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乙女日和23
しおりを挟む俺の中にある、ヒミコに対する後ろめたい気持ちが増す。先生とのいざこざで一度、膨張した下半身は、自らの意志に反して応答をし始める。
相変わらず、俺の下半身は身勝手である。
「体調悪いんだって」
「ちゃんと看病してあげるよ。後で」
「お前に風邪とか、うつったら困るだろ」
「困らない。ヒロ君にうつされるなら、本望です」
乙女の身体が俺の身体を引き寄せてくる。体格的には俺の方が大きいはずなのに、ヒミコに全てを包み込まれているような気分だった。角張った俺の心身が、彼女の柔らかさに解けていく。
甘えたい自分が居る。
先生としそうになって、思いとどまれたのは偶然に近い。そんな状態で彼女と致すなんて、最低にも程があった。
だからと言って、行けないなんて一方的に言うのも気に食わなくて来た。どれもこれも、自分勝手で馬鹿過ぎだと言う自覚があった。
「明日じゃダメか?」
「この後、何かあるの?」
「……ある、って言ったら?」
そうしたら帰してくれるのか? 下手すると今から浮気しに行きますとでも言わんばかりの回答に、ヒミコは少し困った顔をして、
「ないんでしょう?」
と微笑んできた。それは見透かしているというより、そうあって欲しいと願うような言葉だった。俺は俯き、「ない」とだけ返す。ヒミコの顔を見ると、今にも泣き崩れそうな顔をしていた。
「悪い。本当に気持ちが荒んでるんだ。このまましたら、たぶん我がままな感じになる」
「凄くしたそうだもんね。何か凄く、狼さんっぽいよ? がおーって」
玄関先でサンダルを履き、寄ってきたヒミコが、顔を俺に押し当てて、離さないとばかりに抱きしてくれる。がおーって、なんだ。
ヒミコの顎が持ち上がり、背が少し伸びる。唇の温度が増して、頬の上を一滴の水滴が流れ落ちた。
「ヒミコ、俺は……」
「何もかも、私は許すよ?」
ヒミコが背伸びをして、俺の頭を撫でてくる。「だからもう、いいから」と一生懸命に俺を抱擁してくれる彼女は、俺にはもったいないくらいに素敵だった。
何も聞かず、何も問わず、ただ許す彼女を哀れだと思った。絶対にそんな事思っていないくせに、それを表情に出しながら、言葉だけは別の事を言う。
「私に全部、だしちゃえ」
それは気持ちか。あるいは何かか。
玄関先で、彼女は照れながらも、精一杯に見栄を張り、俺の手を引いてきた。俺はついに、彼女の手に引かれて家の中に足を踏み入れる。
「全部、私が、受け止めてあげるから」
子供をあやす母親のように、彼女は俺にそう告げた。
○○○
「っ、ぁくっ」
ヒミコの身体が激しく動く。俺が腰を振る度に、体操服の中に収まっているヒミコの胸は大きく揺らぎ、躰同士がぶつかる音と、濡れ音が部屋に響く。
手荒く伸ばした体操服は伸びて、流れる汗を舌で掬うとしょっぱかった。
「んぐ、うん」
極限まで膨張した俺のものが、ヒミコの口で施される。何度も吸われ、射精の寸前で止められた。
「きて、いいよ」
股を大きく広げて、潤い始めたばかりのヒミコが言った。まだ早いと知りながら、俺は彼女の体内へ、無我夢中で突き入れた。腰を振り、すぐにイッた。それでもまだ止められず、俺は何度も腰を振り続けた。ヒミコに避妊具を交換され、何度も何度も射精した。本当にわがままな行為になってしまって、ヒミコの喘ぎに苦しげな色合いが浮いていたのは、間違いなく俺のせいだ。
それでも俺は止まらなかった。
酷く身勝手で、自分本位な行為になってしまった。
<続く>
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