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Another Story〜求めるアルファと求められるオメガ。〜
中
しおりを挟む父は俺に将来アルファの女性と結婚し、優秀な血を残せと…それが俺の存在価値だと宣った。
俺が熱心にオメガを調べていたのが耳に入ったのだろう。
オメガはオメガでも『運命』であり、俺の半身であるオメガを探しているだけだ…
それに、自分の価値くらい自分で決める。親とはいえ、他の者に決められた価値など何の意味があるというのだ?
しかし、この様子だと…将来もし『運命の番』に出会った時に面倒な事になる。確信めいた予感がした。
その後の俺の行動は早かった。両親には権力があるから慎重に動いた。
『運命』に出会った時に両親が俺の邪魔をすれば潰す為の準備は全て整った。
和人にすら気づかれていない自信がある。念には念を入れておく…しかし、和人が本当に信頼できるヤツと確信できたなら巻き込む予定でいる。
『運命』を迎える準備をしつつ、基盤を固める為に動く…手始めに両親と連携していた鬼と接触する。
そう、鬼とは人間のアルファよりもさらに上の存在であり、鬼の子どもは皆アルファで人間のオメガからしか生まれない…
しかし、両親と連携して行っていたプロジェクトの進行状況は芳しくないと情報を入手していた…
☆
「へぇ、君があの男のー…子どもなんだ?」
人懐こいような笑みを浮かべてはいるが、全くそんな事はない…目の奥は常に相手の事を見ており、隙を見せれば骨の髄まで喰らわれそうだというのが第一印象。
「そう、最近、なーんか不測の事態?的な事を言っていてねぇ…プロジェクトが全く進まないんだよ…困った事になったんだ~」
不測の事態とは俺が親の会社を衰退させる為に水面下でジワジワと追い詰めた結果、起こった波紋だ…恐らくこの鬼は全てを知っている。
「ふふふ…。ま、こんな不毛なやり取りは止めてこれからの事を話そうか…こちらにとっても君にとっても有意義な話し合いになる事を祈ってるよ。神無月 崇陽クン」
そう言って妖しく笑ったその男に生まれて初めて背筋がゾクリとした…
結果から言うと、交渉は成立した。新薬の開発にお互い力を入れる方向で話を纏め、このプロジェクトが滞る事なく進行している内はこの鬼が俺の後ろ盾となる。
このプロジェクトが成功したならば、俺が死ぬまで安泰に暮らせるように尽力してくれるらしい…
まだ見ぬ番と俺が安泰に暮らせるのであればなんだって構わないし、何でもするつもりだった。
俺にとってはお互いに利用し合い、お互いが損をしなければ全く問題なかったが、棚ぼたとは正にこの事…
この鬼はその新薬開発に並々ならぬ思いを入れているらしい…鬼の後ろ盾はあるのとないのとでは全く状況が変わってくる。
簡単にこちらを潰すことができなくなるし、安全も格段に上がる。
鬼社会も面倒なもので順道である事を証明する為には人間と協働でなければならないらしい。
お互いにWIN-WINという内容で正式な誓約書を交わしてお開きになった。
☆
鬼と連携し、新薬開発に力を入れつつも、基盤をさらに強くする為に動く…という日々を送っていると…
何故か和人に『運命の番』が現れた。
その連絡を受けた時には正直に言うと「何で和人なんだ」と落胆した。
しかし、やっぱりというか何というか…和人の家もその事で揉めてしまい番に危険が及んでしまった。
俺に助けを求めて来たので、俺に絶対服従を条件にして問題を解決してやった。すると何か前より忠実になった。
本人曰く、絶対服従かどうかなんて気にならないくらい番を脅威から守れた事が本当に嬉しいらしく、俺に凄く感謝をしているのだとか…
その事が切っ掛けで、考えを改める事にした。
『番が見つかってから対処したのでは遅すぎる。』そういう事だ…
そして俺は本格的に和人を巻き込む事にした。
念の為にほぼ潰しておく事にした。決行は高校2年くらいにしようという話になっていた。
有能な協力者は多い方が良い…父の会社で虐げられていた有能な部下を引き抜きながら新薬開発のバックアップをしつつ、自分の基盤を固める為にそれとなく協力者を集める事に力を入れる…
そういう日々は高校2年に上がるまで続いた…
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