本当に自分を愛してくれる人と生きたい。 ヴェリテの切実な願いが周りを変えていく。  ハッピーエンド大好きなので、絶対に主人公は幸せに終わらせたいです。 最後まで読んでいただけると嬉しいです。

僕にとっての運命と番

COCOmi
BL
従兄弟α×従兄弟が好きなΩ←運命の番α Ωであるまことは、小さい頃から慕っているαの従兄弟の清次郎がいる。 親戚の集まりに参加した時、まことは清次郎に行方不明の運命の番がいることを知る。清次郎の行方不明の運命の番は見つからないまま、ある日まことは自分の運命の番を見つけてしまう。しかし、それと同時に初恋の人である清次郎との結婚話="番"をもちかけられて…。 ☆※マークはR18描写が入るものです。 ☆運命の番とくっつかない設定がでてきます。 ☆突発的に書いているため、誤字が多いことや加筆修正で更新通知がいく場合があります。

期待外れの後妻だったはずですが、なぜか溺愛されています

ぽんちゃん
BL
 病弱な義弟がいじめられている現場を目撃したフラヴィオは、カッとなって手を出していた。  謹慎することになったが、なぜかそれから調子が悪くなり、ベッドの住人に……。  五年ほどで体調が回復したものの、その間にとんでもない噂を流されていた。  剣の腕を磨いていた異母弟ミゲルが、学園の剣術大会で優勝。  加えて筋肉隆々のマッチョになっていたことにより、フラヴィオはさらに屈強な大男だと勘違いされていたのだ。  そしてフラヴィオが殴った相手は、ミゲルが一度も勝てたことのない相手。  次期騎士団長として注目を浴びているため、そんな強者を倒したフラヴィオは、手に負えない野蛮な男だと思われていた。  一方、偽りの噂を耳にした強面公爵の母親。  妻に強さを求める息子にぴったりの相手だと、後妻にならないかと持ちかけていた。  我が子に爵位を継いで欲しいフラヴィオの義母は快諾し、冷遇確定の地へと前妻の子を送り出す。  こうして青春を謳歌することもできず、引きこもりになっていたフラヴィオは、国民から恐れられている戦場の鬼神の後妻として嫁ぐことになるのだが――。  同性婚が当たり前の世界。  女性も登場しますが、恋愛には発展しません。

処理中です...