らぶてぃ

古葉レイ

文字の大きさ
上 下
5 / 15

らぶてぃ5

しおりを挟む
「頭がくらくらする」

 汗ばんだ髪を手櫛で整えて、あたしは乱れた制服のボタンを閉じていく。終わったのに、あそこにまだ、先生のあれが入っている感じがした。

 終わった後は、いつもこんな感じだった。

「風邪か?」
「そうかも。看病してくれるの?」
「ばーか」
 
 しゃあと音が鳴り、先生の罵り声と共に準備室のカーテンが開かれる。差し込む眩さにあたしは手で影を作って目を凝らす。うおー、目が痛い。
 開けたのは当然、先生だ。

「知恵熱じゃないのか?」
「違うもん」

 あたしの苦しみを気にもせず、先生は窓を少しだけ開けて、自分の席へと歩いていく。先生が真横を通り過ぎようとして、ふとその手があたしのおでこに触れた。

 ほえ?
 一瞬、意識が飛んだ。

「熱はなさそうだな」

 先生が笑い、あたしの頭をぽん、と撫でるように叩いて通り過ぎていく。そのまま通り過ぎる先生の後姿を、あたしは振り返る事ができなかった。

 うー。
 不意打ちは照れるからやめて。

「もしかして、寝不足かな」
「眠れずに一人で処理でもしたのか?」

 あたしの呟きに先生が嘲笑う。顔がかぁと赤くなる。適当な事言わないでと言い返そうにも、図星なので無視だ。先生の真似だ。先生も、あたしの無視には寛大だった。

 あたしは頬を膨らませて、不貞腐れる。
 何となく面白くない。そう思いながら、先生の背中を見て、あたしは俯く。身体に残る濃い先生の匂いを嗅ぎながら、胸がときめく、自分を感じた。

 女子高生のあたしと、美術教師である先生との関係を、周りは何と言うだろう。恋人同士と言ってくれるだろうか。

 ただの遊びだと思われるのだろうか。

「勉強しすぎなんだろ」
「昨日はあんまりしてないって」
「それで高得点取れるなら大したもんだ」
 
 あたしの呟きに、先生が肩を揺らして笑ってくる。
 リボンを直してくれる優しさは嬉しいけれど、先生の冷たい目線は、えっちの最中もそうでない時もあんまり変わらない。

 先生の考えは、いつも分からない。
 している時は、ちょっと分かった気になれる。
 それも最中の一緒になっている数分の間だけなんだけど。
 している時だけ理解できるのも、なんだかなーと思うけれど、全てがわからないよりはいいと思う。

「塾は行ってないんだろう?」
「家で勉強してるだけだよ?」

 先生に尋ねられ、「優等生だな」と言われて、あたしはほっぺを膨らませる。先生に優等生と言われるのは何か嫌だ。足首に引っかかったパンツを履き直しながら、あたしは先生を睨んで、べーと舌を出した。

 先生は準備室の机に戻り、あたしの舌出し犯行を涼しい顔で見守っている。
 怒ればいいのに、先生はあたしの子供じみた仕草を気にしない。

 むしろ大人な態度でそれを眺めて、失笑する。
 今だってそうだ。手に持ったノートをぱたぱたと自分に向けて扇いでいるあたりが、何かあたしをナめてる。

 いらいらする。

 あたしの苛立ちが止まらない。
 部屋に充満する絵の具の匂いが、あたしの怒りを和らげてくる。気持ちが落ち着く。と、先生を懲らしめる名案を思いついた。

「セックスし過ぎると馬鹿になるらしいぞ」
「へー」

 ふいに先生が知識を振りまく。どうでもよかった。

 眼鏡を中指で押し上げ、呆れた顔でそう教えてくれた先生が、あたしを品定めでもするかのように下から上へと視線を移す。銀縁の眼鏡が、太陽の光に当たってきらきらと光っていた。先生が目を細めている。

 そうですよね、太陽が眩しいんだよね、と苦笑う。
 チャンスだ。
 
 あたしは全ての着衣を終えて机から降りる。スカートのポケットから、あれを取り出して背中に隠す。

 先生は気付いていない。
 あたしの体重で、床がみしりと鳴った。

「もう馬鹿なお前には関係ないけどな」
「先生、眼鏡貸して」
「話聞けよ」

 先生があたしを馬鹿にする。構わず先生に近付き、手を伸ばした。
 二人の距離は近くて、先生は眉間に皺を寄せてあたしを睨む。何かを警戒する様子に、あたしは構わず、出した左手を引っ込めない。
 あたしの右手は、背中の後ろにある。
 先生が短く溜息を吐いた。あたしはそのまま、先生が立ち上がり、眼鏡を外しながらあたしの元にやってきてくれる。
 後ろ手で親指を操作する。見なくても、大体分かる操作手順。

「目、悪くなったのか?」
「ううん」

 先生が眉間に皺を寄せて、あたしの左手に眼鏡を置いてくれた瞬間に、あたしは右手を前に出して、親指を押した。

 ぱしゃ。

 携帯の、カメラ機能が音を上げた。

「っ、おい」
「てへ」

 先生が呻く。
 あたしがにいと口元を緩めて笑う。

「渡せ」

 先生が吐き捨て、あたしから携帯を奪おうとする。
 それをあたしは、後ろに逃げて避けた。先生が固まり、舌打ちをした。あたしを見下している先生の視線が、ちょっと恥ずかしそうに見えた。

「何がしたいんだ、お前は」
「せんせの眼鏡なし写真を撮りたかっただけです」

 あたしのいきなり過ぎる行動に、先生は露骨に嫌な顔をした。写真、撮られるの嫌いなんだよね、先生って。

 わかっていて、あたしはやった。

 やってやった。
 
 しっかりと保存する。念の為、コピーして別フォルダにも保存した。前に一度、先生に消された事があるんだ。あれはショックだった。本気泣きした。

「誰の許可を得て写真なんて……」
「彼女の特権」

 あたしは胸を張り、先生を呆れさせた。先生が突然「あ」なんて言って額縁を指差してきて、それをあたしが見た途端に先生の手が携帯を狙う。

 しかし残念、奪えなかった。
 あたしの方が反射神経はいいのだ。

《続く》
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

壁の薄いアパートで、隣の部屋から喘ぎ声がする

サドラ
恋愛
最近付き合い始めた彼女とアパートにいる主人公。しかし、隣の部屋からの喘ぎ声が壁が薄いせいで聞こえてくる。そのせいで欲情が刺激された両者はー

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

車の中で会社の後輩を喘がせている

ヘロディア
恋愛
会社の後輩と”そういう”関係にある主人公。 彼らはどこでも交わっていく…

これ以上ヤったら●っちゃう!

ヘロディア
恋愛
彼氏が変態である主人公。 いつも自分の部屋に呼んで戯れていたが、とうとう彼の部屋に呼ばれてしまい…

隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました

ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら…… という、とんでもないお話を書きました。 ぜひ読んでください。

JC💋フェラ

山葵あいす
恋愛
森野 稚菜(もりの わかな)は、中学2年生になる14歳の女の子だ。家では姉夫婦が一緒に暮らしており、稚菜に甘い義兄の真雄(まさお)は、いつも彼女におねだりされるままお小遣いを渡していたのだが……

結構な性欲で

ヘロディア
恋愛
美人の二十代の人妻である会社の先輩の一晩を独占することになった主人公。 執拗に責めまくるのであった。 彼女の喘ぎ声は官能的で…

処理中です...