シンゴニウム

古葉レイ

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シンゴニウム・26

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「んぅ、片手、手つないで手」
「うん。痛かったら言って。動くの下手だから、やった事ないし」

 真顔の葛城が静かに囁きかけてくる。
 胸が苦しくて、息もくなってくる。まるで未経験者のように、不意な緊張感が背筋を過ぎる。
 まるで処女にでもなったような、自分でもわからない不安と期待が下半身に宿っていく。当てがわれた違和感がゆっくりと触れてきて、浮きそうになる腰を必死に堪える。
 にちゅると葛城の先端が私の部分に触れてくる。相手の顔がまともに見える正常位で、私は恥ずかしさと不安をかみ殺して、太ももを両手で抱えて尻を上げる。
 彼が入れやすいように、息を吐きながら股を、開く。本当に開いてるよ、私。

 彼は真剣だった。私もだから、本気だった。

「っ、くう」

 彼の硬い異物が私の中に入ってくる。ゆっくり過ぎて、押し入ってくる感触がよく分かる。押し開かれる。濡れた自らの陰部が恥ずかしく、捲られる内側に熱棒の側面が撫でてくる。ぞく、ぞくと腰に鈍い感覚が走る。

 これは、確かに挿入、結合、入っていく感じがする。男の子の固くて熱い暴れん棒が、ゆっくりと私の、女の子の中に入っていく。理性もある。乱れはなく、ただ繋がっていく。この感覚は、果たしてセックスによるものか。

 私の中は気持ちいいだろうか。今度、教えて貰おう。そう思いながら、葛城がもっと奥へ、中へと入って来るのを感じて待つ。先端が更に私の奥に入ってきて、抵抗でもしているのか、入る速度が遅い。
 
 あえて、ゆっくり入ってくるから、よく分かる。

「痛くない?」

 葛城の優しい瞳が、愛おしく思えた。

「痛く、ないよ、葛城。君、大胆なのに、丁寧だね」
「どっちだよ。相原の中、凄く熱いよ」

 しばらくして、葛城のがようやく全部入ってきた。全部入っているらしくて、彼の肌が私の太ももに触れている。大きい。長い。何より、形が、何かが、凄くいい。いつもなら喘ぐ場面で、私は喘ぎも忘れて、お尻の角度を変えて、彼が動きやすいように誘導する。

 葛城がゆっくりと動く。私も腰を動かしてみる。
 彼が動く度に感じる感覚に、自然と息が漏れて、「ぁっ」と、甘い吐息が漏れ掛けて、

「でも何かイけないかも」
「っ、は、え、あ?」

 葛城の苦し気な言葉に、私の甘い気持ちが霧散した。ほわほわのピンク色から灰色になったような気分。見ていた夢から覚めたような、冷水ぶっかけられたら、きっとこんな気分。

「っなんで?」
「緊張して集中できないっていうか。気持ち良いっていうのを、身体が理解してるんだけど、理解して身体が強張ってるっていうか」
「っ、あ」

 葛城が困った顔で笑っている。何でそれ今言うかな。空気ぶち壊しだよ、と思いつつ、私は自分の思考自体の誤りに気付く。

 違う。おかしい。私は何をしているんだ。
 自分の思考を思い出して首を振る。そう、違うじゃないか。私は快感の中に身を委ね続けていた自分を恨む。そうだ、今私らは仲良くなる為に繋がり合っているんだ。だからこそ、葛城はイケないかもしれないと、私に教えてくれたのだ。

 イクためにしてるんじゃない。お互いを知る為に、してるんだ。

「やめ、る?」
「いや、気持ちいいから、このままで、いい?」

 葛城が苦し気に笑い、腰を小さく振ってくる。その一生懸命さに、感じ始めていた心は少し落ち着き始める。一度落ちた気持ちが高ぶってくる。素直な彼が嬉しかった。

 何も知らないまま、ただするのと、ちゃんと自分の状況を教えてくれるのとでは雲泥の差だと思った。だから今こそ、私の出番だ。

「そう、じゃあ、私が上に、なるよ」
「うぉあ?!」

 言って速攻、私は上半身を起こして葛城に飛び乗った。チャンスだ。私が有利に立つチャンスだ。繋がった部分が捻られて物凄い甘激が全身に伝う。ぎゅるりと捩じられた内部の刺激が想像以上に厳しくて、腰がびくんと跳ねあがる。ぞくりとするほどの感覚が全身に駆け抜けて、私の理性が、一瞬飛びそうになった。

「あ、相原?」
「……ぁ、うぇ?」

 一瞬薄らいだ意識が戻り、目の前にある葛城の視線に理性を保つ。いけない、いま飛んだ。私は違和感を思わずて唇を手の甲で拭う。どうやら涎まで出そうになる程に呆けていたらしい。
 かぁと顔が赤くなる。羞恥に叫びそうになった私は、咄嗟に葛城の肩に噛みついて堪える。ぎゅるりと内側にある、葛城の肉棒が私の中で捩じられる。

「っ、くぅ、ううう」
「あっ、の、大丈夫か?」

 ぐっっっああ、鼻まで垂れてオナラまで出そうだったよ、きつー。
 想像以上に気持ちいい。ではなくて、私も彼に勝つために必死だった。彼にされ続けるのはダメダメだ。一緒にやるんだ、私もやるんだ。二人で気持ち良くなるんだと覚悟する。
 お尻に力を入れて、私は結合部分に力を籠める。ぎゅうと、締め付ける。

「あ、相原!?」
「んぁぅ。入ったまま起き上がるとか、きついね」

 私、イっちゃったかも。息苦しい中、葛城を尻に敷いて、私はぐいと腰を浮かす。もちろん抜きはしない。そっと葛城のものを、私のもので抱き上げるイメージで、必死に呼吸を整える。
 はぁふう、すう、はあと息を吐き、吸う。騎乗位は、実は私もあまり経験薄い。でも、彼を気持ちよくさせるなら、私が動く方がいい。

「ちょ、最初は俺が上だろ」
「だーめ、君の最初は私が奪うって、言ったでしょう。何も考えないで、ただ気持ち良い角度、私に教えて」
 
 葛城が私の下から這いだそうとするので必死に堪える。動くな、かき回すな。そんなにされたら気持ちいいでしょうが。葛城の頬を手のひらで押さえて、強いキスを施して動きを止める。入ったまま騎乗位でのキスは結構、辛い。葛城のあれが私のお腹に押しあたる感覚が、気持ち良くて刺激が強い。いつもだったら痛いだろうそれは、私の身体の感度が上がっているせいか、気持ち良い。

「くっ、気持ち、いい」
「ふふ。まずは、君をイかせてからだから」

 葛城を見下ろしながら、腰を浮かせながら、私は自分が痴女になった気分で、更に更に心を燃やして葛城を扱く。

 ○○○

「ぁああ、葛城ぃ、もっとしてぇ。もっと、掻き回しっ、てぇっ」
「っ、もち、ろんっ、く、ああぁぁぁっ」

 ぱん、ぱんと音がする。何分かのスライングの後、私の中に収まっている葛城のモノが小さく震えて膣内で果てた。もちろんゴム越しだけれど、跳ねる感触は伝わってくる。私は尻を突き出した状態で、彼の腰が浮き、どくんと脈打つのを体内で感じ取る。たぶん射精しているのだろう。少し余裕が出てきて、私は瞼を閉じて、彼の動きに合わせて「ぁっ」と喘ぐ。もっと甘い声を吐く、余裕は今の私にはない。

 葛城の表情が蕩けている。私も当然、気持ち良い。彼が私の上に倒れてきて、私はそんな葛城に潰されてベッドに突っ伏す。しばらくして彼があれを抜き、少しの快感、振り返って抱き留める。ぐいと乗る葛城の体重が心地良い。

「はぁ、はぁっ」

 息の荒い葛城の身体は汗でびしゃびしゃになっていた。そんな彼の頭を撫でながら、しばらく黙って、彼を肌で感じていたい気分だ。汗だくのまま抱き合ったのは初めてだ。時計を見る。まだ、朝ではない。まだ、大丈夫だ。

「はぁ、はあ。次、はどの体位でする? まだ、まだ平気だよ、私は」
「っ、ちょ、っと待って。相原、ええと……」

 騎乗位から、立ってしてバックでした。正常位が今で、葛城と私は汗だくで、彼の布団が湿っぽくなってしまった。明日、干さなきゃ。寝ようと思っていたけれど、このまま朝までし続けるような気がした。葛城も私も、そんな気分だ。

 何度かして、だいぶ彼の事が解るようになってきた。彼も私も、相当にお互いを好いているらしい。身体の相性というものがあるのなら、きっと磁石のようにぴったりだと思った。

 セックス、嫌いだったんだけどな。

「相原、つぎ、掛けていい?」
「うん? イク前に抜くって事?」

 私の問いに、彼はこくんと頷いた。頷いた彼は可愛かった。

「最後は手でして、君に掛けたいなって。お腹とか、胸に」

 いきなりやや変態チックな発言だ。なるほど、そういうのもしてみたいのか。葛城の要望を突っぱねるのは簡単だけれど、掛けられた事はないので興味はある。汚されてみたい、そんな気持ちに近い。

「ダメ?」
「ううん。平気だけど、ちょっと待って」

 私も彼も、ちょっと変わってるのだろうか? でも、君がしてみたいなら挑戦してもいいかなと思うようにはなっている。でもそれなら少し、やり方を変えてもいいかもしれない。

 私はまた覚悟する。
 しない後悔より、して後悔。今の私なら、何だって出来る。

「葛城の、口でする。それでイったら、身体に掛けて」
「あ、いや」

 私の申し出に、葛城が首を振った。喜ばれると思ったのに。案外勇気を出して言ったのに。身体に掛けて、とかより、口でするのは。

「嫌なんじゃないのか?」
「っ、知ってたの?」

 葛城が申し訳なさそうに言った。そう、解ってくれていた、それが嬉しい。葛城の観察力はなかなかに鋭い。人を見るのに長けているのだろう。そういう男は嫌いじゃない。むしろ好きだ。

「そうね、嫌よ。だからこそ、君の口でしてみて、慣れてみようかなって思った。気持ち良くないと思うけど、試させて? 君もしてくれたもの。私だってしてあげたい」
「気持ちいいんだろうなとは思うけど……待って、一度洗ってくる。相原もシャワー浴びる? 一緒に、風呂入ろうか」

 葛城が立ち上がり、私の手を引いてくる。セックスを途中で止めたら冷める。というのが私なりの持論だった。そのはずなんだけれど。
 でも案外、そうでもないんだ、と思った。

「洗いっこでもする?」
「何それ、子供みたいね」

 申し出てくる葛城の案は、なかなかに素敵だった。

《続く》

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