29 / 91
Main Story〜アルファな彼とオメガな僕。〜
27
しおりを挟む泣きそうになった僕を見て驚いたように目が開く。僕の様子に焦ったのかどうしたのかと聞いてくる。
「だって、仕事の邪魔になる…だから降ります」
「全くならないから気にしなくて良い。降りるな」
そう言って僕の頭を撫でる手は怖い雰囲気とは違いかなり優しいものだった。
「ぼ、僕が気にするんです」
「直ぐに終わらせるから問題ないだろ」
その言葉に嘘はないのだろう。発情期のせいなのか崇陽さんが僕の…僕以外の事に気を取られている現状に悲しいような寂しいようなよく分からないグチャグチャした感情が生まれて何とも言い難い表情になっている自覚はある。
「両手が使えた方が早く終わると思います」
離れたくはないが、いや、普段なら直ぐにでも離れたいところだけれど…今の僕は崇陽さんと離れたいとは思わない。
離れたくはないが、早く崇陽さんの仕事が終わればその分、引っ付いて居られる…
その思いからそんな言葉を紡いでいた。
崇陽さんの胸の辺りの服をギュッと握って訴えかける。すると、パソコンのキーボードの方へ向かっていた手が僕の顎を掬い上げ全く浅くない凄~く深いキスをされた。
息が苦しくなった頃、タブレット端末を持っていた手から端末が離れた。
床に落ちた音がしてピクリと身体が跳ねた。怒られるかもしれないと思い恐る恐る目を開くと、僕の様子を見ているのが分かった。
ポスポス肩を叩くとあっさり離れていったが、名残惜しげに口と口を銀の糸が繋いでいた。
端末は崇陽さんに拾い上げられ僕の手が届く辺りに置かれていた…
「暇なら動画でも見てろ」との事だった…
☆
アレから酸欠状態になった僕は崇陽さんの膝に跨るように座らされ本格的に向き合う体勢になり、クタリと胸のに頭を預けている状態だった。
僕が言った通り崇陽さんは両手を使い始めた。そして、先程よりも格段に早くキーボードを叩いていく。この分だと本当に直ぐに終わるだろう…
僕が少しでも動くと抱き直し、追加で酸欠状態にされるので大人しく引っ付いている…
望んでいた事とはいえ、恥ずかしい事に変わりはなく…崇陽さんの胸の辺りにグリグリと額を擦りつけている状態だった。
「発情期が完全に終わればまた、離れて行くんだろうな」とポツリと呟いた崇陽さんの言葉に現実へと引き戻された。
「崇陽さん?」
「お前が俺を怖がっているのは知っている」
そう言って僕の頭を優しく撫でる。顔を上げようとしたらそのまま抱きしめられ崇陽さんの表情を見る事はできなかった…
「俺はお前しか要らないのに…お前は俺から離れようとする」
いつもより低く透き通る声に背中がゾクリとした。
そして、その言葉と共に少し力が込められて、ちょっと苦しくなった。
「崇陽さん?」
何度目かのその呼びかけにピクリと動き、一瞬だけギュッと抱き締めたあと離れて行った。
顔を上げると同時に軽くキスをされ再び抱きあげられて移動した。
崇陽さんの雰囲気から話を掘り下げる事もできずに、ギュッとしがみつく事しかできなかった。
*
11
お気に入りに追加
670
あなたにおすすめの小説
侯爵令息セドリックの憂鬱な日
めちゅう
BL
第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける———
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。
初心者オメガは執着アルファの腕のなか
深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。
オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。
オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。
穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。
誰よりも愛してるあなたのために
R(アール)
BL
公爵家の3男であるフィルは体にある痣のせいで生まれたときから家族に疎まれていた…。
ある日突然そんなフィルに騎士副団長ギルとの結婚話が舞い込む。
前に一度だけ会ったことがあり、彼だけが自分に優しくしてくれた。そのためフィルは嬉しく思っていた。
だが、彼との結婚生活初日に言われてしまったのだ。
「君と結婚したのは断れなかったからだ。好きにしていろ。俺には構うな」
それでも彼から愛される日を夢見ていたが、最後には殺害されてしまう。しかし、起きたら時間が巻き戻っていた!
すれ違いBLです。
ハッピーエンド保証!
初めて話を書くので、至らない点もあるとは思いますがよろしくお願いします。
(誤字脱字や話にズレがあってもまあ初心者だからなと温かい目で見ていただけると助かります)
11月9日~毎日21時更新。ストックが溜まったら毎日2話更新していきたいと思います。
※…このマークは少しでもエッチなシーンがあるときにつけます。
自衛お願いします。
そして永遠になる
三ツ葉りお
BL
有名ロックバンドボーカル(25)✕平凡なサラリーマン(20)
朝目覚めると、そこは自分の部屋ではなく、ホテルのスイートルームだった。自分が寝ているベッドの隣には、見知らぬ男性が寝ていて───。
一夜の過ちから始まるラブコメ。
【完結済】(無自覚)妖精に転生した僕は、騎士の溺愛に気づかない。
キノア9g
BL
完結済。騎士エリオット視点を含め全10話(エリオット視点2話と主人公視点8話構成)
エロなし。騎士×妖精
※主人公が傷つけられるシーンがありますので、苦手な方はご注意ください。
気がつくと、僕は見知らぬ不思議な森にいた。
木や草花どれもやけに大きく見えるし、自分の体も妙に華奢だった。
色々疑問に思いながらも、1人は寂しくて人間に会うために森をさまよい歩く。
ようやく出会えた初めての人間に思わず話しかけたものの、言葉は通じず、なぜか捕らえられてしまい、無残な目に遭うことに。
捨てられ、意識が薄れる中、僕を助けてくれたのは、優しい騎士だった。
彼の献身的な看病に心が癒される僕だけれど、彼がどんな思いで僕を守っているのかは、まだ気づかないまま。
少しずつ深まっていくこの絆が、僕にどんな運命をもたらすのか──?
いいねありがとうございます!励みになります。
愛などもう求めない
白兪
BL
とある国の皇子、ヴェリテは長い長い夢を見た。夢ではヴェリテは偽物の皇子だと罪にかけられてしまう。情を交わした婚約者は真の皇子であるファクティスの側につき、兄は睨みつけてくる。そして、とうとう父親である皇帝は処刑を命じた。
「僕のことを1度でも愛してくれたことはありましたか?」
「お前のことを一度も息子だと思ったことはない。」
目が覚め、現実に戻ったヴェリテは安心するが、本当にただの夢だったのだろうか?もし予知夢だとしたら、今すぐここから逃げなくては。
本当に自分を愛してくれる人と生きたい。
ヴェリテの切実な願いが周りを変えていく。
ハッピーエンド大好きなので、絶対に主人公は幸せに終わらせたいです。
最後まで読んでいただけると嬉しいです。
僕にとっての運命と番
COCOmi
BL
従兄弟α×従兄弟が好きなΩ←運命の番α
Ωであるまことは、小さい頃から慕っているαの従兄弟の清次郎がいる。
親戚の集まりに参加した時、まことは清次郎に行方不明の運命の番がいることを知る。清次郎の行方不明の運命の番は見つからないまま、ある日まことは自分の運命の番を見つけてしまう。しかし、それと同時に初恋の人である清次郎との結婚話="番"をもちかけられて…。
☆※マークはR18描写が入るものです。
☆運命の番とくっつかない設定がでてきます。
☆突発的に書いているため、誤字が多いことや加筆修正で更新通知がいく場合があります。
闇を照らす愛
モカ
BL
いつも満たされていなかった。僕の中身は空っぽだ。
与えられていないから、与えることもできなくて。結局いつまで経っても満たされないまま。
どれほど渇望しても手に入らないから、手に入れることを諦めた。
抜け殻のままでも生きていけてしまう。…こんな意味のない人生は、早く終わらないかなぁ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる