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ひとたび恋してみてみれば9

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 姫子の腕が俺を引き、互いにベッドへと転ぶ。

「ふあぁ、あ」

 愛撫はとにかく触れる事を優先した。伊崎姫子という女の子を知りたくて、あちこち愛撫し続けながら、徐々に彼女の好みを学んでいく。服を脱がした彼女は大人しくて、しきりにされ続けている。俺をホテルに誘った時はもしかして主導権を握られるかと思ったけれど、服を脱がす度、声を零す度に彼女の弱い部分というか、可愛い部分が溢れてきた。

 これ、一期一会なんだろうか。
 これが最初で最後だとしたら、かなり嫌だなとふと思った。

「ここ、気持ちいい?」
「うん、何かくすぐ、ったいけど、気持ち、いい」

 姫子の本質は甘えただと肌で感じる。間違いなく甘えん坊である。だからこそ、抱きしめてキスをして、肌に触れて丁寧に遠慮気味に慈しむ。そうしていると、徐々に姫子が何を求めているのかがわかってくる。俺がただしたいという欲求に満たされているのなら、四の五の言わずに致しているかもしれない。

 けれど今の俺は、彼女を慈しみたい気持ちでいっぱいだった。久々に、全力で愛したい人に出会った気がする。嫌われたくないなあ。そう思う。

「ぁっ、そこだ、めっ」

 太ももに舌を這わせると、姫子の声が更に低く奏でられた。声のトーンが低いのは、喘ぎ声を意識できなくなったからだろう。感じてくれている証拠かもしれない。

 女の子の喘ぎは案外演技なところが強い。本当は無言の方が感じやすいはずなのだ。それをあえて声を上げるのは、男への気遣いに他ならない。もっとも姫子の場合は、声を出さないとうわああ、ってなるのだろうな、とか思うと笑えた。

「ここがいいのか?」
「ちがっ、あ、いっ、うん、きもっ、ちいよう。すぐる君っ」

 言葉が徐々に素直さを増している。男冥利に尽きるな。笑いを堪えながら、俺は愛撫をし続ける。

 何せ彼女は俺の気持ちを受け止めてくれた人だ。こういう行為の時くらい、俺が尽くしてあげてもいいだろう。俺の価値観で言えば、ベッドの上では彼女が求めない限り男が主導権を握るべし、なのだ。こういう行為は出来るだけ男が尽くすべし。男が愛すべしなのだ。女が尽くすのは、男への恩返しに近い。

 まずは男が愛すべし。女から愛されないと出来ないとか抜かす野郎よ滅べ。

 俺的に、女は男に愛されるのがベッドの上での作法だ。身勝手で結構。俺流が嫌なら俺と寝るな、だ。

「んぅ、ん。柔らかい肌だな。噛み千切りたくなる」
「やあ、怖いなあ。食べられるよう」

 俺は姫子に尽くし続ける。悪ふざけも織り交ぜながら、しばらくの愛撫を堪能していく。感じて震えだした姫子の指が、自身の大事な部分に触れてきて、反対の手が俺のものに触れてきた。そっと自身へと誘う仕草はかなり遠慮気味で、もちろん俺は頷き、彼女の上へと押し乗った。目と目が合った。意思疎通の瞳と瞳が、交わされあって頷き合った。

 俺は姫子の上へと躍り出る。姫子が瞼を閉じて俺を受け止めんと両手を開いてくる。互いの片手が重なり、手と手を合わせて指を絡め合わせる。

 胸が潰れ肌が触れ合う。少し入れにくいが、片手で何とかする。姫子が俺の先端を手で支え、促してくる。セックスは、男女の共同作業で共犯者が成す一種の犯罪行為だ。

 罪状は、互いの時間の奪い合いだろうか。俺はそっと、姫子の体内へと己の猛りを押し込んでいく。ぐぐと強く、腰を添えていく。

 しばらくの葛藤はやや相手を気遣い過ぎだろうか、しかししばらくしてようやく、俺らの位置が合う。焦るな、そっとだ。俺は腰をゆっくりと前に、持ち上げていく。
 ぐい、ぐん。「っ、くあ」甘い声と共に、互いの肌の体温以上の温度が互いの、秘めた場所を染めた。

「っっうあぁ、あああ」
「っ、姫子ちゃんキツイ」
「あ、あっ、ごめ、あんまりしないから、こういうの、く」

 姫子に促されるように、俺はゆっくりと彼女に押し入っていく。挿入の時、姫子の爪が俺の手の甲を掻く。繋がった部分よりも、身体全体から熱を感じる。更に挿入。姫子の声がやや悲鳴気味に喘がれる。「ぁう、あああ」声が震えて止まらない。姫子の息遣いを身近で感じて、息が詰りそうだ。

「はあぁあ、凄いっ。いっぱいいっぱいだよ、おっきぃ」

 俺の猛りを受け止めた姫子が感想を述べてくれる。俺にとっては嬉しい話だけれど、そう言われると申し訳ない。腕の中でもがく姫子が、どんどんとか弱く思えてくる。できるだけ丁寧に、優しく包み込む。男が包み込むというのは表現が逆だけれど、今の俺はたぶん、彼女を包まんとする愛でいっぱいだ。

 こういうのも悪くない。

「っあ、ああ、奥にくるぅっ」

 姫子の喘ぎが部屋に響く。案外声が大きい。柔らかい。甘い、きつい。

 ぐん、ぐい。姫子が高らかに喘ぐ度、俺は腰を持ち上げて、出来るだけ痛がらない角度を探していく。腰を動かしながら想いを内包しながら、俺は彼女をじっくりしっかりと愛し慈しみあげる。突いて引いて撫でて、優しく丁寧に、そっとそっと。

 俺は彼女を、全身で愛し尽くした。

《続く》
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