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いとこな7
しおりを挟む一度、入浴後に服を着ていない清ちゃんに出くわした事があったけれど、肌は白くてうっすらとした乳首はピンク色だった。
下半身にあるアレには小さな嫌悪感を浮かべはしたけれど、過去のあの糞男のような卑しさは微塵にもなかった。
寧ろ意外にイけるかも、と思ってしまったくらいだ。余計な物が無ければ良いのになと、本気で舌打ちもした。
そんな唯一のよりどころ、あたしが女であるという防波堤になっているといってもいい清ちゃんが、あたしのことを女だと思っていないのは、非常にまずい。
女としてまずい。
今の状況の侭に一生を過ごせると思うほど、あたしも子供じゃない。いい加減、男の事も好きになってやらないととは、思っているくらいなのだ。
そんな思春期なあたし。
眺め続けていた清ちゃんが肩を落としながら、感想を述べた。
「最近、ちょっと女っぽくなったかな。腰のあたりとか」
「ほんとっ!?」
「まぁ、胸も全くないわけじゃないし。性格はともかく身体は女なんじゃない?」
その言葉に、あたしの胸がときめいた。にへへ。
「だよね? 胸の形には自信あるのよ! 腰も、くびれてるっしょ?」
「はいはい。かわいーかわいー」
わーい、とはしゃぐあたしに、清ちゃんは苦笑する。
そして視線を、あたしから外して床を見た。
そんな態度が。
ムカついた。
こいつ、今、嘘ついた。
そう思った。
○○○
今日の琴美はことさら変だった。
まあ好きな人にフラれたのだから仕方がないかと諦める事にする。とりあえず、琴美が帰るまでは付き合うしかない。
何が嬉しいのかは分からないけれど、喜んでいるようなのでそれ以上水をささないようにする。さて、それじゃあ雑誌の続きでも、と僕は雑誌に目を落とした。
で、ふと。
僕を睨みつける琴美に気付く。
「なに?」
「嘘つき」
しん。
部屋の中に、彼女の不満が漏れ落ちる。
短い呟きが、僕の前髪を揺らした。琴美の顔が、僕の目の前にある。息が掛かる程の距離が顔の前にあり、ふんわりと漂う匂いが、身体を麻痺させる。
「嘘じゃないよ。琴美はかわいーって」
「言い方がうそ臭い。なんか、心がこもってない」
麗らかな僕の部屋に、琴美の言葉が降り注ぐ。僕に迫るように、琴美が詰め寄ってくる。逃げようとして、琴美の腕が僕の胸板を押してくる。
ぐい。
「本気で言って」
「うわっ」
短く吐かれた言葉と共に、僕の身体がどんと突き飛ばされた。いきなり倒れた僕は背中を床に打ち付ける。
「い、っ」
「あたしはッ!」
痛みに堪える僕の上へ、琴美が馬乗りになってくる。乱暴に手が伸び、僕の手から雑誌をもぎ取られ放り投げられた。
びっ。
雑誌の一頁が破れて、床を滑っていく。琴美の腕は僕の手首を押さえ付けてくる。振りほどこうにもほどけない。
まさしく、問答無用。
「女なんだよ!」
「知ってるけど」
「だったら少しはっ!」
琴美が叫び、悲痛に唸る。僕は荒らげず、どいてと言おうとして押し黙る。
床から見上げる琴美の瞳に、涙が浮かんでいる。ふわり、ぽろりと雫が垂れて、僕の胸元に落ちていく。え、と思考が停止する。
「っ、あたしはっ」
琴美の言葉は言葉にならなかった。ただいとこは、僕に馬乗りになって、何かを吐露するように言葉を絞り出し、吐き出そうとしていた。
どくん、どくん。琴美の手から、お尻から。灼熱に燃えそうなくらいの熱が伝ってくるような錯覚を覚える。重いより、熱い。
「今度は何? 重いから、どいてよ」
僕はあくまで冷静に、彼女にそう声を掛ける。琴美は潤んだ瞳で僕を睨みつけ、落ち着いていたはずの感情は暴走しかかっていた。原因は何だ。考えても答えはでなかった。
「いや、だからなんかうそ臭いんだってば。あたしは、清ちゃんにだけは女に見られないと、やばいんだって」
「意味、分かんないんだけど」
「あたしにもわかんないんだよ! でも、ほら! 女でしょ? あたし、ほら!」
「うっ、お、いっ」
熱く叫ぶ琴美が、自分の胸を僕の顔に押し付けてくる。ぐにぐにとした琴美のお尻の感触が僕の腹に、その奥の股間部分に伝わってくる。そのまま覆い被さるようにして、身体を沿わせてくる。
形良い尻が、僕の股間付近をぐりぐりと押してくる。
「や、め、ろっ!」
僕は握られた手を振りほどいて、琴美の身体を持ち上げる。
ふいにその手が、琴美の胸に触れた。
「……ぁっ」
それは甘い、切ない声がした。
とくん、とくん。
琴美の心臓が高鳴っているのが、僕の手の平にも伝わってくる。僕はそれでも、ぐいぐいと琴美を押し退ける。琴美の胸の上に、僕の手の平がある。指に伝わる柔らかな感触が、脊髄を通って下半身にまで抜けていく。まずい。厳しい。
僕のズボンの中の、雄の体積が急激に膨張を開始する。その上には、いとこの、琴美の尻がある。パンツが、溝が、股が、ある。思考が雄の、欲に寄る。
早く、退かさないと。
琴美の、あそこに。
硬くなり、かけた僕のが当たるだろ!
そんな精神状態を、顔に出さずに思考する。動揺する程に冷静になる僕らしからぬ、物言いで、僕は言った。
「琴美、退け」
「っ?!」
それは鋭い怒りのように、僕はつい、荒らげた命令口調で、いとこに言った。
《続く》
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