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Main Story〜アルファな彼とオメガな僕。〜

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 泣きそうになった僕を見て驚いたように目が開く。僕の様子に焦ったのかどうしたのかと聞いてくる。

 「だって、仕事の邪魔になる…だから降ります」
 「全くならないから気にしなくて良い。降りるな」

 そう言って僕の頭を撫でる手は怖い雰囲気とは違いかなり優しいものだった。

 「ぼ、僕が気にするんです」
 「直ぐに終わらせるから問題ないだろ」

 その言葉に嘘はないのだろう。発情期のせいなのか崇陽さんが僕の…僕以外の事に気を取られている現状に悲しいような寂しいようなよく分からないグチャグチャした感情が生まれて何とも言い難い表情になっている自覚はある。

 「両手が使えた方が早く終わると思います」

 離れたくはないが、いや、普段なら直ぐにでも離れたいところだけれど…今の僕は崇陽さんと離れたいとは思わない。
 離れたくはないが、早く崇陽さんの仕事が終わればその分、引っ付いて居られる…
 その思いからそんな言葉を紡いでいた。

 崇陽さんの胸の辺りの服をギュッと握って訴えかける。すると、パソコンのキーボードの方へ向かっていた手が僕の顎を掬い上げ全く浅くない凄~く深いキスをされた。

 息が苦しくなった頃、タブレット端末を持っていた手から端末が離れた。
 床に落ちた音がしてピクリと身体が跳ねた。怒られるかもしれないと思い恐る恐る目を開くと、僕の様子を見ているのが分かった。

 ポスポス肩を叩くとあっさり離れていったが、名残惜しげに口と口を銀の糸が繋いでいた。
 端末は崇陽さんに拾い上げられ僕の手が届く辺りに置かれていた…

 「暇なら動画でも見てろ」との事だった…



 アレから酸欠状態になった僕は崇陽さんの膝に跨るように座らされ本格的に向き合う体勢になり、クタリと胸のに頭を預けている状態だった。

 僕が言った通り崇陽さんは両手を使い始めた。そして、先程よりも格段に早くキーボードを叩いていく。この分だと本当に直ぐに終わるだろう…

 僕が少しでも動くと抱き直し、追加で酸欠状態にされるので大人しく引っ付いている…
 望んでいた事とはいえ、恥ずかしい事に変わりはなく…崇陽さんの胸の辺りにグリグリと額を擦りつけている状態だった。

 「発情期が完全に終わればまた、離れて行くんだろうな」とポツリと呟いた崇陽さんの言葉に現実へと引き戻された。

 「崇陽さん?」
 「お前が俺を怖がっているのは知っている」

 そう言って僕の頭を優しく撫でる。顔を上げようとしたらそのまま抱きしめられ崇陽さんの表情を見る事はできなかった…

 「俺はお前しか要らないのに…お前は俺から離れようとする」
 
 いつもより低く透き通る声に背中がゾクリとした。
 そして、その言葉と共に少し力が込められて、ちょっと苦しくなった。

 「崇陽さん?」

 何度目かのその呼びかけにピクリと動き、一瞬だけギュッと抱き締めたあと離れて行った。

 顔を上げると同時に軽くキスをされ再び抱きあげられて移動した。

 崇陽さんの雰囲気から話を掘り下げる事もできずに、ギュッとしがみつく事しかできなかった。


 
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